金正恩氏の「処刑動画」が北朝鮮崩壊を引き寄せる
北朝鮮は、遠からず崩壊する――。
もう20年以上も前から言われ続けている言葉だが、それが現実のものとなる兆しは、これまでまったく見えてこなかった。しかし今度は、もしかしたら、もしかするかもしれない。
北朝鮮で、朝鮮人民軍や朝鮮労働党高官らの脱北が相次いでいるのだ。
韓国紙、東亜日報系のテレビ局・チャンネルAは3日、北朝鮮のパク・スンウォン朝鮮人民軍上将が約2カ月前、ロシア・モスクワにある第三国の大使館を通じて亡命したと報じた。パク氏はすでに、韓国政府により保護されているという。
パク氏は、朝鮮人民軍総参謀部の副参謀長などを歴任した大物であり、核開発や弾道ミサイル開発に関わる重要情報が、韓国にもたらされている可能性が高い。
ほかにも、金正恩氏の統治資金を管理する朝鮮労働党39号室や、「第2経済委員会」の高位級幹部が韓国に亡命したと伝えられている。
このように幹部らの脱北が相次いでいるのは、些細なことで側近らを銃殺してしまう、金正恩氏の統治手法に恐怖心を抱いているからに他ならない。本来は対人用でない大口径の4連装高射銃で人間を文字通り「ミンチ」にし、それを他の幹部らに無理やり見せつける正恩氏のやり方は、ある意味で彼の狙い通り、恐怖心の醸成に成功しているわけだ。
しかし若年の彼は、人々の気持ちを過度に委縮させることがどのような結果につながるか、理解できていないようだ。
北朝鮮のようにカネもモノも足りない環境下では、現場の責任者たちが様々な場面で機転をきかせ、あるいは英断を下すことなしに、社会は回って行かない。金正恩氏の恐怖政治が、どうにかこうにか回っている北朝鮮社会の歯車を、完全に狂わせてしまう可能性は低くないのだ。
ちなみに、やはりと言うべきか、金正恩氏が視察中に激怒した大同江スッポン工場の支配人が銃殺されていたことが明らかになった。
北朝鮮メディアは、正恩氏が激怒したときの様子を動画で公開している。それを見ると、職員たちが金正恩氏の前で、こわばった表情で直立不動の姿勢を取ったり、泣き顔のような表情をする老幹部らしき人物も見られる。
無慈悲な「殺人」が行われる直前の恐怖の場面を、北朝鮮の人々はどのような思いで見ているのだろうか。