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がんばれ、昇格組!

川端康生フリーライター

9戦して0勝5分4敗

「昇格組」が苦しんでいる。ヴァンフォーレ甲府、湘南ベルマーレ、大分トリニータである。ここまで3チームで9戦して0勝5分4敗。まだ白星がない(ナビスコカップを含めても勝っていない)。

開幕からの3節は、この3チームの試合を見た。ここ数シーズン「昇格組」が好成績を収め続けているからだ。

2009年 サンフレッチェ広島=4位

2010年 セレッソ大阪=3位

2011年 柏レイソル=優勝

2012年 サガン鳥栖=5位

今季もまた彼らの中からダークホースが……。そんな興味で足を運んだのだが。残念ながら結果は冒頭の通り。まだ勝利の瞬間に巡り合っていない。

でも、だからといって期待が裏切られているかと言えば、実はそれほどでもない。勝利こそつかめていないが、3チームとも見応えのあるゲームを展開してくれているからだ。

甲府の順位は上がる

昨年1位で昇格を決めたヴァンフォーレ甲府は、ここまでベガルタ仙台(1対1)、セレッソ大阪(1対2)、名古屋グランパスエイト(0対1)と対戦した。

結果は1分2敗だが、いずれのゲームも内容的には互角。僕が見に行った名古屋戦ではむしろ優勢に試合を進めていた。最後の最後、エラーから失点して負けたが、逆の結果になっていてもおかしくなかった。

布陣はオーソドックスな4-4-2。

選手間の距離がいいときにはリズムよくパスが回り、見ていて楽しい。チャンスも多く作れているから、フィニッシュさえ決まれば、星勘定を裏返すことも可能だろう(ウーゴは当たりだと思う)。

「昇格組」3チームの中ではやはり総合力という点では一番上。うまく運べば中位に来てもおかしくないチームだと思う(“エレベーター”が常態化しないためにもJ1に残りたい)。これから上昇する可能性は十分ある。

「未来」を夢想したくなる湘南

「これからが楽しみ」という意味では湘南ベルマーレも同じ。

何せ若い。平均年齢が23歳台。年齢だけではない。サッカーも若々しい。

とにかく、ボールを奪いにいく勢いがあり、ゴールを決めにいく勢いもある。開幕戦では横浜F・マリノス(対照的にベテランが揃っている)に、立ち上がりからハイプレッシャーをかけ、主導権を握ってしまった(結果は2対4で逆転負けしたが)。

もちろん相手も対策を立ててくるから、2節のサガン鳥栖戦(1対1)からはロングボールでプレスをかわしにこられたが、3節ではバレーをターゲットにダイアゴナルなロングボールを入れてくる清水エスパルスに対して、システムを変えて対応していた(3-4-2-1から4-1-4-1へ)。

テレビで見る限り、かなりバタバタした印象ではあった。でも、そこからがこのチームの真骨頂。ファイティングとチャレンジングの、まさしく「若い」スピリットでタイムアップまで闘い切った。

退場者を出した後に、サイドバックに下がった菊池のプレーぶりに湘南の魅力が象徴されていたと言っていいだろう。

多くはJ1経験さえほとんどない選手。率直に言って、上位進出は難しいかもしれない。しかし、前への勢いがあり、ピッチで弾む湘南のサッカーは、お金を払って見る価値が十分にある。残留できれば「未来」が楽しみなチームでもある。

先手はとれている大分

メンバーに関して言えば、大分トリニータも恵まれているとは言えない。

それでも、ここまでの3試合、すべてで先制している。宮沢をアンカーに置いた3-1-4-2の布陣で、やはり走力を武器にハイプレスを仕掛ける。ハマっている時間帯には、昨季J2で6位のチームとは思えないサッカーを披露する。

ただし、3試合すべてで逆転、あるいは同点に追いつかれている。その結果、2分1敗。

つまり課題ははっきりしているのだ。時間の経過とともに衰えていく運動量。いや、運動量が落ちていくのは仕方ない。大事なのは試合を読む力とペース配分だ……というのは簡単だが、しかし現実はそうはいかない。上手にサボるなんて芸当はなかなかできるものではないからだ。

だから、イケるところまでいく(しかない)。そして何とか勝ち切りたい。それが大分の覚悟だろう。僕はこの覚悟は買う。

ここまでのゲームを見て気になるのは(これは3チームに共通していることだが)ミスやエラーからの失点が出ていることだ。

肉体的疲労が、精神的疲労につながり、集中力を削がれてしまっているのだと思う。その意味では、J2から昇格したチームならではの現象と言えなくもない。

しかし、やはりこの種の失点はなくさなければならない。僅差での勝利を目指すなら、ならさらである。

J1のゲームテンポとプレースピードに早く慣れること。それが急務だ。

「昇格組」を見に行こう!

いずれにしても3チームとも、決して「つまらない試合」をしているわけではないのだ。それどころか紙一重の勝負を展開している。入場料を払う価値は十分にある。

付け加えるならば、今シーズンの「昇格組」はいずれも存続危機に直面したことのあるクラブ(大分は現在も……)。その点でもシンパシーは抱きやすい。

いまだ未勝利の「昇格組」。しかし、それはつまり、いまなら初勝利の瞬間に立ち会えるということでもある。

時間があったらスタジアムへ。きっと清々しい感動と出会えます!

フリーライター

1965年生まれ。早稲田大学中退後、『週刊宝石』にて経済を中心に社会、芸能、スポーツなどを取材。1990年以後はスポーツ誌を中心に一般誌、ビジネス誌などで執筆。著書に『冒険者たち』(学研)、『星屑たち』(双葉社)、『日韓ワールドカップの覚書』(講談社)、『東京マラソンの舞台裏』(枻出版)など。

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