金正恩氏「美人妻利権」に反発か…李雪主氏に微妙な変化
北朝鮮国営の朝鮮中央通信は26日、金正恩党委員長が江原道(カンウォンド)の「松涛園総合食料工場」を視察したことを報じた。このなかで、金正恩氏の妻である李雪主(リ・ソルチュ)氏の呼称が「女史」から「同志」へ変更されていることがわかった。北朝鮮において、こうした呼称は当人の立場を示す重要なものであり、変更の背景が気になる。
「イケメン俳優」を処刑
李雪主氏の呼称変更の理由について、「女史」は外交行事などに限って使われているのではないか、との指摘もある。金正恩氏は今年に入り、南北首脳会談を2回、中朝首脳会談を3回、そして米朝首脳会談と立て続けに外遊を行った。李雪主氏は、南北首脳会談、中朝首脳会談で金正恩氏に同行し、いわば「ファーストレディー外交」を展開したことから、そのための呼称だった可能性があるという。
(参考記事:【写真特集】李雪主――金正恩氏の美貌の妻)
一方、韓国紙・東亜日報は、北朝鮮内部に、李雪主氏に「女史」の呼称をつけることに否定的な世論があったことを紹介している。朝鮮半島で「女史」は日本で使われている以上に敬意の込められた呼称であり、とりわけ北朝鮮では、その傾向が強いと見られる。実際、北朝鮮で「女史」と呼ばれた女性は、金日成主席の夫人、金聖愛(キム・ソンエ)氏以来、約40年ぶりだという。最高指導者の妻であるとはいえ、1989年生まれとされる李雪主氏には「まだ早い」という意見があったのだろうか。
李雪主氏に対する、別の形での反発が生じている可能性も拭えない。もともと李雪主氏は、銀河水(ウナス)管弦楽団に所属していた歌手だ。同楽団は、李雪主氏のスキャンダルがらみで強制解散させられ、一部のメンバーは公開処刑されるなどの悲劇も起きた。
(参考記事:「芸術団虐殺事件」に隠された金正恩夫人の男性スキャンダル)
さらに、興味深い内部情報がある。李雪主氏のファミリーが、平壌のタクシー利権を握っているというものだ。父親が高麗航空タクシー事業所のオーナーであり、彼女自身も朝鮮労働党39号室傘下の金剛経済開発総会社(KKG)を通じて、平壌市内でのタクシー事業に直接関与しているという。北朝鮮において、タクシーは許認可事業だ。この2社は、日本円で毎日200万円ほども利益を上げている、つまり1年間で7億円以上にもなるビッグビジネスだという。
(参考記事:金正恩氏が意のままにする「美人妻利権」の現場写真)
ちなみに、李雪主氏の一族がタクシー利権を握る前まで、この業界で幅を利かせていたのは張成沢(チャン・ソンテク)元党行政部長の姪の夫で、北朝鮮きっての「イケメン俳優」と言われたチェ・ウンチョル氏だったが、同氏は張氏が2013年に粛清・処刑された際に連座させられ、処刑されてしまったという。
(参考記事:【写真】北朝鮮の「イケメン俳優」チェ・ウンチョル)
チェ氏の処刑後、北朝鮮のタクシー利権に魑魅魍魎が群がったことは想像に難くない。その結果、李雪主氏一族が巨大な利権を得たのだ。それに対する嫉妬が、彼女の身の上に微妙な影を落としているとしても、不思議ではなかろう。