コロナ禍でIPCから国内へ転職した28歳。篠原果歩、東京パラ後の未来へ夢を描く(3)
9月5日、コロナ禍の賛否の中で開催された東京2020パラリンピックが閉幕した。13日間、162の国と地域、および国を追われた人々など4400人の障害のある選手たちを照らした。異なる環境から集まり、無観客の東京で競い合った。
印象にのこる選手、フスナ・ククンダックウェ
篠原:子どもたちの積極的な交流という意味でも、印象的だったのは、大会最年少(14歳)のフスナ・ククンダックウェ(ウガンダ/競泳)に注目しました。アフリカってまだ障害者が隠される社会で、彼女は14歳ですが、問題意識をもっていて、「自分の財団を立ち上げて、障害者がスポーツできるような環境を作りたい」って。課題のある社会にいても、スポーツでいろんな国の人たちと交流して、吸収しているからこそ、14歳でこんな発想がるんじゃないかって思うんです。
フスナ・ククンダックウェは、右腕欠損で左手にも障害があるスイマー。唯一出場した女子100m平泳ぎSB8では決勝にいけるタイムではなかったが、出場したことで、憧れのライバル、エレン・キーン(アイルランド)と同じ競技で競いあうことができた。自身も自己ベストを記録できたことに満足した。日本人では、予選1組の同じレースを18歳の宇津木美都と泳いだ。ハスナは6レーン、宇津木は3レーンだった。
「ウガンダでは障害を持っていると、自分をさらけ出したいと思う人がほとんどいません。選手村のアスリートたちと一緒にいると、とても居心地がいいんです。まだ友達はできませんが、カフェテリアにいるときは、みんなに挨拶したり、一緒にいたりして楽しんでいます」と、記者会見で選手村での交流を楽しんでいる様子を話してくれた。
日本初のIPCアスリート委員/鈴木孝幸に期待
佐々木:閉会式で、金メダリストの鈴木孝幸が立候補していたIPCアスリート委員にめでたく選任されました。日本からは初めてです。アテネから5大会連続出場、今大会でも出場5種目全てメダルを獲得しました。日本チームが頼りにしているキャプテンです。先天性の四肢欠損をもつ重度障害の当事者でもあります。アスリート委員へ立候補した理由は、アジアの国のパラムーブメントを担うためということです。
篠原:IPCアスリート委員に日本人がなったりするのはすごくいいと思います。もしアスリート委員会委員長になれば、IPCの理事会やIOCのアスリート委員会にも参加する機会があると思うので、どんどん入っていったらいいですよね。
篠原:選手は国を代表するアスリートです。でも、いま、スポーツと社会の関係はどんどん稀薄なものになっています。オリンピックなど雲の上の存在で、オリンピックが社会に何をもたらすのか? 一般の生活をしている人たちにわからないような存在になってしまっていますよね。
篠原:この課題を解決するには、パフォーマンスを見てもらうだけでなく、アスリートとしての発信が必要です。障害の当事者としての発信も、まさにアスリート委員に求められる役割なんじゃないかなと思います。鈴木選手に期待します!
<この記事は、2021年9月29日にPARAPHOTOに掲載されたものです。
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