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沖縄高校生眼球破裂事件に学ぶ、眼球破裂とは?眼窩底骨折とは?

平松類眼科医
(写真:アフロ)

 沖縄で高校生が眼球破裂をした。その関連で若者300~400人が沖縄署を包囲したなどのニュースが流れました。眼球破裂とはどういう状況なのか?実は普段でも起こりうるという事、起こった場合どういう対処が適切なのかについて眼科医が解説します。

〇 眼球破裂といっても爆発するわけではない

 眼球破裂というと「眼球という玉が爆発する」ようなイメージをもたれている人が多いです。けれども現場での眼球破裂は、そのほとんどが眼球の一部に裂け目ができてそこから中身が出てくるというのが一般的です。「粉々に爆発するというイメージ」だと「もう治らない」と思われます。けれども「裂け目ができて中から出てくる」という状態であれば治療可能であることを想像できるでしょう。

 特に多いのは鋭利なもので傷をつける事です。刃物や鉄片などで目が割けることが一般的です。もちろん喧嘩など他人からの暴力によってなる事もあります。しかし、早期に治療すればある程度視力が保てる人がいるという事実は知っておいてもらいたいものです。放置してしまう人もいます。そうなると感染症がおきて治療が難しくなります。なるべく早めに眼科に受診する。救急車を呼んででも受診をしていただきたいと思います。

 眼球破裂したんだから、みんな激痛で病院にかかるだろう。そうおもうかもしれません。けれども実はそうでもないです。眼球破裂しても気づかないぐらいのちょっとした痛みの人もいます。痛みと共に片目であると運転ができないのか?というと片目でも運転は可能です。

〇 温かい涙がでてきたら要注意

 眼球破裂して中身がでている。そうしているけれども視力低下はそこまでではない人もいます。視力を測ると0.8、場合によっては1.0出ていることもあるのです。痛みはあるものの「ずきずきする程度」で普通に歩いて受診する人も多いです。そのため気づかずに「明日かかればいいや」と思って手遅れになってしまいます。

 では眼球破裂の症状で特徴的なの物は何があるでしょうか?もちろんひどい時は出血して失明に近いほどになることもあります。けれども症状が強くない時は「何となく見にくい」「温かい涙が出てくる」という症状が要注意になります。なぜかというとこの症状は眼球の中身が外に出ているから温かいのです。眼球の中は体液として温まっています。なので外に出ると温かさを感じます。普通の涙は表面的に分泌されるため温かさを感じないという事です。また涙と違って絶えず出てくるというのも特徴的です。

 では私たちが普段の生活で眼球破裂に気を付ける場面というのはどういうものがあるのでしょうか?

提供:イメージマート

〇 意外とある日常にある眼球破裂

 今回のように打撲や怪我などがわかりやすいですが意外とふとした日常で眼球破裂になることがあります。多い事としては回転のこぎりや草刈り機の歯がかけて目にとんでくる。そして眼球をさくというのがあるケースです。まさか草刈でそうなるとは思っていないので気にしない人がいます。

 スポーツなどで眼球破裂になることがあります。経験としてはサーフィンの時サーフボードがささり眼球破裂をきたしたケースもあります。球技としてはゴルフなど小さいボールの方が目に当たると眼球破裂をきたしやすいです。サッカーボールなどの大きなボールの場合は目の周りの骨に当たってそちらが折れて眼球を守ってくれるため多くはありません。サッカーの場合は相手選手のスパイクなどには要注意となります。野球の場合も眼球破裂の可能性はありますがゴルフボールに比べれば目に入りにくいという事があります。

 喧嘩などのケガの場合は相手が灰皿で殴って眼球破裂をするなどのケースもあります。特に右利きの人が多いので左目に外傷を負うケースがあります。これらを防ぐ意味でもコンタクトレンズより眼鏡の方が、防御性能が高くなります。回転のこぎりや草刈り機を使う時は防護メガネを使う事をお勧めします。

 とはいえ動機を付けていても眼球破裂をしてしまう事がある。そういう時はどう対処すればいいのでしょうか?

〇 眼球破裂したら目を洗ってはいけない

 眼球破裂をしたとき「目を洗おう」そう思う人がいます。けれどもそれは避けていただいたほうがいいです。なぜならば綺麗と思っている水は意外ときれいではないことが多い。水道水に雑菌が入っていることもあるからです。また出血していても抑えて止めようとはしないでください。眼球が破裂しているので抑えてしまうと目の内容物が外に出てしまいます。そうなると感染の原因にもなりますしかなり視力も下がってしまいます。

 ガーゼをしてもいいですし、特に何かでおさえなくてもよいのでとにかく早くに眼科にかかる事です。それが夜であっても休日祝日であってもそう急に眼科にかかって治療を受けることが必要になります。眼球破裂の程度にもよりますが早期に適切な治療を受けると視力が保てることも多いという事があります。このように眼球破裂は怖く日常でもありうるものですが、それ以上におこりやすいのは眼窩底骨折です。眼窩底骨折とはどのようなものでしょうか?

写真:イメージマート

〇 鼻血がでても鼻をかまないほうがいい眼窩底骨折

 眼球の周りには眼窩骨といって骨がぐるっと回って目を守ってくれています。しかしこの眼窩骨はあまり強くないです。強い衝撃で折れてしまいます。ここにはメリットがあるのです。本来眼球に強い力がかかったとき周りの骨がしっかりしていると眼球が破裂するしかありません。しかしその周りの骨が弱ければ骨が折れる事で衝撃を吸収してくれるのです。このように眼球にかかった衝撃吸収という意味でも眼窩底骨折はおこりやすいといえます。

 プロボクサーやK-1選手のように格闘技の選手。プロではなくてもアマチュアや日常の喧嘩でも起きます。眼窩底骨折の時気を付けておくべきことがあります。それは「鼻血がでても鼻をかまない事」です。どういう事でしょうか?

 骨が折れる事で目と鼻がつながっているので鼻血がたれてくるのです。このときに強く鼻をかむと圧力がかかってしまいます。わずかに折れていた骨折が強く折れてしまう事があります。眼窩底骨折がひとたび強くなると物が二つに見えたりして手術を必要とすることがあります。軽度であれば経過観察のみで済んだかもしれないのに手術となってしまうからこそ鼻血がでても鼻をかまないのが大切になるわけです。

眼科医

医師・医学博士・眼科専門医・昭和大学兼任講師。海外および全国(北海道から沖縄まで)から患者さんが集まっている。登録者6万人以上のYouTube「眼科医平松類チャンネル」にて日々目の健康情報を発信。日経Goodayなどに連載。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌等メディアにても情報発信をおこなっている。著書に「1日3分見るだけでぐんぐん目が良くなる!ガボール・アイ」「緑内障の最新治療」など多数あり、累計50万部以上。

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