日本の「輸出規制」に韓国が検討している6枚の「対抗カード」の効力は!?
「G20サミット」終了直後の7月1日に発表されたスマートフォンやテレビに使われる半導体などの製造に必要な素材3品目の韓国向けの輸出規制は今日(4日)から発動されるが、韓国政府は昨日、産業通産資源部、外交部を中心に関係部署対策会議を開き、対応の検討に入り、今朝、経済担当の洪楠基副首相は「日本が撤回しなければ、日本に対して相応の措置を検討する」と、政府高官として初めて対抗措置を口にした。
(参考資料:日本の「対韓輸出規制」発表を韓国メディアはどのように報じたのか?)
韓国政府内には康京和外相の「(日本の)報復措置があった場合には、我々も黙っているわけにはいかない」との強硬発言にみられるように政府内には「目には目を」とばかり「即刻、対抗措置を取るべき」との勇ましい声が上がっている。
所轄の産業資源部ではすでに世界貿易機関(WTO)に提訴する意向を表明しているが、それ以外に対抗カードとして▲戦略物資の対日輸出制限▲日本製品輸入規制▲日本観光ボイコット▲日本製品の不買▲米国や中国、EUなど國際社会と協調して日本に圧力を掛ける―等が検討されているようでもある。しかし、現実にはどれもこれ「報復」としての効果が疑問視されており、実効に移すには限界があるとの指摘も出ている。そこで韓国政府内で囁かれている「対抗カード」を幾つか挙げて、検証してみる。
▲WTOへの提訴
韓国は日本の半導体素材輸出規制措置は「WTOの自由貿易の精神に反する」と抗議している。WTOには輸出入で数量制限を禁じている「関税及び貿易に関する一般協定(GATT) 11条に違反している」として日本の不当性を訴えるようだ。これに対して日本は「優遇措置を外しただけで、輸出を禁じたわけではないのでWTO協定には違反してない」(安倍首相)との立場だ。
韓国は日本の水産物輸入制限をめぐるWTOの裁定では勝訴したことからそれなりの自信があるのかもしれないが、今回も韓国が勝てるとの保証はない。仮に勝訴し、日本の規制が撤回されるにしても数年先のことである。最終的な裁定が出るまで2~3年はかかるからだ。即効性に問題があり、提訴を取り止めるかもしれない。
▲戦略物資の対日輸出制限
対抗カードとして「貿易全面戦争」覚悟して韓国産製品の対日輸出、特に世界市場で60%を占有しているDラムとNAND型フラッシュメモリー半導体の日本輸出を制限する案もある。しかし、現実的には難しい。半導体はグローバル戦略物資協定に基づき、戦略物資には該当しないので、対日輸出制限を正当化することはできない。制限すれば、韓国自らがWTOを違反することになる。
日本の規制措置がWTOに違反していると反発している韓国としては同じ方法で対抗するのは負担が大き過ぎる。加えて、半導体の対日輸出は昨年の基準で12億4千万ドルと石油製品(52億1千万ドル)、鉄鋼(21億3千万ドル)と並ぶ韓国にとっては外貨稼ぎの「ドル箱」である。
韓国の輸出は7カ月連続マイナスである。今年の輸出は最終的に5%の減少が予測されていることもあって「ドル箱」をそう簡単に手離すわけにはいかない。また、仮に韓国が半導体輸出を規制すれば、短期的には日本に痛手を与えることができるかもしれないが、日本が台湾など代替国先を見つけるのは時間の問題だ。そうなれば、韓国は結果として日本の市場を失うだけだ。
日本への自動車部品の輸出規制も検討されているようだが、これも同様で逆に韓国企業の信頼度が損なうだけで、下手をすると、中小企業の日本輸出の道を閉ざす恐れもあるので、実現性は低い。
▲日本製品の輸入規制
自動車や衣類など消費財輸入を制限すべきとの声もある。各種輸入通関の手続きを強化する動きだ。
自働車の場合、排出ガスや騒音などを理由に、また韓国に進出した日本の代表的なブランド品やファッション製品には知的財産権違反などの理由に書類審査や検査などを強化することで規制を掛ける案だが、これまた日本のWTO提訴対象になりかねない。
昨年韓国で販売された日本車はトヨタ、日産など55、253台に上る。先月(6月)の外車新規登録台数は19、386台で、前年同月の23、311台よりも16.8%減ったが、日本車だけは増加している。6月1か月で3、946台と、昨年同月の3、372台よりも17%も増えている。韓国人ドライバーのニーズにマッチした日本車を市場から排除するのは容易ではない。
▲米国や中国、EUとの協調による対日圧力
韓国は日本の輸出規制対象素材の主たる消費者だけではなく、全世界でメモリーチップとディスプレイの中心的な供給元になっている。従って外国の輸入企業が深刻な影響を受ければ、グローバル供給チエインに深刻な影響を与えかねない。
日本の規制措置で実際に韓国の半導体生産に被害が出れば、半導体を輸入している米国、EUなどにも被害が及ぶことからこれら国々と協調して日本を圧迫して、断念させる案である。しかし、これまた韓国よりも日本との貿易量の多いこれら国々がどこまで同調してくれるのか疑問である。
▲日本観光ボイコット
日本の規制措置が「報復措置」と韓国で一斉に報道されると、日本への反発から日本旅行を取り止める動きが出ている。
昨年、日本を訪れた韓国人は753万人。訪日外国人の4人に1人は韓国人である。韓国観光協会の統計では韓国人観光客が昨年1年間で使った費用は約6、500億円で、支出2位である。日本旅行を制限すれば、日本の観光業界に打撃を与え、日本の観光客年間目標(4千万)の達成は困難となる。
韓国の旅行代理店によると、7~8月に日本旅行を予約した人は5万5千人に上るが、今のところ、キャンセル料を払って、予約を取り消す人は少ないとのことだ。
▲日本製品の不買
政府次元による対抗手段が限られることもあって、「日本のものを買うのも止めましょう。韓国産を使用しよう」との日本製品ボイコット運動には韓国政府も密かに期待している向きもある。
オンラインやSNSを中心に日本政府不買運動が広がっており、カメラ、自動車、電子製品、ブランド品、時計、衣類など不買対象の日本企業のリストまで上がっている。
ある大学生団体はSNSで「日本政府は経済報復と脅迫では我が国民が引き下がることはないことを知るべきだ」「国民は自発的に不買運動を始めた!」と国民に運動への参加を呼び掛け、実際にソウルの日本大使館や日本車代理店で一人示威も始めている。
「日本の経済制裁に対して政府の報復措置を請願する」との青瓦台(大統領府)への国民請願は2日間で7、400人が賛同していた。請願には「日本の経済制裁に対して報復できる関税や輸出規制方法を見つけてください」という書き込みもあった。しかし、1か月で180万人を超える賛同が集まった野党第1党の「自由韓国党」の解党を求める請願に比べると、反応は遥かに鈍い。