「山全体の色が変わった」北朝鮮で墓が急増、コロナ死者を埋葬か
北朝鮮国営の朝鮮中央通信は、国家非常防疫司令部が集計した有熱者(発熱患者)の数を毎日報じているが、死者の累計は6月16日に73人だと触れて以降、一切明らかにしていない。
その背景には、コロナ感染者に関する統計について3回の方針変更があったことが考えられる。また、24日発表分からは1万人を切っているが、処罰を恐れた地方幹部が、意図的に数を過少報告しているとの疑惑が浮上している。
そんな中、国営メディアの報じる情報とはかけ離れた国内の状況が伝わりつつある。墓が急増しているというのだ。詳細を、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋は、清津(チョンジン)市郊外にある青岩(チョンアム)区域の静山洞(チョンサンドン)の山の中腹にある共同墓地に新たな墓が大きく増え、見る者が心を痛めていると伝えた。
朝鮮の墓は土饅頭であるため、草が生えていなければ、新しいものであることがすぐにわかる。また、急いで葬ったのだろうか、墓石も立てられていないという。地元住民は、おそらくほとんどがコロナ感染症による死者の墓だろうと見ている。
1990年代の大飢饉「苦難の行軍」のころ、大量の餓死者が出たが、安全部(警察署)は遺体を棺桶に入れることもなく、無造作にこの共同墓地に葬ったとのことだ。そして今年の春からは当時と同じように、棺桶に入れないまま葬られる遺体が増えていると情報筋は伝えた。
(参考記事:「街は生気を失い、人々はゾンビのように徘徊した」…北朝鮮「大量餓死」の記憶)
元々、山の中腹から稜線にかけて3000基ほどの墓があったが、それだけでは足りなくなり、隣の山にも200基ほどの墓が立てられ、遠くから見ると、この数ヶ月で、山全体が土色に変わったことがわかるとのことだ。
土葬が一般的な北朝鮮だが、現在、高熱を出して死亡した人は、家族の同意を得ないまま、無条件で火葬している。
状況は他の地域でも同じようだ。
平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋によると、道内南西部の檜倉(フェチャン)郡のホンゴゲ周辺に3カ所の共同墓地がある。かつて家族が亡くなれば、3日間喪に服した上で、遺体を棺桶に納め、共同墓地に丁重に埋葬し、土饅頭の上には芝生を植えたという。
それが、最近では土がむき出しになったままで、墓石もない墓が急増しているとのことだ。新たな墓が出来るのは、コロナ前までは年間に多くとも100基程度だったが、今年に入ってからはすでに150基が立てられ、地域住民はコロナ感染の深刻さを肌で感じているとのことだ。
首都・平壌からさほど離れておらず、近隣にはスパリゾートの陽徳(ヤンドク)温泉文化休養地がある檜倉だが、非常に貧しい地域で、苦難の行軍のときには大量の餓死者が発生した。それでも、今のように多くの墓が立てられることはなかったと情報筋は証言している。