「我々市場業者の声が届かない」最大組合が豊洲移転&築地案の説明会開催を小池都知事らに要望
移転問題に揺れる築地市場(東京都中央区)最大の東京魚市場卸協同組合(東卸=早山豊理事長)は、東京都の小池百合子知事らに対し、豊洲市場案及び築地市場再整備案についての説明会を一般組合員向けに開くよう、要望書を出していたことがわかった。
この要望書は、都の小池知事、及び「市場のあり方戦略本部」中西充本部長の連名に宛てた東卸の早山理事長名の書面で、5月19日、村松明典市場長に手渡されたという。
「都には、市場問題PTの案や専門家会議、あり方戦略本部の議論について、代弁者を通してのやりとりではなく、一般組合員に直接、きちんと説明してもらう責任義務がある」
東卸関係者は、そう狙いを明かす。
「我々業界が、豊洲移転の条件として合意形成しているのは、(操業由来の)土壌汚染を環境基準以下に(無害化)することと、そのために盛り土をすること、地下水モニタリングの結果で判断することだが、約束がすべて反故にされている。小池知事には、豊洲へ行く条件が変わったのかどうか、役人の怠慢を責任持って後処理してくれるのか、都の方針の確認と総括、対応を求めている」
断片的な情報しか得られない
要望書では、
<現実に市場を営んでいる組合員からは、「断片的な情報しか得られない」「我々市場業者の声が届かない」「東京都に意見を聞いてもらえない」などの不満が蔓延しております>
といった現状を説明。組合員がトータルな情報を理解し、課題などを共有する場として、市場のあり方戦略本部による説明会の開催を求めている。
とくに、<事業の継続性や使い勝手など、豊洲市場や築地市場現在地再整備の課題を含む内容等>について、組合員に説明をするよう訴えている。
実際、15日に行われた都の市場のあり方戦略本部のヒアリングで、東卸側は「検討を急ぐことなく、消費者が理解、納得できて、選んでもらえる市場にすべき」だとして、「生殺しにしている」などと伝える一部代弁者の声を全面否定していた。
築地・水産仲卸組合「今の豊洲には行かれない」 青果仲卸組合と共同歩調へ 5/16付記事参照
豊洲市場の直近の地下水モニタリング調査でも、再び環境基準の最大100倍のベンゼンなどが検出されたことを受け、5月18日に行われた都の専門家会議は、「市場の人たちの納得」を重視してきたはずの平田健正座長が、「無害化(環境基準以下)」の方針を巡って、「目指さない」「すぐにはできない」などと発言を変遷。すっかり市場の人たちの信用を失って議論が紛糾してしまい、盛り土がなかったことによる対策を提言する予定だった会議は29日現在、中断したままになっている。
また、5月24日に行われた市場問題PT(小島敏郎座長)も、「市場のあり方戦略本部で示されたデータの根拠などの質問をいくつか投げかけているが、都から回答がなかなか来ない」「委員の間でさらなる意見調整の時間も必要」などとして、5月中に予定されていた知事への報告書の提出時期は、次回委員会の開かれる6月5日の1~2週間後に延期される見込みだ。
小池都知事は、昨年11月に示した総合的判断のためのロードマップ通りに作業を進めていて、すでに若干の遅れが出ているものの、こうした様々な状況の変化などを考えると、判断時期にさらなる影響を与えそうだ。