イングランド銀行とECBの次期総裁選びの行方
英国の財務省は2020年1月末で退任する予定のカーニー英イングランド銀行(中央銀行)総裁の後任を選ぶ採用活動に着手したとか。カーニー氏を選んだ前回12年と同じく、一般から幅広く探す公募の形式を取るそうである。
英国政府は2012年11月26日に、英国の中央銀行であるイングランド銀行のキング総裁の後任にカナダの中央銀行であるカナダ銀行のマーク・カーニー総裁を任命した。総裁の任期は最大8年だが、カーニー総裁は早期の退任を前提に就任していた。EU離脱をめぐる混迷が深まるなかで退任時期を2度延期していたが、2020年1月31日には退任し、カーニー総裁はこれ以上の延長はないとしている。
カーニー氏の後任を巡っては、金融行為監督機構(FCA)のアンドリュー・ベイリー長官が最有力との見方があるそうだが、イングランド銀行のブロードベント副総裁も有力候補の一人だとか。一部に女性の総裁の可能性も指摘されている。
現在の英国のハモンド財務相の意中の人はいったい誰なのか。英国のEU離脱問題は解決されるどころか、問題が先送りされただけであり、イングランド銀行の舵取りも非常に困難となるとみられ、総裁選びには今回も苦慮することも予想される。
そして、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁の任期は今年10月となっており、こちらもこれから次期総裁選びが本格化するとみられる。
ドラギ総裁の後任はドイツからというのが暗黙の了解となっているようである。ただし、以前にドイツのメルケル首相は、今年トップが交代する欧州委員会委員長とECB総裁について、ドイツ出身者が獲得できる可能性としては欧州委員長ポストの方が高いと認識し、優先的に働きかけを行っているとの観測もあった。
ECBの次期総裁候補として、タカ派で知られるドイツ連銀のバイトマン総裁の名前が挙がっているが、バイトマン氏のECB総裁就任について南欧諸国などは、あまり好ましくはないとされている。
5月4日に欧州委員会のユンケル委員長が、ECB総裁の後任としてバイトマン独連銀総裁はふさわしい候補だと述べたと独紙ハンデルスブラットが報じた。ただし、ユンケル氏はこの人事で大きな決定権は持たない。それでもルクセンブルク首相やユーログループ議長を歴任したユンケル氏の発言は注目に値する。
欧州委員会の委員長人事と絡んで、さらには南欧諸国のドイツ出身者のECB総裁就任への警戒もあり、次期ECB総裁がタカ派とされるドイツ連銀のバイトマン総裁が就任するのか、今後の動向に注意していきたい。