ゲームに欠かせない雑誌達の実情は…ゲーム・エンタメ系雑誌部数動向をさぐる(2020年1~3月)
「Vジャンプ」は誤差領域を超えた下げ幅のマイナス5.9%。今ジャンルで最大部数を誇る雑誌であるだけに、大きな下げ幅はそれだけ部数も大きく減ったことを意味し、衝撃も大きい。同誌は特集や付録で大きく上下感を見せるものの、長期的には部数減少の傾向にある。話題性のある付録で一時的な部数の引き上げを果たしても、それが継続するには至らない状態が続いている。ここ1年ほどはヒットも無く、部数を落とす一方。今期では「遊☆戯☆王OCG」や「スーパードラゴンボールヒーローズ」の限定カードが付録だったが、それでも部数の維持、さらにはけん引にはつながらなかったようだ。
ゲームそのもののプレイヤーが一定数存在することが前提となるが、ゲームと密接な関係にある付録を常につけることで雑誌の集客力を高めさせるのも、雑誌販売の一スタイルとして認識すべき方法論であり、「Vジャンプ」の必勝方程式として定着している。しかし部数動向を見るに、その方程式が必勝とは言い難い状況なのは否定できない。
前年同期比ではどうだろうか
続いて前年同期比を算出し、状況確認を行う。年単位の動きのため前四半期推移と比べれば長期間の動きの精査となるが、季節変動を気にせず、より正確な雑誌のすう勢を確認できる。
プラス誌は「PASH!」のみ。誤差領域を超えたマイナスを示したのは「アニメージュ」「声優グランプリ」「Vジャンプ」の3誌。
「PASH!」はゲーム・エンタメ系雑誌においては前年同期比で唯一プラスを示している。
「PASH!」は特集記事や付録による部数への影響が大きく、部数変動が他誌と比べると大きくなる傾向がある。一方でここ1、2年は部数の安定化、さらには少しずつだが底上げしているようすが見られる。よい動きには違いない。
他方、マイナスを示した3誌はいずれも誤差領域を超え、さらに「アニメージュ」「声優グランプリ」は1割を超えた下げ幅となっている。状況的によいものとは言い難い。
日本国内の家庭用ゲーム機業界の市場は縮小を続けている。少なくとも利用者人口は堅調な動向にあるスマートフォンアプリ向けの紙媒体専門誌のアプローチも、情報の公知特性を考慮するとビジネス的には難しい。新しい付加価値の創生、アイディアの想起など、あらゆる手立てを講じて有効策を見出さない限り、今後も当ジャンルの低迷は続くことだろう。
前期では3誌がまとめて部数非公開化に踏み切り、その状態が今期も続いているため、「三大アニメ誌」の動向の確認などが不可能となり、記事構成の大幅縮小の状態が継続している。部数の非公開化は発売元の出版社、あるいは編集部による判断である以上仕方がないが、褒められる話ではないのは言うまでもない。部数の非公開化という判断もまた、雑誌動向にかかわる情報となるからだ。
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※印刷証明付き部数
該当四半期に発刊された雑誌の、1号あたりの平均印刷部数。「この部数だけ確かに刷りました」といった印刷証明付きのものであり、雑誌社側の公称部数や公表販売部数ではない。売れ残り、返本されたものも含む。
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