新・人類最激戦区を制した男の危険すぎる一撃
過酷なトーナメントを制し思わず自画自賛
「客観的に見てすごいと思います」
大会終了後、自身の戦いについて感想を聞かれた山崎秀晃(K-1ジム・チームドラゴン/29)は、笑顔で答えた。素直な自画自賛。だが、その夜を目撃した中で異論を挟む者はいないはずだ。
3月4日、東京・代々木競技場第二体育館での『K-1 WORLD GP』で繰り広げられた-65Kg級日本代表決定トーナメント。ただでさえ過酷なワンデートーナメントで、山崎は強豪中の強豪3人を蹴落とし“新・人類最激戦区”の頂点に立った。
ストレートの破壊力から“GOLDEN FIST(黄金の拳)”の異名を取る山崎だが、意外にも下馬評は低かった。8名が2つのブロックに分かれて争うノックアウト・トーナメントだったが、組み合わせが決まった時は本人も思わず「マジか!?」と目を疑った。それほど厳しいブロックだった。
KO負けゼロの相手をマットに……
なかでも苦戦が予想されたのは一回戦。対戦相手の左右田(そうだ)泰臣(27)は無尽蔵のスタミナと打たれ強さで相手を根負けさせることたびたび、難攻不落で知られる。実際、試合前半は強烈な左右田のプレッシャーに拳を伸ばしきる機会の少なかった山崎だが、リズミカルな動きで不用意な被弾を回避した。
そして迎えた2ラウンド早々、距離を詰める相手を左アッパーで迎撃すると、左から渾身の右ストレートを叩き込んだ。プロデビュー以来24戦にわたりKOを拒んできた左右田が、レフェリーに制され膝を落とす。山崎が正念場を乗り越えた瞬間だった。
勢いを得た山崎は準決勝の久保優太(28)戦で、さらに超満員4800名の観客を沸かせた。3階級で数々のベルトを巻いた若きベテランに、初回、カウンターの右フックでダウンを奪われるも、最終3ラウンドには伝統派空手仕込みの横蹴りで2度ダウンを奪い返してみせた。
決勝の相手はあの“怪物”
逆転KO勝利で“アップセット”の予感が漂う場内。その空気を味方につけた男は、優勝候補筆頭、野杁(のいり)正明(22)と決勝のリングで対峙した。準決勝のHIROYA(24)戦を競り勝った野杁は、体力と共に勝利への欲もHIROYAに吸い取られてしまったのか、いつもの、あの“怪物”のオーラが薄らいで見える。逆に、山崎は最後まで果敢に拳をふるい集中力を切らさぬまま3ラウンドを終えた。
判定は2-0(29-29.20-28,29-28)。僅差勝負を制した山崎が、全7試合中4試合KO決着という激戦の山の頂きにただ一人、上りつめた。
テレビでかつてのK-1MAXを観て「魔裟斗やったら俺のほうが強いんちゃうかな」と、片手に自信、片手に覚悟を抱えて地元・京都から8年前に上京した。一昨年のK-1初参戦では、最強ムエタイ戦士ゲーオ・フェアテックス(31)に苦杯をなめ、昨年には延長の末、野杁に敗れるなど、チャンスを活かせず歯噛みする時期もあったが、周囲のサポートで自分を諦めることなくK-1の舞台にたどりつき、主役となった。
「課題はまだまだ多い。6月の世界トーナメントに向けて精進します」
7人の敗北を背負って6月24日、世界の強豪に挑む。男の覚悟は、もはや両手でも抱えきれぬほど大きく、重くなっている。
◆優勝者の山崎秀晃、-55Kg王者・武尊(たける)も出席
<3.4大会一夜明け記者会見>
【日時】
2016年3月5日(土)記者会見/11:00~(予定)
※10:30より入場整理券配布/10:50より一般開場
【会場】
会場: ホテルメトロポリタンエドモント 2F・波光
〈ニコニコ生放送にて会見の模様を生中継〉
3月5日(土)開場10:57/開演11:00
「K-1 WORLD GP 2016 IN JAPAN 〜-65kg日本代表決定トーナメント〜」3.4代々木大会 一夜明け記者会見