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ゲームに欠かせない雑誌達の実情は…ゲーム・エンタメ系雑誌部数動向をさぐる

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ かつてはゲームをする際にも専門誌は必要不可欠な存在だったのだが。(写真:アフロ)

・2018年7~9月期でゲーム・エンタメ系雑誌の印刷証明付き部数(※)トップは「Vジャンプ」の18.0万部。

・部数では「アニメージュ」が第2位、そして「アニメディア」「PASH!」が続く。

・部数の前四半期比では「声優グランプリ」「声優アニメディア」がプラス。前年同期比では「声優アニメディア」のみプラス。

トップはVジャンプ…部数の現状

インターネットのインフラ化に伴い速報性が重要視され、ゲーム関連をはじめとしたエンタメ情報の提供媒体として、紙媒体の専門誌の立ち位置が危ぶまれる昨今。ゲームやエンタメ専門誌の部数動向を、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数から確認する。

まずは最新値にあたる2018年の7~9月期分と、そしてその直前期にあたる2018年4~6月期における印刷証明付き部数をグラフ化し、現状を確認する。

↑ 印刷証明付き部数(ゲーム・エンタメ系雑誌、万部)(2018年4~6月期と2018年7~9月期)
↑ 印刷証明付き部数(ゲーム・エンタメ系雑誌、万部)(2018年4~6月期と2018年7~9月期)

いくつかの雑誌で青よりも赤の方が短め、つまり部数が減少している様子が分かる。他方、差異はさほどないように見えるが、いくつかの雑誌で赤の方が長い、つまり部数が伸びている雑誌もある。最大部数を示しているのは「Vジャンプ」で、前期よりは減少している。

印刷証明付き部数を計上しているゲーム・エンタメ誌は、現時点で7誌。日本雑誌協会の情報公開サイトにおけるジャンル区分で「パソコン・コンピュータ誌」に該当する雑誌は皆無(ジャンル区分そのものは今なお存在している。かつては「マック・ピープル」「ネットワークマガジン」などがあった)。今後も減少傾向が続くようならば、「ゲーム・エンタメ」の定義で包括しえる、類似カテゴリの雑誌を加えることも検討せねばなるまい。

前四半期からの変化を確認

次に四半期、つまり直近3か月間で生じた印刷数の変化を求め、状況の確認を行う。季節による変化が配慮されないため、季節変動の影響を受けるが、短期間における部数変化を見極めるには一番の値となる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌、前期比)(2018年7~9月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌、前期比)(2018年7~9月期)

プラスを示したのは「声優グランプリ」「声優アニメディア」の2誌。マイナスは5誌で、誤差領域(プラスマイナス5%以内)を超えた下げ幅を計上しているのは4誌。

「声優グランプリ」は4.7%のプラス。誤差領域内だが最大の上げ幅を計上している。

↑ 印刷証明付き部数(声優グランプリ、部)
↑ 印刷証明付き部数(声優グランプリ、部)

プラスとなったのは恐らく2018年8月号の特集「『進撃の巨人 Season3』梶 裕貴×神谷浩史」によるものだろう。表紙もアイドル誌のようなスタイルで、これもまた注目を集めた一因と思われる。

もっとも部数の実情を見るに前期の大きな下げの反動を超えるものでは無く、後述する前年同期比ではマイナスを示していることから、リバウンド以上の評価は難しい。むしろ誤差範囲の部数動向と見た方がよいかもしれない。

当ジャンルでは最大部数を誇る「Vジャンプ」は誤差領域を超える下げ幅を示した。

↑ 印刷証明付き部数(Vジャンプ、部)
↑ 印刷証明付き部数(Vジャンプ、部)

同誌は特集や付録で多分の上下感を見せるものの、おおよそボックス圏(青色)内での部数を示していたが、2013年4~6月の突出した値を最後に新たなボックス圏(黄色)を形成する部数動向となった。しかし2017年1~3月期に底抜けをし、その後も回復は見せず、さらに新しいボックス圏(オレンジ色)を形成したと解釈できる動きをしている。少しずつ、確実に部数を縮小しているように見える。

