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日本の社会で、女が偉くなれない5つの理由

齋藤薫美容ジャーナリスト・エッセイスト

韓国に女性の大統領が誕生して以来、日本は女性の管理職が目立って少ない国であることが、にわかに問題視されるようになってきた。

何しろ、男女平等度の日本のランキングは、135カ国中101位。政治家の中での女性の割合も約1割にとどまり、190カ国中143位。恥ずかしいくらいの結果である。自民党が党三役のうち二人を女性にすることで、それが一気に緩和されたイメージもあるが、社会全体から見ると、逆にそれ自体に違和感を感じるほど。

そもそも、インドにインドネシア、スリランカ、フィリピン、タイなどではすでに女性が国のトップになっているし、ミャンマー民主化のリーダーはノーベル賞までとっている。むしろ女性のリーダーはアジアにこそ目立つのに、なぜ日本だけ?

もちろん、ここでわざわざ理由をあげつらわなくても、みんな感覚的にわかっている。日本で女性が偉くなれないワケ。それが日本という国なのだと、日本人にはよーくわかっているのだ。でもあえて言っておきたいことが5つある。「女性の管理職が多い企業ほど伸びる」と言われる中、構造的に、または因習として女性が出世できない形になっているこの国には、何かしらの突破口が欲しいはずだから。

1:男が失敗すると「あいつはダメ」と言われ、女が失敗すると「女はダメ」と言われる

女は多くの会社でまだ、一緒くたにされている。どういうことかと言えば、マズイことをやらかすと、男は固有名詞で否定されるが、女の場合は女という性を固まりで否定されやすい。

だから過去に女性の管理職が一度でも失敗していると、それ以降、女はもうなかなか偉くなれないのだ。ほーら、やっぱり女ではダメだろ? と男たちは半ばホッとしながら、確信をあらたにする。

男が社員を評価する男性社会のうちは、女を丸ごと否定しがちなのだ。女もいろいろだってことに、まずは気付いてほしいもの。

2:男は男同士、女にボールをまわさない、アメフト社会

当然のことながら、男はやっぱり女より役職へのこだわりが強い。そういうDNAが組み込まれていると言ってもいい。だからまったく仕方のないことなのだが、それが男同士の暗黙の了解になってしまうために、持っているボールを男だけでまわして女には渡さない、みたいな習性が生まれてしまうのだ。

末期の民主党人事にそれは明らかで、もうあと少しで政権を奪われることを全員がよくわかっていたから、これはボクたちが大臣になる人生最後のチャンスとばかりに、慌てて大臣ボールを順番にまわし、女性議員に順番をまわすゆとりなどまったくなかった。しかしゼロではマズイから、女政治家のシンボルである田中真紀子さんを祭り上げて体裁を保った。

ああ、これが日本で女性が偉くなれない仕組みの典型と思ったもの。男は男だけで順番をこなしていくのに一杯一杯。女にボールをまわすゆとりも意志も最初からない、もともと男しかやらないアメフトを、いつの間にかやってしまっている企業は少なくないのじゃないか。

3:自分に自信のない男ほど、女の能力に嫉妬深い

女は確かに嫉妬深い。しかし、職場で男に嫉妬をすることはあまりないのだ。逆に仕事においては、男の方が女に嫉妬深いとは言えないか? 

女の能力や才能に、ある種の男はとりわけ嫉妬深い。そういう歴史が長かったせいなのだろうが、仕事における女の能力を生理的にあまり認めたくない男は未だにいるのだ。

もちろん有能な女をちゃんと有能と認める男もたくさんいて、そういう男たちはちゃんと自信がある男だって、女たちはもうみんな知っている。自分に自信がないのに人の上に立っている男ほど、女に嫉妬深いことも……。

だからこそ運の悪い女は、優秀だから偉くなれなかったりするのである。

4:「デキる女は性格が悪い」との思い込みが未だ生きている

昔、「美人は意地悪」とか「胸の大きい女は知的じゃない」みたいな、女に対する極端な思い込みがいくつも存在したが、今なお残っているのが「デキる女は性格が悪い」という思い込み。

もちろん、その通りの場合もあるが、まったくそうでない場合も多いのに。というより、性格に問題ある人は、単に「偏差値の高い女」にはある数いても、「仕事ができる女」にはもともと少ない気がする。人格まとももひっくるめて有能ってことだから。

少なくとも、デキるからヒステリック……は、まったくのウソである。

5:もちろん、女の方にも原因あり。たとえば、女は確かに“面倒くさい”生き物だ

たとえ女性を抜擢したくても、なかなか踏み切れないでいる企業がたくさんあるのも、それはそれでわかる気がする。

そう、男から見れば、確かに女って面倒くさい。ただそれも無理からぬこと。結婚願望や幸せ願望や母性や女同士の諸々や、生理や、更年期障害や……女たちの多くが、男にはわからないいろんな事情を抱えている上に、男性社会の慣習の中で女が人の上に立つと、まずその慣習と戦わなければならず、どうしたって権利を声高に主張する形になってしまう。

女は男よりずっと複雑な人生を余儀なくされているから、いろんなことが面倒くさくなりがちなのだ。もうそこは、女を代表して「ごめんなさい」。

でもどうか、面倒がらないで、女たちにも活躍の場を与えてあげてほしい。女は基本的に仕事においてはまじめ。本当によく働く。そして、女は確かにおしゃべりで内緒話も得意だが、自分を抜擢してくれた会社や上司の悪口は決して言わないと思うから。たぶん……。

ひとつ結論めいたことを言うならば、女の能力を認められる男ほど能力ある男……少なくとも女はそう思っている。逆を言えば、自信がない男ほど、女を認めない……それが女が偉くなれない決定的な理由だとすれば、だからそういう企業は伸びないのだと考えると一気にわかりやすくなる。

最後に強調しておきたいのは、男と女を分けること自体もう違うのだ。生理的にも男性ホルモンの多い女性が増え、女性的な男性が増えているのは確かなのだから。そう今まさに、男と女を分けない男が賢く見えるのはそのせいだろう。もう、男と女を分けなければいい。それですべてがうまく行く。

美容ジャーナリスト・エッセイスト

女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイストへ。女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『されど“男”は愛おしい』』(講談社)他、『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など著書多数。

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