IMFによる日銀の金融政策への提言
国際通貨基金(IMF)は25日、日本経済について分析した2019年の報告書を公表した。この「2019年対日4条協議終了にあたっての声明」のなかで、日本銀行の金融政策に関わる提言があり、少なからず日銀の政策に影響を与えうる可能性もあるため、確認してみたい。
物価安定目標をレビューするとして、物価安定の目標に合致したインフレ水準の再評価を実施しうる。さらに、日銀は物価安定目標達成が中長期的なものであることを強調しつつ、インフレ目標を幅で提示することで政策の柔軟性を高めることを検討しうるとある。
これは日銀の物価目標に対して柔軟性をもたせるべきとするものである。金融政策の柔軟性を取り戻すためには、物価目標の柔軟性は欠かせない。今回IMFからこの提言があったことにより、物価目標を修正させやすくなる可能性も出てきたのではなかろうか。
報告書では、金融政策実行を強化するとして、日銀は、現在の「二つの柱」政策戦略を、インフレ予測ターゲティング(IFT)の採用によって強化することも検討できるだろうとある。
さらに、金融市場と国民とのコミュニケーションをさらに改善するとして、日銀の政策ガイダンスは日本国債買い入れの量的なガイダンスをやめること、マネタリーベースからオーバーシュート型コミットメントを切り離すことで簡略化されうるとある。
これも現在の日銀の政策の矛盾点となっており、国債の買入における保有残高の増加額年間約80兆円をめどという数値は有名無実化している。すでに政策目標を量から金利に修正している以上、量的なガイダンスをやめる必要はあり、やめることで市場が動揺するとは思えない。また、マネタリーベースからオーバーシュート型コミットメントを切り離すことも必要となる。これでかなりすっきりしたかたちとなる。
イールドカーブ・コントロール枠組みを調整するとして、日銀は金融緩和政策の長期化が金融機関の収益性に与える影響を緩和するために、残存期間が比較的長い国債の購入を抑えつつ、イールドカーブ・コントロールにおいて利回り0%の目標値を設定している対象を10年物国債から、満期のより短い国債に変更し、国債のイールドカーブをスティープ化することができるとある。
これも日銀が検討していることのひとつとみられるが、たとえば長期金利の目標を10年国債の利回りから5年国債の利回りに変更することで、10年国債の利回りを自由化させ、利回りを上昇させられるものなのか。やや疑問は残るが、現在の政策の持続性を優先させるのであれば、これも検討事項となりうる。個人的には長期金利コントロールそのものをやめるべきと考えているが。