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自治体議員報酬ランキング最も高いのは横浜市の1,549万円、次いで神戸市、北九州市と福岡市・・・

高橋亮平日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事

報酬年額最高は横浜市の1,549万円、次いで神戸市、北九州市と福岡市

昨今じわじわと再び注目が集まりつつある地方議会。

「豊洲新市場」の問題で注目の集まる都議会とは別に、基礎自治体の議員に注目が集まるといえば政務活動費の不祥事ぐらいだが、実際に地方議員はどれくらいの報酬をもらっているのかを見ていくことにしよう。

今回は、全国813自治体(市・区)の2015年現在の最新データから報酬年額を推計し、ランキングにしてみた。

今回調べて分かったのは市区だけで年間総額1,443億円。これを今回対象とした全議員数20,670人で割って議員一人当たりにすると報酬年額の平均は698万円。

自治体数で割った自治体平均の報酬年額は648万円、うち報酬月額42万円、期末手当145万円だった。

平均で見ると「600万円ぐらいか・・・」と思うかもしれないが、一概に市と23区と言ってもいろんな自治体がある。

こうして調べてみたものをまずはランキングにしてみていくことにしよう。

最も報酬年額が高かったのが横浜市の1,549万円だった。

次いで2位が神戸市の1,493万円、3位が同額で福岡市と北九州市の1,329万円と続き、その後も5位広島市、6位京都市、7位札幌市、8位川崎市、9位堺市、10位千葉市、11位大阪市、12位さいたま市、13位仙台市、14位岡山市と、ここまでは政令指定都市ばかりが並んだ。

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政令市は全国20市あるが、上記以外も静岡市(21位)、浜松市(25位)、熊本市(31位)、相模原市(33位)、とここまでが議員の報酬年額が1,000万円を超え、38位の新潟市でも報酬年額986万円と上位に並ぶ。

こうして見ると、政令指定都市の議員報酬は高い傾向にあることは分かるのではないだろうか。

ちなみに唯一少ないのが、報酬月額50万円、期末手当100万円に引き下げられて700万円になっていた名古屋市だった。

ただ、河村市長や減税日本によって議員報酬についても極端に引き下げられていた印象のある名古屋市だが、一般市と比較をすれば239位とそれでも813市全体から見れば1/4程の上位に入ることが分かる。

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もう一つ傾向として見えてくるのは、上位に県庁所在地が多いということだろうか。

先述の上位14位の政令指定都市でも、北九州市、川崎市、堺市の3市以外は全て県庁所在地だった。

政令市でない県庁所在地でも議員報酬年額1,079万円で18位に宇都宮市が、1,063万円で22位に和歌山市が、以後も26位に岐阜市、27位に鹿児島市、33位に金沢市などが入り、1,000万円以上に県庁所在地は18市入った。

ちなみに県庁所在地で最も議員報酬年額が低かったのは678万円で山口市(271位)だった。

低い方もいくつか紹介しておくと、次いで名古屋市(239位)、715万円で松江市(220位)、717万円の鳥取市(218位)、835万円の佐賀市(145位)と並ぶ。

県庁所在地の議員報酬年額の平均は1,005万円となり、政令指定都市の1,201万円よりは劣るもののそれでも1,000万円を超えた。

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もう一つ分けて紹介しておきたいのが東京23区だ。

議員報酬が高額なイメージのある東京23区の区議会議員ではあるのだが、報酬政務活動費については高額なものの年額については思いのほか最上位には入っていなかった。

これもまた意外だったが、23区で最も議員報酬年額が高かったのは、970万円の44位で大田区だった。

23区は、次いで千代田区(964万円・50位)、足立区(963万円・53位)、葛飾区(960万円・55位)と並んだ。

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以外にも高額所得者が多く住んでいる印象の強い港区は960万円で56位、世田谷区も960万円で57位と微妙な差ではあるが、こうした自治体が必ずしも議員報酬が高いわけではないというのも面白く感じる

最も議員報酬年額が安かったのは意外にも897万円の目黒区(103位)だった。

次いで中野区(901万円・101位)となっており、文京区(903万円・100位)、品川区(918万円・89位)、中央区(923万円・85位)、新宿区(926万円・84位)とこちらの偏見かもしれないが、23区のイメージが少し変わる。

