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川崎にワイナリーがある? 飛び地・岡上で川崎初の地産ワインが誕生!!【川崎市麻生区・蔵邸ワイナリー】

Ash俳優・吟遊詩人(川崎市)

川崎にワイナリーがある!

そして、それは飛び地、岡上にあるらしい!!

という情報を掴んだのは、先日配布が始まった「カワサキノコト」という川崎市の要覧に使うデザインに協力して手形を集めている時でした。

お付き合いのある某新聞支社の記者さんから、これからワイナリーの取材に行くんです、と言われたときにはフランスか、ナパか、とまでは思わなくても、長野か山梨あたりに行くのだと思いました。しかし直後、その人の口から出たのは信じがたい一言「川崎市内にワイナリーがあるんですよ」 

まじですか!!?どこにっ!? 畳み掛ける私に彼女は言いました「岡上です」。

飛び地・岡上

川崎は縦に細長いので、麻生区と川崎区はおなじ市とは思えないほど遠い。先日clubhouseでそんな川崎の南北を繋ぐ部屋をやっていたら、川崎区からの参加者は「柿生」を書けず、また麻生区からの参加者は「八丁畷」を読めず。(どっちも知らんわ!って人、素直に手を揚げて〜笑)

でも、そんな川崎の南北問題(?)をさらに輪をかけたように複雑にする地域があるのですよ。それが、飛び地・岡上

どこにあるの!?という方はこちらをどうぞ。川崎市は王冠を被ったピエロが逆さまになったような形、と私は思っているのですが、そのすねの部分に今にも刺さりそうな何か(笑)がありますね。それが、岡上です。

川崎と接していない麻生区の「岡上」
川崎と接していない麻生区の「岡上」

気になりすぎる!!!!

しかし、どうやって行くのだろう? と思いを募らせていたら、麻生区在住の友人が案内をしてくれるということになり…(女神!!)

初めての岡上・ワイナリー探訪と相成ったのです。

柿生からアプローチ

蔵邸ワイナリーの最寄り駅は、町田市の鶴川駅だということですが、川崎方面からのアプローチにこだわった!?のか、たまたまか、女神の采配で待ち合わせはこちらになりました。

初めて柿生で降りた
初めて柿生で降りた

「かきお」ですよ、「かきなま」じゃなんだかよくわかりませんからね。小田急線線の川崎の端っこ駅の一つです。

颯爽と現れた女神の車に乗って出発… しようとしたら、

目の前に見覚えのある看板が!!!

つい最近テレビで紹介されてたカヌレの美味しい「みつばち」さんじゃないですか!

きゃー!っと思わず寄ってしまいましたが…

みつばちさんは別記事できちんとご紹介しますので、今日は先にいきましょう。

蔵邸ワイナリーに到着

車を走らせること、7分。到着しました。

蔵!!!!!

蔵邸はその名の通り、代々伝わってきた蔵を生かした作りになっている
蔵邸はその名の通り、代々伝わってきた蔵を生かした作りになっている

蔵ですよー!!!!

近づいてみると、待っていて下さいました。

蔵邸ワイナリーを手がける山田貢さん
蔵邸ワイナリーを手がける山田貢さん

こちらが、当主の山田貢さんです。

当主… いや使い方はあってるんだけど、思わず消して「城主」とか書きたくなる重厚な雰囲気をまとっていらっしゃいますね。

では、蔵の中を見せていただきながら、お話を続けましょう。

農業法人カルナエストを経営

山田さんは農家の9代目。でも20代の頃は農家を継ぐことがとても嫌だった、と言います。

土とか泥とか大嫌いでした。なんで朝から晩までこんなことをしないといけないのかって。」

ヘアメイクアーティストを目指して美容学校を卒業しましたが、生まれ育った岡上の農地が次々に宅地になっていくのを見て、先祖伝来の農地を生かしながら、地域を盛り上げるビジネスを作る、という夢を持つようになりました。

「その頃は、農地を人に貸すこともできなかったんですよ。まずは『農業』の変革から取り組まなきゃいけなかった。守られていることはつまり不自由なので、農業をきちんとビジネスとして成り立たせる方法を模索しました。」

蔵の中にはバーが

蔵の中には、イベント時にオープンするバーがある
蔵の中には、イベント時にオープンするバーがある

都市農業の抱える課題は山積みでしたが、山田さんは消費者の顔が見える都市だからこそできる、新しい農業の形を求めて、農業法人「カルナエスト」を設立。農業の6次産業化を目指して動き出します。

「アグリデザイン」という言葉をキーワードに、農業と自身のビジネスが若い層にもリーチしていくためのブランディングにも力を入れました。

そのデザイン性だったり、アイディアだったりは、山田さん自身がかつて働いた美容の世界や、農業に戻ると決めてから修業をしたバーなどの飲食業界での経験から来るものも多いようです。

和光大学との産学連携も

蔵の一角には、和光大学のゼミと連携して進める「かわさきブランド」の商品も。

「地域デザイン」という考え方が山田さんのイメージに合致した
「地域デザイン」という考え方が山田さんのイメージに合致した

和光大学って面白くって、半分町田市、半分川崎市(岡上)なのだそう。その「川崎市にある」(笑)和光大学のゼミ生たちが命名から生産、瓶詰め、ラベルのデザインまで手がける「かわさきブランド」の取り組みは、山田さんが考える「若い層が面白い、やりたいと思う農業」の形にぴったり合致していました。

