ECBの次期総裁のラガルド氏にとっての当面の課題
24日のECB理事会では、主要政策金利を据え置いた。また前回9月の理事会での決定通り、11月から月200億ユーロのペースで資産買い入れを再開することも確認した。これは利上げを行うまで実施するとしている。
今月末に退任するドラギ総裁にとっては今回が最後の理事会となる。今回の会議には次期総裁のラガルド氏も出席したそうである。
ドラギ総裁が就任したのは、2011年11月1月であった。同年11月8日にイタリアのベルルスコーニ首相が辞意を表明し、9日には証券決済機関のLCHクリアネットがイタリア国債の証拠金率を引き上げたことから、イタリアの10年債利回りが危険ゾーンである7%台に上昇した。
欧州の信用不安が深刻化したことからイタリア出身でもあるドラギ総裁は、就任後、早々に動きを見せた。11月3日のECB理事会では、主要政策金利であるリファイナンス金利を0.25%引き下げたのである。これ以降も、ECBは積極的な金融緩和策を講じる。これにより、金融市場での不安感を後退させ、欧州の信用不安も徐々に収まることになる。このため、マリオ・ドラギ総裁はスーパー・マリオとも呼ばれ、その政策に対してドラギ・マジックと称された。
しかし、過度な金融緩和に対してはドイツなどが慎重姿勢を見せていた。特に前回9月の理事会では、ドイツやオランダ、オーストリアなどだけでなく、ドラギ氏に近いとされたフランス中銀のビルロワドガロー総裁までが「これ以上の資産購入は現時点では不要」と反旗を翻した。これによりECBの内部分裂はかなり深刻化した。ドイツのラウテンシュレーガー専務理事は辞表を提出した。
欧州の信用不安を沈めた功績については評価されると思うが。その信用不安が後退してからもさらに緩和を進めたドラギ総裁の姿勢については問題を残す。物価目標が達成されないからといって、百年に一度とされる危機対応を平時に続けて行い、さらに深掘りする必要はあったのか。
次期総裁のラガルド氏にとって、当初の課題はECBの内部の亀裂をどのように修復するかということになる。さらにマイナス金利の副作用も懸念されるなか、考えられる緩和手段を前任がほぼ講じてしまったことで、あらたに危機が来た際の対処手段をどうするのかという課題も出てこよう。