「低レベルで残念だ」文在寅批判ににじむ北朝鮮のホンネ
韓国統一省の金銀漢(キム・ウンハン)副報道官は16日の定例会見で、北朝鮮の対韓国機関である祖国平和統一委員会が報道官談話で文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領の15日の演説を激しく非難したことについて、「南北首脳間で合意した板門店宣言や平壌共同宣言の精神に合致しないだけでなく、南北関係の発展にも全く役立たない」と反発した。
北朝鮮側の談話は、文在寅氏が演説で朝鮮半島の平和構築などを訴えたことを非難し、「(韓国当局者と)これ以上話すこともないし、再び対座する考えもない」と宣言。さらには文氏のことを「まれに見る図々しい人だ」などとして、辛辣に批判した。
韓国側はこれまで、北朝鮮からのこうした非難に対して、あくまで対話で解決するという原則的なコメントに終始していたのだが、さすがに大統領を「個人攻撃」されたとあって、言い返さざるを得なくなったのだろう。
しかし実際のところ、韓国側のこうした「ソフトな対応」が、北朝鮮を増長させてきた部分も否定できない。例えば、北朝鮮が11日に発表した外務省局長の談話は、短距離弾道ミサイル発射を韓国が非難したことを巡り、次のように言っている。
「普通の時でもなく、われわれに反対する戦争演習を公然と行っている渦中でわれわれを痛罵しようと自分の方からむしろ奔走していることこそ、盗人猛々しい、図々しい振る舞いだと言わざるを得ない。
われわれの相手がこれ程に低レベルなことが残念だ。(中略)
軍事演習での概念的な敵が明白にわれわれとなっている状況で、今後、そのような軍事演習をあらかじめ中止するか、軍事演習を行ったことに対してせめてもっともらしい弁解や解明でも誠意をこめてする前には、北南間の接触自体が難しいということを考えなければならない」
北朝鮮が言いたいのはつまり、「南北合意を踏みにじってまで米韓合同軍事演習をしやがって。そのうえこちらの自衛権を否定するとはどういうことか。自分を正当化できるなら何か言ってみろ」ということだ。これは見方によっては、韓国に対して「論戦」を挑んでいるのだとも言える。
しかし韓国側は、木で鼻をくくったようなコメントを出すだけで、説得力とインパクトのある主張は何も出していない。この点が、トランプ米大統領とは圧倒的に違う。
結局のところ、文在寅政権は「統一の未来」を語りつつ、そこへ至る現実的かつ論理的な戦略など持ち合わせていないのだ。あるいは、北朝鮮が論戦を挑んでいること自体に気づかなかったか、このいずれかだろう。
(参考記事:「何故あんなことを言うのか」文在寅発言に米高官が不快感)