農業の6次産業化を目指して

最近よく聞く言葉ですが、6次産業とは一体なんでしょうか。

1次産業とは「農林水産業」ですね。2次産業は「工業」、3次産業は「商業」です。

この三つを掛け合わせたものを「6次産業」と呼びます。具体的な例をあげると…

まさに、上記のような「生産品のブランディング」「農家レストランの経営」に加えて「収穫体験」などのツーリズムもそう。

「生産品のブランディング」の一例、岡上のいちごをつかたクラフトビール は、既に川崎市でも人気
「生産品のブランディング」の一例、岡上のいちごをつかたクラフトビール は、既に川崎市でも人気

山田さんの農業法人カルナエストは農家レストラン「リリーズバイ・プロメティ」も経営しています。(これは次の記事でご紹介しますね)

そして「収穫体験」の部分で、山田さんが力を入れたのが「ワイナリー」だったのです。

(ようやくワインの話にたどり着いたぞ)

2020年にワイン特区を取得

農家がぶどうを作ってワイン醸造を行うためには、酒税法で決められた本数を生産しなければいけません。それを特別に本数制限を緩めて製造していいですよ、というのがワイン特区です。

蔵邸ワイナリーは2020年の3月に、ワイン特区を取得し、川崎で初めてワインの醸造ができるようになりました。取得したのは通称ハウスワイン特区と言われるもので、一般的な特区よりさらに少ない本数でも認められる代わりに販売ができず、自身の経営する飲食店などでのみ提供できるものですが、まずは「ワイン醸造体験」ができる場所としてのワイナリーを作るために、大きな一歩となりました。

蔵邸ワインのヴィンテージは2017年から
蔵邸ワインのヴィンテージは2017年から

特区になるまでは、山田さんが育てたぶどうを東京都練馬区にある「東京ワイナリー」さんに委託して醸造してもらっていたそうですが、これで晴れて、川崎産のぶどうを、川崎で醸造したワインができるというわけです。

蔵邸ワイナリーの前で
蔵邸ワイナリーの前で

先ほどの蔵の奥にある、こちらが、ワイナリー。

とってもおしゃれな建物です!

コルク詰めの様子を教えてくれる山田さん
コルク詰めの様子を教えてくれる山田さん

とても小さいですが、夢の詰まったワイナリー。私はなんでだか小さい頃からワインを作るためにぶどうをフミフミする「ぶどう踏み」に憧れているんですがここでできちゃうかもしれない!

ミニマルだからこそ、たっぷりと愛情を注いでワインを作る
ミニマルだからこそ、たっぷりと愛情を注いでワインを作る

そして…ついに真正・川崎ワインが完成!!!

取材をした4月の始めには、瓶詰めをする前でしたが、私がこの記事をまとめている間に、無事に瓶詰めも済んで、「初めての」「正真正銘、川崎産の」蔵邸ワインが完成した、とご連絡をいただきました!!

2020年ヴィンテージの「岡上ロゼ」は正真正銘の川崎産ワインとなる
2020年ヴィンテージの「岡上ロゼ」は正真正銘の川崎産ワインとなる

「コロナウィルスの状況次第ですが、初夏くらいには完成披露の試飲会も行おうかと思っている」とのことなので、もし運よく飲むことができたら、またレポートしたいと思います!!

ラベルが貼られる前の「岡上ロゼ」と蔵邸ワイナリー
ラベルが貼られる前の「岡上ロゼ」と蔵邸ワイナリー

今はまだ、お土産などに買っていくことはできない蔵邸ワインですが、山田さんの話を聞いていると、それができるようになる日もそう遠いことではないような気がしてきます。

「そんなの不可能でしょ、と言われれると、燃える」

これはすごくよくわかりますし、私もそうなんですが、口では言ってもなかなか形にするのは難しいことです。きっちりと結果を出していく姿、かっこいいなあと思いました。

お話を伺っている間次から次に斬新なアイディアや面白い話が飛び出してくる山田さん。発想力も行動力もずば抜けていて、これからの時代の農業について、もっともっと聞きたくなりました。岡上ロゼを片手に、ゆっくりとお話を聴ける日がくることを願うばかりです。ありがとうございます!

こちらの取材の後、山田さんが経営する新百合ヶ丘駅前の「リリーズバイ・プロメティ」にお邪魔して、前年ヴィンテージのワインをいただいので、それをまた明日の記事で書きますね!

蔵邸ワイナリー Domaine Yamada
住所:神奈川県川崎市麻生区岡上225
TEL: 044-986-1022(カルナエスト)
営業時間:イベントごとに異なる
公式HP:http://carnaest.jp
アクセス:小田急線鶴川駅より徒歩12分

俳優・吟遊詩人(川崎市)

琵琶を弾き歌う俳優です。世界80都市を旅した結果、日本文化を愛しています。旅と出会いと美味しいお酒がインスピレーションの源。MCアマビエちゃんはアマエビちゃんにメタモルフォーゼ。フラットで差別のない目線で記事をお届けしたいと思っています。Stay tuned!

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