【スプリンターズS展望】ジャスパークローネとテイエムスパーダの違いとレースの見どころとは
■新王者決定戦
秋のGⅠ開幕戦スプリンターズSは開催中の4回中山最終日、約2週間半後に迫った。前哨戦のセントウルSも終わり、GⅠの勢力図もはっきりしてきた。しかし、スプリント路線はここ何年か、王者が長期政権をかけ、防衛戦に挑むといった状況にない。21年スプリンターズS覇者ピクシーナイトはその年の暮れ、香港で落馬事故に遭い、長期休養へ。復活後は13、8、8着と徐々に兆しは見えるも、主役に返り咲けるかどうかは次走スプリンターズSにかかっている。
22年高松宮記念覇者ナランフレグは同年スプリンターズS3着で王座統一を逃した。その後は連覇を目指した高松宮記念4着と王者の意地をみせるものの、勝ち星から遠ざかっている。22年スプリンターズSを勝ったジャンダルムと今年の高松宮記念覇者ファストフォースはともに引退し、ターフを去った。ピクシーナイトとナランフレグを除くと、スプリントGⅠ2着以内はナムラクレア、ウインマーベルの2頭しかおらず、混戦を呈している。
サマーシリーズとセントウルSまでの勝ち馬と決め手は、
函館SS(良)キミワクイーン 1.08.2 差し 33.0-35.2
CBC賞(良)ジャスパークローネ 1.07.2 逃げ 33.7-33.5
アイビスSD(良)オールアットワンス 54.9 差し
北九州記念(良)ジャスパークローネ 1.07.3 逃げ 32.9-34.4
キーンランドC(重)ナムラクレア 1.09.9 好位 34.3-35.6
セントウルS(良)テイエムスパーダ 1.07.2 逃げ 33.5-33.7
サマースプリント王者についたジャスパークローネと同馬にこの夏、2連敗を喫したテイエムスパーダ。逃げ切り勝ちを決めた2頭がレースのポイントになる。短距離の頂点を競うレースらしく、本番では先陣争いが気になるところだ。
■久々に逃げて結果を残したテイエムスパーダ
単純に考えれば北九州記念で32.9を記録したジャスパークローネが筆頭だろう。小倉芝1200mはスタートから下りながらコーナーに入る。これは中山の外回りと似ている。過去10年のうち、中山施行9回における逃げ馬の前走は北九州記念4、セントウルS2、高松宮記念1、朱鷺S2。北九州記念でも逃げた馬が3頭、本番も逃げの手に出ている。ジャスパークローネが先手を奪う確率は高そうだ。
しかし、同期間のスプリンターズS逃げ馬は[0-3-1-5]。データ上、勝つためには逃げずに競馬をしたい。やはり小倉との違いは最後の急坂にある。残り180m~70mにかけて高低差2.2m、最大勾配2.24%の上り坂は全10場で最大クラス。スピード全開で駆け抜けた最後に立ちはだかる坂は想像以上に厳しく、ゴールまで100mを切っていても、逆転を許してしまう。この坂を乗り切り、ゴールまで脚を残すには控える作戦が理にかなっている。この点を踏まえ、控える作戦を選ぶのはどちらだろうか。
テイエムスパーダは22年CBC賞を1.05.8で逃げ切ってから、スプリンターズSまで逃げていたが、京阪杯からは行かれず、控える形で競馬し、結果を残せなかった。そんなスランプを脱したのが久々に先手を奪い切った前走セントウルSだ。
セントウルSのレースラップ
11.9-10.5-11.1-10.9-11.1-11.7
22年CBC賞もそうだが、テイエムスパーダはダッシュ力はそこまで鋭くない。ゲートからしばらくは快速馬に劣ってしまうため、行かれない競馬が目立ってしまった。しかし、セントウルSで4ハロン目10.9を記録したように、一旦、ダッシュがつくと、そのスピードを長く持続させることができる。800mダッシュから後半へ進められるレース展開がテイエムスパーダがもっとも得意とする形だ。逃げて不振を抜け出したテイエムスパーダが控えるとは考えにくい。
■ダッシュ力のジャスパークローネ
対してジャスパークローネはダッシュ力の鋭さでここまで先手を奪ってきた。
ジャスパークローネの北九州記念
11.6-10.4-10.9-11.2-11.3-11.9
スタートで一旦、テイエムスパーダを制したとしても、GⅠで得意な形にこだわり、再びハナを奪い返しにくるかもしれない。そのとき、ジャスパークローネはどうするだろうか。引くのか突っぱねるのか。この攻防こそが、今年のスプリンターズSのポイントになる。この攻防を後ろで狙っているナムラクレアに展開利は転がってくるのか。群雄割拠の時代だからこそ、枠順や展開といった不確定なものを味方に引き寄せた人馬に勝利は微笑む。つまり、ジャスパークローネとテイエムスパーダら快速馬たちの前半が今年の最大の見どころといえる。