元「タマネギ法相」が文大統領に警鐘!尹前検察総長が大統領になれば、収監された李・朴大統領と同じ運命?
韓国は政権が交代する度に前大統領が現職の大統領に裁かれると言う悪習が繰り返されているが、仮に検察総長を辞任した尹錫悦(ユン・ソッキョル)氏が大統領選挙に出馬し、当選するようなことになれば、文在寅大統領も標的にされ、尹前検察総長によって逮捕、拘束された李明博元・朴槿恵前大統領と同じ運命を辿る恐れがあると、こともあろうに文大統領の側近だった曹国(チョ・グック)元法務部長官が自身のフェイスブックで綴っていた。
(参考資料:「たまねぎ疑惑の法相」VS「背信の検察総長」の最後の死闘)
曹国氏といえば、文在寅大統領から検察改革の任を受け法務大臣に抜擢されたものの尹検察総長によって娘の不正入学を暴かれ、妻と共に起訴され、一昨年10月に大臣の地位を追われた文大統領の最側近である。前任の大統領の二の舞になるかもしれない理由について曹国氏曰く、「尹氏が文大統領を『潜在的被疑者』とみなしている」からであるとしている。
尹氏が次期大統領有力候補として注目される存在になったのは「生きた権力」と称される政権に対して手加減せず、疑惑を追及する姿勢が共感を呼んでいることにあることは誰もが認めるところだが、曹国氏は尹氏について「二人の大統領を監獄に送り込んだその時点から文大統領についても『潜在的被疑者』として認識し始めた」として「尹前検察総長は文政権を『間もなく死ぬ政権』とみて、自らが指揮する高強度標的捜査を通じて文政権を圧迫し始めたとみるのが合理的である」と書いている。
文大統領には「柳在珠前釜山副市長調査隠蔽疑惑」や「蔚山市長選挙介入疑惑」など様々な疑惑が取り沙汰されている。尹氏は文政権下で検察総長に抜擢されたからといって、大統領や政権に忖度するような人物ではない。「不正腐敗と権力型不正にはいかなる場合も背を向けず堂々と対抗し、国民から委任された法執行権限を厳正に行使しなければいけない」というのを口癖にしているからだ。
実際に尹前検察総長は進歩政権であれ、保守政権であれ、容赦することなく不正を徹底的に追及し、暴いてきたことで知られる。そのことはこれまでの「実績」が物語っている。幾つか例を挙げれば;
進歩派の盧武鉉政権下の2003年には盧武鉉政権の不正大統領選挙資金を調査し、盧大統領の最側近の安熙正前忠清南道知事と政権与党「民主党」の李サンス事務総長を逮捕している。また、盧武鉉政権最後の年の2007年にも盧大統領が最も可愛がっていたピョン・ヤンギュン前大統領政策室長を拘束し、起訴していた。
保守派の朴槿恵政権下でも2013年に国家情報院(国情院)への国政監査で国情院のターゲット捜査への外圧疑惑を暴露している。この件では国情院への捜査に反対していた検察首脳部と対立し、一時冷や飯を食わされたこともあった。
文在寅政権下の2017年5月にソウル中央地方検察庁検事長に起用されると、同年11月には収賄容疑を受けていた全ビョンホン前青瓦台政務首席秘書官への調査を大統領府や法務部に知らせず行い、マスコミ報道で知るはめとなった青瓦台を唖然とさせた。
さらに2019年8-10月にかけての曹国法相(当時)の疑惑捜査も大統領府、法相、与党にも事前通告せず強行し、保守層から拍手喝采を浴びた。その一方で、保守派の李博明元大統領と朴槿恵前大統領の不正を追及し、有罪に持ち込み、芋づる式に収監させたのも尹前検察総長である。
曹国元法相は尹前検察総長が野党陣営の大統領候補にのし上がることができたのも「尹氏は自身が文政府の単なる高位公務員だとは考えてなかったこと、朴槿恵政権当時迫害を受けた象徴であったこと、また2019年下半期から文政権に打撃を与える捜査を行ったことによるもの」と分析していた。
最後に「尹前検察総長のこうしたやり方はブラジルのセルジオ・モロ前法相と似ている」と締め括っている。
モロ前法相も判事の頃から腐敗捜査を通じて二人の大統領を収監させ、ボルソナロ政権になると法相に起用されたものの昨年4月に突然辞任し、大統領候補にもなった人物である。但し、モロ前法相は大統領にはなれなかった。