若者政策競争で自民党がここまで踏み込むと、「18歳選挙権選挙」でも自民圧勝の可能性が出る
「世代間格差是正」に動いた自民党
2月3日、自民党が社会保障の世代間格差を議論する新組織「2020年以降の経済財政構想小委員会」を立ち上げた。
人口割合が多く投票率も高い高齢者の声を過度に反映する「シルバー・デモクラシー(高齢者民主主義)」を改善し、若者にも配慮した制度づくりをめざすという。
財政再建特命委員会(委員長・稲田朋美政調会長)の下部組織として「次世代への責任を果たす持続可能な社会保障改革をやっていく」ということで、これまでの自民党のスタンスからは考えられないような革新的な取り組みだ。
メンバーもまた凄い。若者を意識し、事務局長に小泉進次郎・農林部会長を充てたほか、他の人選にあたっては「改革志向のある若い人」「業界団体とかを背負っている人はだめだ」などと小泉氏自身の主導で、事務局次長にNTTドコモ出身で党のネットやITの担当として活躍する小林史明・学生部長など、衆院が当選3回以下、参院は当選1回の若手のみで構成されている。
一方、小委員長には橘慶一郎・総務部会長、さらに顧問に園田博之議員を置くなど、単なる若者向け広報キャンペーンに留めず、提案を実現に向けて進めていこうという意欲と可能性を感じさせる人選になっている。
「2020年以降の経済財政構想小委員会」は早速議論をスタートした。具体的には、資産を多く持つ高齢者に社会保障で負担を求め、浮いた財源を子育てなどの若年層向けの施策や教育制度の充実に充てることを検討した。参院選前の4月頃に中間報告、年内に提言をまとめるという。
格差是正のキモは「社会保障と税の一体改革」
これまで何度も書いてきたが、世代間格差是正の本丸は、社会保障の見直しだ。
2008年に、人口減少社会に突入した日本では、限られたパイをなるべく公平かつ持続可能な形で配分するための「知恵」が求められている。
そこで私は、高齢化によって高齢世代の政治的発言力が増加する中で持続可能な社会を作っていかなければならないと考え、小黒一正(法政大学教授)、城繁幸(株式会社Joe's Labo代表取締役)などと「ワカモノ・マニフェスト」を立ち上げ、世代間格差是正政策を提言してきた。
そして、当時から、その柱として掲げてきたのが、「財政・社会保障」、「労働・雇用」、「若者参画」、「家族・教育・子育」だった(※ワカモノ・マニフェスト2014参照)。
「労働雇用」政策の柱は、同一労働同一賃金の実現による人材の流動化だったが、いみじくも今国会の施政方針演説で安倍総理は、この「同一労働同一賃金」をあげている。
我々が発信してきた「世代間格差」という言葉は、すでに一般化されるまでに浸透してきた。そして消費税増税が進み、選挙権が18歳に引き下がった。
「ワカモノ・マニフェスト」を立ち上げた2008年時には、先進的過ぎると言われた我々が提示した政策も、少しずつ時代が追いついてきた感がある。
こうした「ワカモノ・マニフェスト」の中でも、世代間格差是正のための本丸が「社会保障と税の一体改革」だということは言うまでもない。自民党がこの本丸に本気で踏み込むのであれば、若者政策においても他党を圧倒する可能性すらある。
世代間格差は一人当たり1億円を超える
2008年当時、平成17年次経済財政報告に掲載されていた世代会計をもとに、60歳代以上と将来世代の格差が約1億円であることを指摘した。
2010年試算では、将来世代の政府からの受益と負担の差は、生涯で一人当たり8,309万円のマイナスになるとされ、60歳代以上との世代間格差は一人当たり1億円を超えた。
これだけ「世代間格差」という言葉が浸透してきた一方で、事態はさらに悪化していることを示しているわけだが、こうした事実は、当事者である若者たちには、ほとんど知られていない。
平たく言えば、自民党がどこまでこの世代間格差に踏み込めるかだ。
「若者政策競争」のなかでホンモノを見極めろ
こうした側面から考えれば、今回の「2020年以降の経済財政構想小委員会」の設置は、これまでの既得権に踏み込んだ画期的な取り組みになるのではないか。若者も期待できる対策だと言える。
ただ、そうは言っても、自民党が世代間格差の是正に本気で踏み込むのか、ということについては、しっかりと見極めていく必要がある。
「2020年以降の経済財政構想小委員会」は、いろいろな意味で非常に上手くできている。4月頃に中間報告を出すことで、その後の参院選に向けて一定の期待を集める方向性が示されるだろう。その一方で、最終的な提言については、年内いっぱいにまとめることになっているため、喉元を過ぎれば、選挙後に方向転換や骨抜きという可能性がないわけでもない。そう疑いたくなるスケジュールでもあるのだ。
ワカモノ・マニフェストでは、国政選挙ごとに「ワカモノ・マニフェスト」を提示するとともに、各政党のマニフェストを若者度で評価もしている。
各政党マニフェスト若者度評価<2014総選挙版>
この夏は、18歳19歳が初めて参加する選挙になる。こうしたものも参考にしながら、どういった政策が本当に若者のためになるのか、どこがポイントなのかを考え、いったいどの政党が「ホンモノの若者のミカタ」なのかをしっかりと見定めてもらいたいと思う。
各党には、踏み込んだ若者政策提示を期待したい
先日も『自民党が安倍総理への提言にまで載せている二の矢『被選挙権年齢』引き下げの実現性』と題し、被選挙権年齢の引き下げについて書いた。
若者参画だけをとっても、「ワカモノ・マニフェスト」では、「若者の意見反映を義務付ける若者参画基本法の制定と若者政策担当大臣の設置」、「世代別選挙区制度とドメイン投票の導入、選挙権を16歳・被選挙権を成人年齢へ年齢引き下げ」、「SNS等ICTを活用したオープンガバメントや直接参画の仕組みの構築」、「政治教育の義務化」、「官邸フェローや政治任用促進による政策人材の流動化」などを挙げている。
マニフェスト作成は、ここからが本番だ。さらに踏み込んだ政策提案を期待したい。
また、昨年立ち上げた「日本若者協議会」では、これまでに自民党、公明党、維新の党と、若者の声をマニフェストに反映させるための政策提言の場として「日本版ユース・パーラメント」を実施した。今月は、2月18日に民主党と実施することとなった。
マニフェスト作成のプロセスにおいても、当事者である若者の声に耳を傾けながら策定する新たな形を期待したいと思う。