米CPIは前月から鈍化。FRBによる大幅利上げ観測が後退し米株は上昇したが米長期金利は何故か変わらず
米労働省が10日に発表した7月の消費者物価指数は前年同月比8.5%上昇となった。伸び率は約40年半ぶりの大きさだった6月の9.1%から縮小し、市場予想の8.7%も下回った。エネルギーと食品を除くコア指数は前月と同じ5.9%にとどまり、予想の6.1%を下回った。
前月比では横ばいとなり、20年6月以降続いていた上昇が止まった。米国の物価上昇はひとまずピークアウトした可能性もあるが、高止まりが続くとみておいたほうが良さそうである。
家賃や外食の価格が代表例で、こうしたモノやサービスの価格上昇は一度速まると下がりにくく、根深いインフレ圧力になる。アトランタ連銀がそうした「粘着価格」を集めてつくった消費者物価指数は6月、1年間の上昇率が5.6%に達した。1991年2月以来、約31年ぶりの水準で、まだ加速が止まらない(10日付日本経済新聞)。
予想を下回った米消費者物価指数を受けて、9月のFOMCでの利上げ幅は0.75%ではなく0.50%かとの見方も出てきた。10日の米国株式市場ではインフレ懸念が和らいだことを好感し、ハイテク株をはじめ幅広い銘柄が買われ、ダウ平均は反発し535ドル高、ナスダックは360ポイントの上昇となった。
米債も買われ、米10年債利回りは一時2.67%まで低下した。この長期金利の低下も受けて、ドル円は132円近くまで低下(円高ドル安)。
ところが、米10年債利回りはここから戻り売りに押され、結局、前日比変わらずの2.78%となっていた。ドル円は戻りきれなかったものの、それでも133円あたりまで切り返していた。いったい何があったのか。
米株が大きく上昇し、これを受けてリスクオンの動きが意識されたことが考えられる。リスク回避の反対の動きとなることで、米債は戻り売りに押されたとの見方である。
それだけではなく、シカゴ連銀のエバンズ総裁の発言が影響したようである。10日にエバンズ総裁は、7月のCPIを「最初の前向きな統計」と評価しながらも、インフレ率は「受け入れがたいほど高い」と述べたのである。
インフレ率は今後鈍化しピークアウトするかもしれないが、歴史的にも高水準が続くことが予想される。FRBの掲げる物価目標の2%からは大きく解離している。FRBはインフレ警戒姿勢を保ち、利上げを続けるとの見方から、米債は戻り売りに押され、ドル円も切り返したのである。