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史上初連続三冠の星城。男子バレーに光もたらす東京五輪担う逸材たちの魅力とは。

大林素子スポーツキャスター、女優
(c) Michi ISHIJIMA

史上初めて、2年連続の「高校三冠(インターハイ、国体、春高)」を達成した星城

石川ら中心メンバーが1年生のころから、2年間、彼らを見守ってきた。12日の決勝戦は、テレビ中継のベンチリポーターとして傍らで。「6冠」という素晴らしい記録の瞬間を伝えることができた。

星城の強さは、どこにあったのか。

まずは、「奇跡のチーム、奇跡の世代」であったこと、そして、竹内裕幸監督の指導方針が彼らにうまくはまったことにあったと思う。

春高では、5年あるいは10年に、スーパーエース的選手が生まれてくるが、この星城のメンバーは、全員がそんな存在。ウイングスパイカーのエース石川祐希(191cm)、その対角のウイングスパイカーの武智洸史(186cm)、リベロの川口太一(173cm)、セッターの中根聡太(173cm)、ミドルブロッカーの神谷雄飛(191cm)、ウイングスパイカーの山崎貴矢(192cm)、ミドルブロッカーの佐藤吉之佑(186cm)。みんな、ほかのチームにいてもスターになれる、ポテンシャルの高い6人が集まった。

1983年の春高で、ノーシードから優勝し「ミラクル東亜」と呼ばれたあの東亜学園(私は当時中3でテレビで見ていてよく覚えている)、その後2007年、2008年と連覇したときの東亜も、メンバーはそろっていたが、実業団で何人通用したかといえば、一人か二人。それが、今回の星城はこのまま、実業団にいっても戦えるくらい。現に、先の天皇杯では、大学生(愛媛大)を破り、V・プレミアリーグのジェイテクトから1セットを奪ってもいる。

一人のチームではなく、それぞれが力がある。石川だけでは勝てなかった。支えあうのではなく、個々がしっかりしていた。それぞれがチームをひっぱる力があった。誰かが調子を崩しても、だれかが補っていた。だからすきがない。強い「個の力」が集まり、強い「チーム力」となっていた。

武智は県外(愛媛)出身、それでも、石川と一緒にプレーしたいと星城にやってきた。そうしてこの「奇跡のチーム」は生まれ、まさに「奇跡の世代」となった。「6冠」の理由だと思う。

強くなるには何をすれば? 選手に考えさせる指導方針

そして、ここまで成長させたのが、竹内監督だ。竹内監督の指導法は、技術や戦術を教えるのではなく、こうしろと言うのではなく、選手に考えさせる。彼ら自身がデータをみて、作戦を組み立て、強くなるためには何をすればよいのかを自分たちで考え、実行する。準決勝の東福岡戦が今大会の山と考えていたというセッターの中根は、ビデオを10回以上見て、攻撃の組み立てや作戦を考えたそうだ。監督は、メンタル面や環境面でサポートする存在。題材を与えて、あとは選手に考えさせた。負ければ、自分たちが考えたことがだめだったとわかる。そんな頭を作らせた。そういう指導方針が、彼らの世代にはまったと思う。選手に自主性が生まれ、今春高でも、自分たちで考えて動くバレーができていた。竹内監督のナイスチョイスだったと思う。

今大会、選手は、監督の気持ちにもちゃんと気づいていた。いつもはあまり立つことのない竹内監督が、今大会は、ずっと試合中立っていた。「勝ちに来ているときはそうなんですよ」と、選手たち。最高のチームだったと思う。

そんな竹内監督、このチームで試合ができなくなることを寂しく思ったこともあったそうだ。だが、東京五輪が決まってからは変わったという。彼らが五輪で活躍するのを見る、「オレの楽しみが増えた」と。「このメンバーで東京五輪を戦いたい」と、一足先に、高卒でV・プレミアリーグの豊田合成に進むリベロの川口も言う。全員が全日本に入る力を秘めているだけに、このチームで東京五輪、可能性ゼロではない。私も楽しみに見守りたいと思う。

全日本を担っていく選手について思うこと

エースの石川

全日本に入るのは時間の問題というくらいの、何年かに一人のスーパーエース。素晴らしいのは、その高さ(最高到達点は現在の全日本エース、清水邦広を超える345cm)、ジャンプ力としなやかさ、柔軟性。のびやかさ、スイングの切れなど、越川優や福澤達哉の中間をいくよう。美しい。そして、守れる。今春高でも、サーブレシーブでせめられていたが、レシーブしてそのまま打ちに行き、得点という場面が多くあった。今のバレーでは、打つだけではなく、守れるウイングスパイカーが必要。そういう意味で頼もしい存在。

