日銀の追加緩和は避けるべき理由
日銀の金融政策決定会合が9月18、19日に開催される。黒田総裁は日経新聞とのインタビューで、現在はマイナス0.1%の短期政策金利について「深掘りは従来から示している4つのオプションに必ず入っている」と述べており、追加緩和策の手段としては政策金利のひとつである短期金利の引き下げの可能性があることを示唆した。
日銀はこれまで、追加緩和の政策手段の具体策として、短期政策金利の引き下げ、長期金利操作目標の引き下げ、資産買い入れの拡大、マネタリーベース(資金供給量)の拡大ペースの加速の4つを示している。
現在の日銀の金融政策は「長短金利操作付き量的・質的緩和」となっており、政策金利となっている長期金利と短期金利、そして量と質の面から操作は一応、可能となっている。
しかし、現在の日銀による金融調節の目標は量ではなく金利となっている。国債の買入については、保有残高の年間増加額80兆円という数字はほとんど有名無実化している。もし資産買い入れの拡大やマネタリーベース(資金供給量)を拡大するには、政策目標を量に戻すことも必要とみられ、これはあまり現実的ではない。
質(?)という面からはETFの買入増額などもないわけではないが、日銀による株式市場の依存度をさらに高めることにもなりかねず、株価も比較的安定しているなか、これも考えづらい。
金利という面からは、長期金利コントロールもあるが、こちらは黒田総裁が口頭でプラスマイナス0.2%という数字を出しているが、正式にはゼロ%となっている。長期金利のレンジ拡大というのは政策変更ということになるのかは微妙なところとなる。
そして最後に残るのが短期金利となる。これは現状、日銀当座預金のうち政策金利残高につく金利である。現状はマイナス0.1%であり、これをマイナス0.2%に引き下げるということは可能ではあり、黒田総裁の出した四択のなかでは、これが一番現実的とみられる。
そうはいっても、マイナス金利の深掘りにより、プラス圏にある国債利回りの一層の低下を招くことも予想され、これは金融機関の収益力をさらに悪化させかねない。マイナス金利の深掘りによる効果のほどがはっきりしていないなか、副作用が顕在化することも予想されることで、それを行う意味があるのかどうか疑問である。
結局のところ、日銀はあらゆる政策手段を使い切ってしまい、特に量の面からはその修復作業を行っている最中ともいえる。ここは大胆な金融緩和を「継続」することに意味があることを前面に押し出して、現状維持とするのが望ましいのではなかろうか。
黒田総裁が気にしているともされる為替についても、中東の地政学的リスクが強まるなかでドル円は108円台としっかりしていることで、FRBやECBに連動して追加緩和を行う必然性には乏しい。来月からの消費増税もあり、ここで無理にカードを切る必要もない。