来年のECB総裁人事の行方はやや不透明
ドイツの経済紙のハンデルスブラットによると、メルケル首相は、来年中にもトップが交代する欧州委員会委員長と欧州中央銀行(ECB)総裁について、ドイツ出身者が獲得できる可能性としては欧州委員会委員長ポストの方が高いと認識し、優先的に働きかけを行っているという(ロイター)。
金融市場では来年任期満了となるECBのドラギ総裁の後任の方が注目されるが、政治上では当然ながら欧州委員会委員長も重職である。
欧州委員会委員長とは、欧州連合の政策執行機関である欧州委員会のトップであり、 欧州連合の役職では最も強力な権限を持つとされている。現職は2014年11月に就任したジャン=クロード・ユンケル(前ルクセンブルク首相)。任期は5年で再任も可能。
欧州委員会委員長には初代が西ドイツのヴァルター・ハルシュタイン氏となっていたが、その後12代目のユンケル委員長まで、ドイツ出身の委員長は就任しておらず、ECBよりも欧州委員会のトップにドイツ出身者を送り込むことがメルケル首相の優先事項との見方もあるようである。
ECBの次期総裁候補として、タカ派で知られるドイツ連銀のバイトマン総裁の名前が挙がっているが、バイトマン氏のECB総裁就任は南欧諸国などは、あまり好ましくはないとされている。現在のイタリア出身のドラギ総裁は極めて慎重に出口政策を進めているものの、バイトマン氏はこのやり方は生ぬるいとみているようである。
ECBの人事に関しては、今年5月末に任期を迎えたコンスタンシオ副総裁に代わり、スペインのデギンドス経済相が6月に副総裁に就任した。今後もドラギ総裁を含め、4つの理事ポストが入れ替わる。
総裁の人事の行方をうかがいながら、ユーロ圏の政治も大きく絡んで、総裁を含めたECB首脳部、そして欧州委員会委員長の人事が決定されることになろう。
市場ではECBの次期総裁はバイトマン氏かとの見方が強いものの、政治次第ではタカ派ではなくハト派の総裁が就任する可能性もありうるか。