ただ、23区の議員報酬年額の平均は940万円であり、それでも全国の市区の議員平均とは大きな差があった。

一般市で最も高かったのは東大阪市、次いで西宮市、姫路市・・・

ここまで上位に政令指定都市や県庁所在地、23区などで議員報酬が高い傾向にあることを紹介してきたが、では、こうした例外的な自治体を除いた一般市ではどの自治体が高いのだろうか。

最も高かったのは、1,113万円と高額で、総合でも15位に入ったのが東大阪市(大阪府)だった。

次いで一般市2位となったのが西宮市(1,106万円・16位・兵庫県)、3位が姫路市(1,103万円・17位・兵庫県)、4位が倉敷市(1,079万円・18位・岡山県)、5位が茨木市(1,072万円20位・大阪府)、6位が高槻市(1,059万円・23位・大阪府)、7位が寝屋川市(1,059万円・23位・大阪府)、8位が吹田市(1,033万円・28位・大阪府)、9位が豊中市(1,022万円・29位・大阪府)、10位が福山市(10,22万円・29位・広島県)、11位が枚方市(1,019万円・32位・大阪府)、12位が松原市(1,001万円・35位・大阪府)とここまで関西より西の自治体が並ぶ。

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地方議会の業界の中では議員報酬は「西高東低」などと言われてきたが、まさにという感じである。

13位になってようやく991万円で横須賀市(36位・神奈川県)が入る。

以後も14位に船橋市(987万円・37位・千葉県)、15位に守口市985万円・39位・大阪府)、16位に八尾市(982万円・40位・大阪府)、17位に富田林市(979万円・41位・大阪府)、18位に川口市(975万円・42位・埼玉県)、19位に私も務めていた市川市(972万円・43位・千葉県)が入り、20位に尼崎市(966万円・46位・兵庫県)となっているわけだが、ここまで見てもらっても大阪府内自治体が圧倒的に多いということに気づくはずだ。

実際に議員報酬年額が高い自治体からベスト50を数えてみると、そのうち19市が大阪府内の自治体だった。

これを見ると、大阪府の議員報酬年額は、他自治体との比較においては高い傾向にある可能性が高いことなどが見えてくる。

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ちなみに次いで多かったのが東京都で8市、兵庫県で7市、千葉県で5市などであった。

また自治体規模と議員報酬年額の関係もやんわりと見えてくる。

今回対象とした813自治体のうち、政令市や県庁所在地、23区などを除いた一般市は739市、その平均人口が約94,000人であるのだが、こうした一般市の中で議員報酬年額が高い方からのベスト50に入った自治体の人口規模別に見ると、50万人以上の自治体が5市、30〜50万人規模が19市、10〜30万人規模が25市、10万人未満の市が1市となっており、議員報酬年額の高い自治体は大規模な自治体に多いということも分かる。

逆に今回調査対象とした813市の中で最も議員報酬年額が低かったのは、財政再建団体になったことで注目もされた夕張市(北海道・813位・人口9,056人)で260万円だった。

ワースト自治体を見ていくと次いで、にかほ市(秋田県・812位・人口2万6千人)で374万円、阿蘇市(熊本県・811位・人口27,618人)で375万円、胎内市(新潟県・810位・人口3万1千人)で378万円、室戸市(高知県・809位・人口1万5千人)で378万円、行方市(茨城県・808位・人口3万7千人)で382万円、潮来市(茨城県・807位・2万9千人)で391万円、歌志内市(北海道・806位・人口4千人)で391万円、西之表市(鹿児島県・805位・1万6千人)で392万円、飯山市(長野県・804位・人口2万2千人)で393万円と並ぶ。

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こうしてみていくと、これまで話していたように人口の小規模な自治体が並んでいることに加えて関東以北の自治体が多いことも見える。

