金正恩氏の「危険な仲間」に米軍も注目
これから、北朝鮮とイランの関係に注目が集まることになるかもしれない。次期在韓米軍司令官のブルックス氏は、19日に行われた米上院軍事委の公聴会で、北朝鮮とイランのミサイル開発協力について「世界にとって極めて危険だ」と述べた。その同じ日、下院で開かれたセミナーではイスラエルのミサイル専門家が、北朝鮮がイランのミサイル技術を直接・間接的に導入していると指摘。それをボイス・オブ・アメリカ(VOA)の韓国語版が報じている。
(参考記事:「北朝鮮のミサイルにイランの技術」イスラエルの専門家)
知ってのとおり、イスラエルとイランは敵対関係にある。また、核開発問題で妥結に至ったものの、米国の保守政界などにはイランに対して厳しい見方を維持する向きも多い。それに、VOAは米政府系のメディアだ。ここへきて北朝鮮とイランの関係がクローズアップされる裏には、何らかの意図があるような気もする。
とはいえ、北朝鮮とイランが軍事的に密接なつながりを持ってきたのは事実だ。一昨年から昨年にかけても、両国が核・ミサイル分野で協力関係を維持していることをうかがわせる様々な情報が浮上。日本の公安調査庁も注目している。
北朝鮮と、中東イスラム国家との軍事協力の歴史は古い。第4次中東戦争に際し、北朝鮮はエジプトとシリアに空軍を派遣。中東戦争でイスラエル軍と戦っており、その後も両国に様々な武器を販売してきた。とくにシリアとの関係は密接で、金正恩第1書記とアサド大統領は頻繁にエールを交換し合っている。
(参考記事:第4次中東戦争が勃発、北朝鮮空軍とイスラエルF4戦闘機の死闘)
イランとは、1979年のイスラム革命後に接近し、アフマディネジャド前大統領の出身母体である革命防衛隊が窓口となり、潜水艇などの武器取引を行ってきた。
こうした事実を踏まえれば、たとえば米国が北朝鮮・イラン関係を槍玉に上げようと考えたとしても、それはむしろ自然なことだ。また、単に北朝鮮の核・ミサイル開発を抑え込むためだけでなく、「北の核」に対する潜在的需要をけん制する上でも、北朝鮮と一部の国々との関係を監視すべしとの論調は強まってくるかもしれない。
もっとも、金正恩氏の暴走の裏には、人権問題のために先進民主主義国とは正常な関係が築きえないことへの絶望と、不確実さを増す世界の危険な潮流への期待がある。生半可なけん制で、その動きを止めることはできないだろう。