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尿から「がん」の診断!? 尿検査でわかることは?

柳田絵美衣臨床検査技師(ゲノム・病理細胞)、国際細胞検査士
(写真:アフロ)

尿検査の新技術

尿からがんを診断できると名古屋大学や国立がん研究センターの研究チームが新たな技術を発表した。

「尿でがんを発見 新技術発表」

出典:CBCテレビ

尿中の細胞に含まれる「マイクロRNA」が持つ、がんの情報を調べる技術だ。

では、マイクロRNAとは一体何か?

マイクロRNA

マイクロRNAは20個前後の塩基からなる小さなRNA(リボ核酸)であり、がんの転移や増悪に関与していることで、注目されている。

がんに特異的なマイクロRNAを調べてがん患者か非がん患者なのかを判断することができる仕組みだ。

尿中マイクロRNAから「癌」を特定!

出典:九州大学NEWS

今後、研究が進み臨床への応用が期待される。

尿検査

小学生の頃から誰もが経験している「尿検査」。

検査の中でも最も身近で、長い付き合いだ。

尿検査で一体何がわかるのか?例えば、有名なのが「ブドウ糖」だ。

尿に含まれる糖は尿糖と呼ばれ、主に糖尿病の有無を判別する目的だ。

本来であれば、ブドウ糖は血液にのって体内を循環し、腎臓でろ過され、不要なものは尿として排出される。

ブドウ糖は体にとって重要なものであり、尿に排出されることはほとんどない。

つまり、尿に糖が含まれる状態では過剰に糖が体内に存在していることを示す。

もちろん、飲食やストレスにより尿糖の数値が上昇することもあるので、必ずしも尿糖=糖尿病ということではない。

それ以外にも、腎臓のろ過機能を検査するための「尿タンパク」や性行為などで感染する「トリコモナス原虫」、痛風で値が高くなる「尿酸」なども検査することが可能だ。

「たんぱく尿」

出典:厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト

「トリコモナス感染症について」

出典:横浜市衛生研究所

「高尿酸血症」

出典:厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト

実は、尿からは多くの情報を得ることができるのだ。

尿検査のナゼ?

誰もが経験したことのある尿検査だが、「最初と最後の尿を除いた中間尿を採取してください。」と言われたことがあるだろう。

なぜ、わざわざ少し排尿をしてからの中間尿でないと採取してはいけないのか?

それは、尿が出てくる尿道口の付近には常在菌や白血球が存在しており、採尿時の混入によって診断に影響する場合がある。

尿に多数の細菌や白血球が混入することで、尿路感染症と判断される尿の所見となってしまうのだ。

そのため、最初に少し排尿し尿道口付近を洗い流してから、尿を採取するというわけである。

ただし、クラミジア感染症などによる尿道炎を疑う場合は中間尿ではなく最初の尿(初尿)を採取します。

「クラミジア感染症」

出典:YAHOO!JAPANヘルスケア

尿からのがん検査

尿からのがんの検査は現在でもおこなわれている。

現在は、一般的に遺伝子を調べているわけではなく、細胞を調べている。

細胞は、様々な要因で形が変化する。

要因としては感染症や薬剤、物理的な刺激などがある。

そして、細胞自体が悪性化する過程においても、その形が変化していくのだ。

腎臓や膀胱、尿管や前立腺などに腫瘍(がん)がある場合、尿中に異常な細胞が排出されることがあるのだ。

その異常な細胞は、正常の細胞と比べると形や大きさ、細胞の中にある核の形などが異なるのだ。

その細胞の形や様子を1つ1つ顕微鏡で見て、異常な形をしている細胞がないかを確認していくのだ。

「膀胱がん 尿細胞検査」

出典:国立がん研究センター がん情報サービス

細胞は今日や明日といった短期間でがん化するわけではないため、中には前癌病変と呼ばれる「正常とがんの中間」という状態も存在し、細胞の形の変化も少ないことがある。

もちろん、先で述べたように様々な要因で形が変化するために、「がん細胞」とはっきりと判定することが困難な場合もある。

しかし、その場合でも「正常とは異なりますよ。注意してください。」という情報は得ることができ、これらが生活習慣の改善やこまめな検診、がんの早期発見につながるのだ。

細胞・組織の形態的特徴は、診断に結び付く重要な情報であり、信頼性が高い。

目で見える形態的特徴に加え、目には見えない遺伝子の情報が加われば、さらに正確性の増した尿によるがん検査が可能になると思われる。

臨床検査技師(ゲノム・病理細胞)、国際細胞検査士

医学検査の”職人”と呼ばれる病理検査技師となり、細胞の染色技術を極める。優れた病理検査技師に与えられる”サクラ病理技術賞”の最年少、初の女性受賞者となる。バングラデシュやブータンの病院にて日本の病理技術を伝道。2016年春、大腸癌で親友を亡くしたことをきっかけに、がんゲノム医療の道に進み、クリニカルシークエンス技術の先駆者として活躍。臨床検査専門の雑誌にてエッセーを連載中。講演、執筆活動も多数。国内でも有名な臨床検査技師の一人。現在、米国にある世界トップクラスのがん専門医療施設のAI 病理ラボ研究員として奮闘中。

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