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マズイ試合だった――日本0対2ブルガリア

川端康生フリーライター

右往左往した3-4-3

前半の「3-4-3」は、知らない街で道に迷った旅行客のようだった。

一応のルート検索はしてあったが、現実に歩き始めてみたら、行き止まりや混雑で目的地に辿り着けない。それで、だったらこっちへ行ってみよう、あっちの方が近道かも、と色々試してみたのだが、結局どれも有効なルートではなく……疲れ切った割には楽しい旅にならなかった、そんな感じだった。

もちろん、昨日のは下見だった、と考えればどうということはないのだが、少なくとも週明けの“本番”へ向けての下見としては、意味があったとはとても思えず……。

まあ、すんなりいかない旅の方が面白い、それくらいの大らかさで受け入れるしかないのだろう。ずっと先になって「あれはあれでいい教訓になったね」とでも思い出話をできるなら、それでいい。

もっとも指揮官に、そこまでの余裕はなかったようだ。オーストラリア戦を目前に控えて、やっぱりこのままではマズイ。

だから後半は「4-2-3-1」に戻した……が、スムーズに動いたのは後半の立ち上がりだけ。その後はやっぱり(攻めは中央に、中央にと突っ込んでいき)渋滞に突き当たった。

その意味では、試合後にザッケローニ監督が話していた通り、「システムの問題ではなく、選手のフィジカルコンディションと判断の問題」だったのだと思う。

「3-4-3」が未整備だったことは言うまでもないが、だとしても選手たちの出来がよければ、もう少し何とかなった。

前田にしても、遠藤にしても、吉田にしても、重いというか鈍いというか、冴えないプレーぶりだった(それなりに冴えていたのは今野くらいか)。

「彼」が帰ってくる

とはいえ中4日ある。身体的にも精神的にも、選手たちのコンディションを上げることはできるだろう。

むしろ嫌な感じなのは、前半の「このままではマズイ」を払しょくすることができないまま、試合を終えてしまったことだ。「マズイ」という感触を残したまま、大一番を迎えるのは、やっぱりマズイ。

開始早々のFKからの失点(ブレたとしても川島は何とかしたかった)に始まり、後半のやはりFKからの失点(長谷部だけでなく、全体的に緩かった)、そしてゴールをしないまま終えた攻撃。

残像はよくない。

それでも僕自身はオーストラリア戦については楽観している。

なぜなら昨日はいなかった(昨日のマズイ感触を残しておらず、しかもチームに漂うマズイ空気をガラッと変えることができる)選手が合流するからだ。

本田の存在感はそれくらい大きいと思う。

すでに終わった試合を思い出しても、これから戦う試合を想像しても、そう思う。

フリーライター

1965年生まれ。早稲田大学中退後、『週刊宝石』にて経済を中心に社会、芸能、スポーツなどを取材。1990年以後はスポーツ誌を中心に一般誌、ビジネス誌などで執筆。著書に『冒険者たち』(学研)、『星屑たち』(双葉社)、『日韓ワールドカップの覚書』(講談社)、『東京マラソンの舞台裏』(枻出版)など。

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