英国の新財務相は大規模減税策についてほぼ全てを撤回すると表明、いったん市場は安堵したが、残る警戒感
英国のトラス首相は14日、クワジ・クワーテング財務相を解任した。後任には、ジェレミー・ハント元外相を据えた。首相はさらに法人税引き上げの廃止を撤回すると発表した。
トラス政権はすでに大型減税策の目玉だった所得税率45%撤廃案も撤回している。しかし、財政方針に対する不透明感は残り、14日の英国債はいったん買われたが、その後売りに押され、10年債利回りは4.3%台に上昇した。
しかし、ハント財務相は17日、トラス政権が9月に打ち出した大規模減税策について「ほぼ全てを撤回する」と表明した。これを受けて、欧州を中心に金融市場の混乱を招いていた英財政懸念がやや和らぎ、英ポンドや英国債が急反発。英国の10年債利回りは3.96%と前日の4.31%から急低下した。
トラス政権が9月23日に発表した大型減税策に市場が動揺し、通貨のポンドや英国債が売られた。年金が資金を捻出するために年金が保有する債券や株式など様々な金融商品の売却を余儀なくされ、危機的状況を迎えた。このため、英国債の売却を検討していたイングランド銀行は国債の買入を行うという異例の事態となった。
国際通貨基金(IMF)も「格差を広げる可能性が高い」と再考を促す事態となった。また、減税策をめぐる混乱から与党・保守党の支持率が低迷したこともあり、トラス氏は盟友ともされたクワーテング財務相の解任に追い込まれた。
それでも「成長プラン」そのものを撤回しているわけでなく市場は疑心暗鬼となっていた。イングランド銀行は予定通り、英国債の買入を期限としていた14日で終了した。
17日の英国債の利回りは急低下したが、いわゆるショートカバーの動きともいえよう。今回の英国債はまさに国債が財政などに対して警鐘を鳴らす格好となっていた。これは結局、トラス首相そのものへの警戒ともいえるものであり、その警戒はトラス氏が首相でいる限りはなくならないのではなかろうか。