バックアタックはあまり多くは打たない感じできたが、十分できる。それもこれから楽しみだ。

実は、石川は、身長を伸ばすことが目的だったため、筋力、体力づくりをあまりしてこなかった。現在、191cmだが、まだ伸びているという。ゆえに、体を作っていくことがまさにこれからの課題。中大に進むが、実業団、世界となると、スケールが大きいので、もっと筋力、体力が必要となる。パワーがついてくれば、また新たな能力も出てくるだろう。けがをしないで、このまま育ってほしいと思う。

メンタルの強さもいい。3枚ブロックがついてもあえてインナーに打ち込むようなところがある。そしてキャプテンになってからは、よく意見を言ったり、周りに声をかけていた。頭のいい、大人な選手。ルックスもいいし、まさに超スーパースター、確実に将来の全日本エース候補だと思う。楽しみにしている。

その対角の武智

オールラウンダーの彼もいい。身長は186cmで、全日本をみたときには少し小型かもしれないが、オポジット(セッター対角)などもでき、ジャンプ力と守りで米山裕太のような選手になってくれたらと思う。トスも上げられる。石川と武智で2セッターという案もあったくらい。何でもできる可能性を秘めている。

実は、星城の中で、私が初年度から一番、密着していたのが、この武智だった。彼は、県外組で、川口とともに寮生活をしている、寮の食事がないときは自分たちで食事を作るなど、苦労してきた一人でもある。「つらいときなど、竹内監督やそのご家族、他の選手の父兄や先輩が親代わりとなって支えてくれたことで、自分がある、勝って恩返しがしたい」と、常々話をしていた。勝てて、その思いがはたせてよかったと思う。

第3セット、リードしてテクニカルタイムアウトの16点をむかえたころ、「試合が終わってほしくないなあ」と思ったという。実は私もそうだったし、誰もが思うこと。もうこのメンバーで試合ができなくなってしまうのかと思うと……。

エースの石川とはお互いを尊敬しあう素晴らしい関係。石川に何かあったら武智が励ましていた。ともに中大へ進む。東亜の大竹も。また大学制覇を目指して、もちろん全日本でも。上を目指してがんばってほしいと思う。

リベロの川口

高校ナンバー1リベロ、V・プレミアリーグに進む川口も光っていた。瞬発力、反射神経のよさ、勘のよさ、ボールを見る目やボールコントロールのうまさがある。佐野優子が「神がかり」といわれ、相手が佐野を避けて打ってきていたが、今回も同じように、相手が川口を避けて打ってきていたが、川口は常にそこにいてレシーブしていた。リベロ賞をもらってプレッシャーもあったが、それならもっとあげてやろう! とメンタルもとても強い。世界を考えると、170cm台のリベロは厳しい面もあるだろうが、目指している永野健のように、声をかけ、チームを引っ張れるリベロになってほしい。後ろからみて、指示のできるリベロ、リベロはバレーを一番知らなければならないポジション、実業団の中で、どう成長していくのか見守りたい。

ミドルの神谷、ウイングの山崎

彼は、去年から急成長した。彼の速攻で助かっていた場面がかなりあった。191cm、高身長のミドルは魅力。ジャンプ力があり、スイングの切れもいい。スパイク型、松本慶彦、横田一義タイプのミドルブロッカーに育ってほしい。ブロック力がどこまでつくか、楽しみでもある。

山崎は、オポジットもミドルもできるオールラウンダー。これからの全日本選手は、ポジションにとらわれない動きができなければならない。そのいう意味でも期待している。パワーが魅力。ゴッツ(石島雄介)タイプに育ってくれたらいいと思う。

(c)Michi ISHIJIMA
(c)Michi ISHIJIMA

2020年東京五輪へ、男子バレーに明るい光

五輪や世界選手権出場を逃すなど、結果が出ず、苦しい日本の男子バレーの中で、こういった選手がいることは、本当にうれしいこと。星城だけでなく、他にも、201cmのウイングスパイカー、雄物川の鈴木祐貴、全日本男子コーチの大竹秀之さんを父に持つ、202cmのウイングスパイカー、東亜学園の大竹壱青らが。2020年の東京五輪が決まった翌年に、2020年を背負う頼もしいスーパースターが男子に出てきた。男子が豊作な春高だったと思う。

星城が2年連続三冠(バボちゃんネット)

春の高校バレー2014の結果(フジテレビ)

星城メンバー(バボちゃんネット)

スポーツキャスター、女優

バレーボール全日本女子代表としてソウル、バルセロナ、アトランタ五輪をはじめ、世界選手権、ワールドカップにも出場。国内では日立や東洋紡、海外では日本人初のプロ選手としてイタリアセリエAで活躍した。現役引退後は、キャスター・解説者としてバレーボール中心にスポーツを取材。日本スポーツマスターズ委員会シンボルメンバー、JOC環境アンバサダー、JVA(日本バレーボール協会)広報委員、JVAテクニカル委員、観光庁「スポーツ観光マイスター」、福島県・しゃくなげ大使としても活躍中。また、近年は演劇にも活動の場を広げ、蜷川幸雄作品や『MOTHER~特攻の母 鳥濱トメ物語~』などに出演している。

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