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【マルゲリータを説明できますか?】今さら聞けないイタリア料理 ① 現役シェフの料理解説

BELCORNOシェフ/ラテアーティスト

突然ですが、「マルゲリータ」を説明できますか?

「カクテル?」それはマルガリータ。
「ピザ!」正解!
「イタリアではピッツァって言うんだよね?」ディ・モールト ベネ!(非常に良しッ!)
「具はバジルと、あの白いチーズは、えっと…」モッツァレラですね!

大抵のことはネットで調べれば出てくる便利な時代。しかし「勝負時」はいつだって唐突に訪れます。最低限の知識を備えておけば、デートや部下との食事の席でスマホ検索をせずに済みますし、ちょっとした豆知識を披露して「すごい!」と思ってもらえるかも?

この「現役シェフのイタリア料理解説」では、そんな「今更聞けないイタリア料理」を簡単に解説します。第一回のテーマは「マルゲリータ」。

1.初級編「マルゲリータとは?」

マルゲリータは、世界で最も有名なピザです。

「ピザ」はアメリカ式の発音で、イタリア語では「ピッツァ(Pizza)」。イタリアは、大きく「ミラノやベネチアのある北部」「ローマやフィレンツェのある中部」「ナポリやシチリア島のある南部」に分けられますが、ピッツァは17世紀の南部ナポリで生まれた料理です。この元祖ナポリの伝統的な作り方で焼くスタイルがナポリピッツァで、その代表がマルゲリータというわけです。

マルゲリータの作り方は、延ばした生地にトマトソースとモッツァレラチーズ、粉チーズにバジルをトッピングし、オリーブオイルを回しかけて焼き上げます。赤・白・緑の、目にも鮮やかな三色のイタリアンカラー!とろ~りとろけたモッツァレラに、爽やかなバジルの香り、トマトの酸味と生地の甘みが最高にマッチした、まさにピッツァの中のピッツァと呼ぶにふさわしい一品です。

2.中級編「マルゲリータの名前の由来」

19世紀末、当時のイタリア国王と王妃がバカンスでナポリにお出かけになりました。この王妃の名前こそが「マルゲリータ」。ピッツァ・マルゲリータの由来になった人物です。

ナポリでは、当時随一と言われたピッツァ職人のエスポズィトさんがおもてなし。3種類のピッツァを焼いたそうですが、そのうちバジルとモッツァレラとトマトを使ったピッツァを、王妃は特にお気に入りに。この時、エスポズィトさんが王妃の名にあやかって「ピッツァ・マルゲリータ」と名付けたと伝えられます。

ちなみに「マルゲリータ」はイタリア語でヒナギクの花のこと。イタリア国花でもあります。「超」が何個付いてもおかしくないスーパーセレブお嬢様なお生まれのマルゲリータ妃ですが、お食事は庶民的なものを好まれたそう。マルゲリータの誕生日である11月20日は、日本では「ピザの日」となっています。

3.上級編「重要な材料、チーズのお話」

マルゲリータに使うチーズは2つ。「モッツァレラチーズ」と「粉チーズ」です。

このうち、「粉チーズ」は9カ月以上熟成の「グラナパダーノ」や、18カ月以上熟成させた高級品「パルミジャーノ・レッジャーノ」、羊乳から作る「ペコリーノ」などをすりおろしたものが使われます。

「モッツァレラ」は、熟成をかけない柔らかいチーズ。出来立て新鮮な状態が一番美味しいです。水牛のミルクを原料にした「ブッファラ」と、乳牛のミルクを原料にした「ヴァッカ」(フィオール・ディ・ラッテとも呼ばれます)の2種類があります。

ブッファラが元祖ですし味も濃いのですが、いかんせん値段が高いのが難点。お客様への販売価格も上がってしまうため、少しでもお値打ちにピッツァをご提供するため、ヴァッカをメインに使っているお店の方が多いかと思います。

「ピッツェリア」と呼ばれる専門店に行くと、「マルゲリータ D.O.C.」というメニューが載っていることがあります。「D.O.C.」はナポリピッツァとしての原産地統制呼称のことで、同時に「このマルゲリータのモッツァレラには伝統的なブッファラを使っています」ということを意味します。もちろん、「ヴァッカだからダメだ」とか「ブッファラだから美味しい」というわけではありませんが、ブッファラで作られたマルゲリータは、見かけたら一度は食べて頂きたい一皿です。

伊藤雄一 |シェフ / バリスタ / コーヒー焙煎士
愛知県のイタリア料理店「ベルコルノ」でオーナーシェフとして料理を作る一方で、ラテアーティストとしても活動。コーヒーの自家焙煎も行うコーヒーマイスターでもある。
TwitterYoutubeInstagramなどで情報を発信。

シェフ/ラテアーティスト

愛知県でイタリア料理店「BELCORNO(ベルコルノ)」を経営するシェフ・伊藤が、漫画・アニメ・映画の料理やスイーツを、「漫画飯」として再現。料理漫画はもちろん、ジブリから実写映画まで、幅広いジャンルの作品に挑戦。プロ目線の考察・技術で、「作品に忠実な」アプローチを心掛けます。動画に出てくるラテアートにもご注目下さい!■伊藤雄一:関西のイタリア料理店・ホテルで修行の後、独立。バリスタ・ラテアーティストとしても活動。フルカラー・ラテアートを生み出し、様々なイベントへの出張ラテアートやコンサルティングも行う。著書に「フォトジェニックなラテアート」(旭屋出版)。調理師、日本バリスタ協会認定バリスタ。