ゲームそのもののプレイヤーが一定数存在することが前提となるが、ゲームと密接な関係にある付録を常につけることで雑誌の集客力を高めさせるのも、雑誌販売の一スタイルとして認識すべき方法論であり、「Vジャンプ」の必勝方程式だったはず。その方程式にゆがみが生じたのか、あるいは代入できる要素=ゲームが空振り状態なのか。

なお「Vジャンプ」は電子雑誌方式については、紙媒体誌を購入した人限定で閲覧できる仕組み「購入者特典」の形での提供。電子書籍版のセールスが伸びたので今件値(紙媒体として印刷された部数)が減っているとの解釈は難しい。

前年同期比ではどうだろうか

続いて前年同期比を算出し、状況確認を行う。年単位の動きのため前四半期推移と比べれば長期間の動きの精査となるが、季節変動を気にせず、より正確な雑誌のすう勢を確認できる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌、前年同期比)(2018年7~9月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌、前年同期比)(2018年7~9月期)

プラス誌は1誌「声優アニメディア」のみ。誤差領域を超えたマイナス計上誌は5誌「アニメージュ」「PASH!」「アニメディア」「メガミマガジン」「Vジャンプ」。「メガミマガジン」以外は2割以上の減少ぶり。ただし「PASH!」は前年同期で「ユーリ!!! on ICE」祭りの余韻による増加の反動の影響が大きい。

↑ 印刷証明付き部数(PASH!、部)
↑ 印刷証明付き部数(PASH!、部)

ただし直近値の1万9333部は「ユーリ!!! on ICE」祭り以前の最少値以下の値を計上した2015年7~9月の2万3934部よりさらに低い値にある。現状において、反動以上の下落が生じている感も否めない。次期以降の動向が気になるところ。

「声優アニメディア」は2割を超える上げ幅を計上した。

↑ 印刷証明付き部数(声優アニメディア、部)
↑ 印刷証明付き部数(声優アニメディア、部)

前期では通巻150号記念ということで多様な特集を展開し、また紙媒体への露出が少ない雨宮天氏が表紙・特集記事に登場して大きな評価を受け、部数を底上げした。今期でも雨宮天氏は複数号に登場し、また2018年9月号では「ラブライブ! サンシャイン!!」の特集を70ページにわたって実施している。これが部数アップに貢献したのだろう。

アニメ関連雑誌としてはライバル的な存在、関連業界では「三大アニメ誌」とも呼ばれている、具体的には「アニメージュ」「アニメディア」「ニュータイプ」の動向。「ニュータイプ」の部数が非公開となったため、今回も残りの「アニメージュ」「アニメディア」のみ、データの継続反映をさせた上で、状況の精査を続ける。

「アニメージュ」と「アニメディア」の2誌間で順位変動が起きた後、そのポジションが維持されたまま、3誌とも部数を下げていた。その後順位はしばしば入れ替わり、もみ合いの形を維持している。最近では2016年1~3月期で両誌とも「おそ松さん」特需で跳ねた際に立ち位置が逆転し、その状態が現在まで続いている。なおグラフ中の「Q1」とは第1四半期、つまり1~3月期を意味する。

↑ 印刷証明付き部数(三大アニメ誌、部)
↑ 印刷証明付き部数(三大アニメ誌、部)

直近値では「アニメージュ」2万9527部、「アニメディア」2万7733部。両誌とも部数を落としているが、前期と比べると両誌の差異は広まった計算となる。

非公開化直前の「ニュータイプ」は「アニメージュ」「アニメディア」とさほど変わらない部数だったことから、昨今のつばぜり合いにおいてどのようなポジションを示しているのか、大いに気になるところ。しかし非公開である以上、その願いはかなうことは無い。

日本国内の家庭用ゲーム機業界の市場は縮小を続けている。少なくとも利用者人口は堅調な動向にあるスマートフォンアプリ向けの紙媒体専門誌のアプローチも、情報の公知特性を考慮するとビジネス的には難しい。新しい付加価値の創生、アイディアの想起など、あらゆる手立てを講じて有効策を見出さない限り、今後も当ジャンルの低迷は続くことだろう。

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※印刷証明付き部数

該当四半期に発刊された雑誌の、1号あたりの平均印刷部数。「この部数だけ確かに刷りました」といった印刷証明付きのものであり、雑誌社側の公称部数や公表販売部数では無い。売れ残り、返本されたものも含む。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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