「鬼滅の刃」と「ローソン」コラボ続々 からあげクンからXmasケーキ、ATMまで…
『週刊少年ジャンプ』に連載されていた『鬼滅の刃』(原作:吾峠呼世晴)が、昨年、アニメ化によって爆発的なヒットとなったのはご存じのとおり。アニメは同年9月末に放送を終え、原作も今年5月に連載が終了したものの、10月に映画『鬼滅の刃 無限列車編』の公開を控えることもあって、いまもファン及び周辺業界の熱は冷めていないようだ。かくいう私も定額動画配信サービスを利用し、今更ながらアニメを視聴したクチである。こうした視聴スタイルが「鬼滅」ブームを生んだという指摘もあるのだが……詳しくは後述しよう。
一時は原作コミックスが品切れになる社会現象を起こした作品だから、食品メーカー各社も『鬼滅』を放っておかなかった。実に多くのコラボ商品や企画が立ち上がっており、最近の例をざっと紹介するだけでも、
・日清食品のチキンラーメンでフィギュアプレゼントおよびコラボパッケージ展開
・ダイドードリンコでコラボ缶コーヒー展開
・丸美屋食品のカレーとふりかけに「キラキラシール」付録
・荻野屋で峠の釜めしコラボの「無限列車駅弁」発売
・築地銀だこ(ホットランド)でコラボたこ焼き及びオリジナルグッズ販売
・極楽湯でコラボキャンペーン コラボ風呂や限定グッズ、オリジナルメニューなど展開
・無添くら寿司でクリアファイルプレゼント等のコラボキャンペーン実施
・イオン店舗でサントリーフーズとキャンペーン ノートやステンレスボトルプレゼント
・お好み焼 道とん堀でコラボお好み焼き登場
・ドン・キホーテでクリアファイルやミニ色紙をプレゼント
……といった具合だ(開始時期順不同。複数回実施されたキャンペーンあり、終了分も含む)。
◆ローソンに限ればさらに多岐!
これがローソンとのコラボとなると、さらにバリエーションに富む。10月13日に発売が予定されているタイアップ商品を並べるだけでも、
・キャラクター焼印入り「からあげクン焦がしバター醤油味」
・煉獄杏寿郎の「ジャンバラヤおにぎり」「焼きカレーパン」
・オリジナルステッカー封入の「漆黒無限炒飯」「山かけうどん」「禰豆子の蒸し鶏と梅しらすのサラダ」「煉獄杏寿郎の炙り焼豚丼」
・ランチパック 炭治郎のメロンクリームと禰豆子のいちごクリーム(パッケージ3種)
・鬼殺隊サンド 炭治郎のレタス、善逸のたまごサラダ、伊之助の焼豚
・最後の試練 チョコシュークリーム
・「鬼滅の刃」マグカップ&みかんゼリー
・「鬼滅の刃」メロンミルク(パッケージデザイン6種)
・「鬼滅の刃」LOOK 抹茶(オリジナルミニ色紙付)
・チロルチョコ「鬼滅の刃」ザクザククランチ(パッケージ13種)
・ドラゴンポテトサワークリーム鬼オン味(パッケージ3種)
発売日を別にするものも含めれば、秋に出るタイアップ食品だけで19商品がローソンで販売される(詳細はキャンペーンサイトを参照のこと)。
さらに年末年始では、クリスマスにむけて「炭治郎と禰豆子のクリスマスケーキ4号」、缶とシールがついた「からあげクンBOX」がラインナップされており、お正月商品には炭治郎柄の風呂敷に包まれた「おせち」も発売予定だ。
食品だけではない。8月〜10月にかけてローソンで販売された(販売される)オリジナル商品は「エコバッグ」「ボックスティッシュ」「アクリルスタンドマスコット」「付箋」「クリアファイル」といったバリエーション。ほかに野菜や果物を含む1000円以上の買い物で「オリジナル紙製バッグ」がもらえるキャンペーンが実施されたり、対象商品購入のレシートスタンプを集めてのグッズプレゼント、グッズの当たるスマホくじなどがある。ほかにユニークな試みでは、ローソンのATMを利用するともらえるクーポンで『鬼滅』の「クッション」「がま口財布」が当たるキャンペーンも……。
きりがないのでこれくらいにしておくが、これらは「直近」で行われるローソンとのコラボの状況である。さかのぼれば19年4月1日発売の『週刊少年ジャンプ』にローソン限定の鬼滅クリアファイルが付いてくるという過去のキャンペーンが確認できた。人気爆発のきっかけとなったアニメの放送が19年4月からだから、ローソンはかなり早い段階から鬼滅と協力関係にあったことになる。ローソンでは『名探偵コナン』の限定グッズなども販売しているので、何も鬼滅に限った話ではないのだが、とはいえこれだけの長期間にわたって多くのコラボ展開が実現しているのは、鬼滅側としても、ヒット前からキャンペーン協力していたローソンに思うところがあるのだと推察する。
◆鬼滅のコラボの特長
コンビニであるローソンの利用者は、老若男女である。そのローソンでここまでコラボが大展開されているのは、つまり、鬼滅の刃のファン層も幅広いことを意味するのではないだろうか。ローソンのコラボに限っても、若〜中年層をターゲットにしているお菓子から、若い男性が好みそうなボリュームのある丼弁当、明確に「大人」を見据えたATMなどさまざまだ。アパレル関係のアイテムは女性にも好まれるかもしれない。
ローソン以外でも、カップラーメンや健康ランド、ファミリー向けの回転寿司と、やはりターゲット層が多岐にわたるコラボが行われている。アニメカルチャーに疎い身ながら、「ヒット」とされる作品でも、ここまでの幅の広いファン層を見せるものは、そうないのではないかと考える。
理由はどこにあるのだろうか。アニメ業界に精通するジャーナリストの数土直志氏は、鬼滅の刃のファン層を〈下は10代から上は50代、60代まで〉と述べ、深夜放送であった鬼滅のアニメについて次のように分析している。
〈どうやって、子供たちの心を掴んだのか。おそらく配信サービスだ。公式サイトで配信情報を見ると、20以上ものプラットフォームで提供されていることが分かる。(中略)「鬼滅の刃」は、視聴機会を最大限に広げることで、作品認知を高めた。子供たちは深夜の放送を見られなくても、配信で見られる(中略)後から知った子どもたちがネットを通じて手軽に途中参入できたのも、人気に貢献したことだろう〉(『デイリー新潮』2020年9月14日配信記事より)
動画配信サービスによって『鬼滅の刃』は視聴機会を広げた。これは、ひょっとすると子供に限らず、もっと広い世代のファン開拓に成功したのかもしれない。実際、今年で53歳になる私も動画配信で『鬼滅』を観た。こうやって幅広く受け入れられた『鬼滅』だからこそ、幅広い利用者のいるコンビニで、コラボが受け入れられたのだろう。