#東京建築散歩 知る人ぞ知る 渋谷のモダンな「北谷稲荷神社」【東京都渋谷区】
渋谷には知る人ぞ知る旧い寺社が散見されますが、「北谷稲荷神社(きたやいなりじんじゃ)」もそのひとつ。参道入口が2つあり、ひとつは渋谷公園通りを上った右方向にある入口。
一見、普通のオフィスビルみたいな感じで、
この先にまさか神社があるとは思えないですよね。
しかもこの階段の対面にはこんなけしきが。。
はい、丹下健三氏の名建築「国立代々木競技場」です。
この名建築の先に、渋谷の喧騒とは無縁の「北谷稲荷神社」の社がひっそりと佇んでいます。
北谷稲荷神社を設計したのは、菊竹 清訓氏(きくたけ きよのり/1928ー2011)。1960年代後半から若き日の黒川紀章氏と共に 都市と建築の新陳代謝を図る「メタボリズム」を提唱した名建築家です。 近くにある西武百貨店渋谷店LOFT館も菊竹氏の設計。北谷稲荷神社にも、菊竹建築のモダンな意匠が随所に見られます。
手水舎の真赤な蛇口も、超モダーン。
神社の境内には、旧い鳥居に刻まれていた太陽と月の意匠にちなんだデザインが。
意外にも北谷稲荷神社の歴史は旧く,『新編武蔵国風土記稿』などの伝承によると15世紀に創建されたよう。主祭神は、宇迦之霊大神(うかのみたまのおおかみ)。配祀神は、大己貴大神(大国主神の別名)、大宮比賣大神(宮中の調和の女神)、神功皇后(応神天皇の母)、大田大神(猿田毘古神の異称)です。
神社は昭和20年(1945年)に東京大空襲で全焼し、終戦後はGHQに接収されましたが、1946年に返還されて復興。その約40年後の1997年にこのモダンな社殿が再建されました。
社殿の右奥には「土師家天満宮」と「宇田川出世弁財天」の小さな御末社も祀られています。
土師家天満宮は麻疹や疱瘡病に霊験があるといわれ、江戸時代には祈願する群集の行列が絶えなかったのだとか。一説では、土師家(はじけ)をハシカと読み換えて 麻疹の快復祈願をしたともいわれているようです。
こちらは、宇田川出世弁財天。ちっちゃな郵便箱みたいなかわいらしい社です
宇田川出世弁財天のすぐ側にはシダレウメの木が生い茂っており、青々とした梅の実がたわわに実っていました。
境内の一角には、明治時代にこの地を離れなければならなかった氏子が奉納した灯篭があります。
この灯篭の先には、ファイヤー通りに面したもうひとつの参拝口が。日月鳥居(じつげつとりい)と呼ばれる鳥居の正面には円形、背面に半月形の浮彫りが刻まれています。
渋谷の喧騒に疲れたら、北谷稲荷神社でほっと人心地ついてみてください。
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北谷稲荷神社
住所:東京都渋谷区神南1-4-1
TEL: 03-3461-2971
アクセス:渋谷・原宿・明治神宮前各駅より徒歩10分
社務所開所時間: 8〜17時
※現在、第七共同ビル改修工事に伴い、足場等の設営が行われていますが、工事期間中も通常通りご参拝可能です。