ただ、議員報酬年額ワースト50市で見ると最も多いのは鹿児島県の9市、新潟県が7市、高知県が5市だった。

議員報酬は本当に「高い」のか、「安ければいい」のか

議員報酬の話をすると、多くの有権者が「議員の報酬なんて安ければ安いほどいい」という印象を持っているのではないかと思うことがある。

ただ、この批判はいささか乱暴な気がする。

今回をキッカケに議員報酬についていくつか考えてもらいたいことがある。

この際、考えてもらいたいのは、「民主主義のコスト」をどう考えるかである。

「民主主義なんていらない」という方々からすればそのコストは「できるだけ少なく」して、逆に「直接市民に還元する福祉費用」の方に回して欲しいと思うのだろう。

この考え方についても一部共感する部分はある。

一時、行政や政治の業界においても世界中でNPM(New Public Management)と言われたりした。

NPMとは、民間企業において行われているような経営手法などを行政や政治分野においても取り入れることで公共サービスを提供しようという概念であり、自治体においても「行政経営」や「行政マネージメント」などと言われるようになった。

私自身も行政コンサルタントして自治体の幹部研修や自治体の政策研修、自治体における事業を請け負う機会もあり、こうした際には、PPP(Public Private Partnership)や PFI(Private Finance Initiative)といった民間活力の活用や、公民連携といった手法を使ったり紹介することも多い。

こうしたPPPを最も取り入れた自治体の事例として米国ジョージア州のサンディ・スプリングス市を紹介することがある。

人口10万人弱のこの街には市長が1名のほか市役所の職員が4名しかいない。

行政サービスのほぼ全てを包括委託した民間企業の従業員に任せている。

まさに業務効率を徹底的に考えた一つの形だと言える。

ただ、そこまで考えたサンディ・スプリングス市にも議員は6 名もいる。

これはなぜだろうか。

日本においては、政治家についての情報があまりにも少ない。

議員についての報道といえば、不正や事件を犯したことばかり・・・

こうした状況から考えれば、「そんな議員なら報酬を安くするどころかいらない」と思う人も多いだろう。

一方で、「お上に任せておけば大丈夫」は本当だろうか。

地方政治や行政の中で政策や事業を見ていると、その結果が歪んでいる場面をいくつも見る。

こうした背景には様々な政治力や思惑などが含まれていることも多いのだが、今回の豊洲の問題も一面ではそうだが、一方で議員がいなくなればそういうものがなくなるかといえばそういうものでもない。

市民が役所や政策、政治を監視し、市民の想いや声を反映する仕組みが必要だからだ。

こうした民主主義の仕組みは必ずしも議会や議員だけが全てだとは思わないが、こうした民主主義の仕組みとしてどういう機能が必要なのか、その「民主主義のコスト」としてどれくらいの額が妥当なのかを考えていく必要がある。

NPMの中でもVFM(Value For Money)ということが問われることがあるが、重要なのは「議員を1人でも減らせ」、「議員報酬を1円でも減らせ」ではなく、市民の期待する仕事に対してちゃんと仕事をしているのか、その仕事に対してコストパフォーマンスは合っているのかを考えていく必要があるのではないだろうか。

今回の自治体議員報酬年額ランキングは、こうしたことを考える際に、少しでも興味を持ってもらうキッカケになればと思い作成した。

単に「この報酬年額は高い」という批判は、自身などや一般の給与との比較による評価でしかない。

実際に「民主主義の仕組みの構築」という政策についての評価でいえば、議員一人ひとりの報酬額より、議員数をかけた議会全体の報酬年額を考えるべきかもしれないし、市民一人ひとりへの費用対効果という視点で考えれば、人口一人当たりでの比較の方がより重要かもしれない。

こうしたデータについては、次回また紹介したいと思う。

議会や議員に求められる成果(アウトカム)とそれに対するコストでの評価をぜひ考えてみてもらいたい。

日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事

元 中央大学特任准教授。一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、神奈川県DX推進アドバイザー、事業創造大学院大学国際公共政策研究所研究員。26歳で市川市議、全国若手市議会議員の会会長、34歳で松戸市部長職、東京財団研究員、千葉市アドバイザー、内閣府事業の有識者委員、NPO法人万年野党事務局長、株式会社政策工房研究員、明治大学世代間政策研究所客員研究員等を歴任。AERA「日本を立て直す100人」に選ばれた他、テレビ朝日「朝まで生テレビ!」等多数メディアに出演。著書に『世代間格差ってなんだ』(PHP新書)、『20歳からの社会科』(日経プレミアシリーズ)、『18歳が政治を変える!』(現代人文社)ほか。

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