どうして米国のデフォルトへの懸念が出ているのか
米国債の発行根拠法は、合衆国憲法(第1条第8項)に基づいて連邦議会が定めた第二自由公債法です。同法において、国債残高に制限額を課して、その範囲内であれば自由に国債を発行し資金調達できる。
米国での国債は、日本のように単年度の予算における歳入・歳出の差額を埋めるという単年度主義の観点からではなく、その時々における国庫の資金繰り上の必要性から発行される。
ここにきて米国のデフォルト(債務不履行)への懸念が出ており、それが金融市場に大きな影響を与えている。何故、そのような問題が出ているのか。それは上記のあった「国債残高に制限額を課して」という部分が影響している。
国債の発行額は、国王や大統領など国のトップが勝手に決めて発行するものではない。議会という永久機関が税収を担保にして発行することを承認するシステムとなっている。
議会が定めた法律に基づいて発行される形式は日本も米国も同様だが、日本は年度の予算という形式をとっているのに対して、米国は連邦議会が定めた第二自由公債法において、国債残高に制限額を課して、その範囲内であれば自由に国債を発行し資金調達できる形式となっている。
これはつまり、連邦債務残高が上限を超過した場合には、限度額を引き上げない限り、新規の米国債発行ができなくなるルールとなっている。
ただし、特例措置として2019年7月の財政合意で債務法定上限(当時約22兆ドルに設定)の適用2年間だけ除外されていた。債務上限を定める法律の2年間の適用停止が2021年7月末に期限を迎え、8月1日から法定上限が復活した。
米財務省は既に7月30日から緊急措置を発動し、州・地方政府向け特別国債の発行を停止したり、手元資金をやり繰りしているなど対応を行っていた。
27日には議会上院で与党・民主党が主導して上限を一時的に外すための法案審議が行われたが、野党・共和党の反対で可決されず、資金繰りの見通しは立っていない。
イエレン財務長官は28日に連邦政府の債務上限問題への対応が遅れると10月18日以降に資金が尽きると指摘した。つまり議会が対応しなければ、10月18日以降に政府資金が底をつき、国債の償還や利払いが滞る債務不履行に陥るおそれもあるデフォルト(債務不履行)に陥る懸念が強まったのである。
28日の米国市場では、このデフォルトへの懸念もあって株式市場は下落し、米債も下落した要因とされた。
ただし、本当に国債の償還や利払い資金が賄えないのではなく、あくまで手続き上の問題でもある。過去にも同様の事態が起きたが米債の動揺は限られていた。今回も米債安はこれよりも、年内のテーパリングと来年にも利上げかとの観測や、原油高も加わってのインフレ圧力の強まりなどを意識したものであったとは思う。