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“佐々木抜き”でも見応えのある好ゲーム。大船渡、延長11回制し準決勝へ――高校野球・岩手大会

川端康生フリーライター

 岩手県営球場で行われた準々決勝・第2試合は、久慈高校と大船渡高校が対戦。前日延長12回を投げた注目の佐々木は登板しなかったが、両チームの先発ピッチャーが好投。試合は投手戦で始まった。

両先発が好投

 久慈の左腕・丹治、大船渡の横手投げ・大和田とも上々の滑り出しだった。3回まで許したヒットは丹治が1本。大和田は0本。ともに制球力を生かした丁寧なピッチングで打者を打ち取っていった。

 特に大和田は6回途中まで、一人のランナーも出さないパーフェクトピッチング。抜群のコントロールでボールを低目に集め、しかもゆったりとしたモーションから投げ込むボールにはキレもあった。初戦を見たときにも感じたが、フォームがまったくブレないのもいい。

 佐々木の陰に隠れてしまっているが、安定感のあるいいピッチャーだ。

 ちなみに3回を終えた時点では、プレイボールからまだ30分も経っていなかった。両投手がいいリズムで投げたことで、試合もハイテンポで進んだ。

久慈、痛恨の失点から反撃

 試合が動いたのは4回。先頭の大船渡・三上が出塁すると、そこから久慈の内野陣がまるで連鎖反応を起こしたように立て続けにエラー。やらずもがなの2点を相手に与えた。守備に自信を持っているチームだけに痛恨のイニングだった。

 さらに6回、連続ヒットを許した後、佐藤に三遊間を破られ、0対4。ここまで大和田投手にパーフェクトに抑えられていただけに、勝敗は決したかにみえた。

 しかし、ここから久慈の反撃が始まる。その裏、ついにこの試合初ヒットを放つと、解き放たれたように熊谷がセンターオーバーの2点タイムリー。続く7回にもヒットのランナーをバントで進め、内野ゴロの間に1点を加えた後、中村が低目の難しいボールをセンター前に打ち返し、同点に追いついた。

 春の県大会ベスト8の実力が垣間見える勝負強いバッティングだった。

大船渡、チーム力を証明

 その後は再び両チームのピッチャーが踏ん張りを見せる。

 9回、大船渡の勝ち越しのチャンス(2死満塁)では久慈の丹治が、10回、久慈のサヨナラのチャンスでは大船渡・リリーフの和田が気合のこもったピッチングでピンチを脱した。

 そして、そのたびに一塁側、三塁差のベンチから控え選手たちが飛び出し、ガッツポーズをしながらナインを迎えた。「負けたら終わり」。だからこそ、どちらのチームも集中し、緊張し、安堵し、弾けていた。高校野球らしい清々しいシーンの連続だった。

 勝負がついたのは延長11回。ゲッツー崩れで残ったランナーを、千葉が粘り強いバッティングでホームに迎え入れ、さらに鈴木が三遊間を破ってダメ押し。6対4で大船渡が接戦を制した。

 佐々木が、マウンドだけでなく、打席にも立たなかった大船渡だが、それでも固い守備としぶといバッティングを披露。チーム力を証明する勝利だった。

準決勝は24日、県営球場

 平日にもかかわらず、この日もバックネット裏は大勢のファンで早い時間から埋まった。もちろん目当てはスーパープレーヤー。先発メンバーが発表されたときには、やはり失望の空気は流れた。

 だが、試合が始まってからはそんなムードは一掃された。両校が演じた好ゲームにひき込まれたからだ。もちろん席を立つ人もほとんどいなかった。

 見応えのある延長戦だった。大船渡と久慈、魅力的な野球を見せてくれた。

 なお、この日行われた準々決勝では大船渡の他、花巻東、黒沢尻工、一関工が勝利。準決勝は休養日をはさんで24日。県営球場で行われる。

フリーライター

1965年生まれ。早稲田大学中退後、『週刊宝石』にて経済を中心に社会、芸能、スポーツなどを取材。1990年以後はスポーツ誌を中心に一般誌、ビジネス誌などで執筆。著書に『冒険者たち』(学研)、『星屑たち』(双葉社)、『日韓ワールドカップの覚書』(講談社)、『東京マラソンの舞台裏』(枻出版)など。

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