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6夜連続のチキンサンドイッチも「美味」、「我慢」で全米オープン2勝目を目指すマキロイの戦い方

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 全米オープン3日目は「ムービングデー」の名が示す通り、リーダーボードが大きく入れ替わった。

 通算5アンダーで首位に並んだのは、ラッセル・ヘンリー(米)、ルイ・ウエストヘーゼン(南ア)、マッケンジー・ヒューズ(カナダ)の3人。

 そして、この日、2打差の通算3アンダー、4位タイに浮上したローリー・マキロイ(北アイルランド)を押し上げたものは、「我慢」の一言だった。

 マキロイは2011年の全米オープンでメジャー初優勝を挙げ、2012年全米プロ、2014年全英オープン、全米プロを制したが、以後、メジャー優勝からは遠ざかってきた。

 10年ぶりの全米オープン・タイトルは喉から手が出るほど欲しい栄冠のはず。だが、すでに32歳になり、一児の父親になったマキロイには、年々、落ち着きと円熟味が増しており、とりわけ今週はプレー中もプレー後も、柔和な表情と優しい笑顔に目を引かれる。

 初日は70で発進し、2日目は73とやや後退したが、そこで落胆することなく、ぐっとこらえて挑んだ3日目は4アンダー、67をマークし、4位タイへ急浮上した。

「とはいえ、今日、僕のゴルフに光り輝くような場面は何もなかった。ただただグリーンの真ん中を捉え、パーを獲ればグッド。そういうゴルフだった」

 15番はピンチを迎えた。ティショットを大きく左に曲げて蛇が潜む藪の中へ打ち込み、1罰打を払って3打目でフェアウエイへなんとか出した。4打目でピン2メートルへ付け、これを沈めて右拳を握り締めた。

「ボギーパットを沈めてガッツポーズを取るのは、全米オープンだけだ」

 この日、マキロイが喫したボギーは、この15番の1つだけ。それ以外のホールでは、欲張らず、焦らず、我慢に我慢を重ね、ひたすらパーを拾い続けたら上位に浮上した。

 今週は18番グリーン沿いのロッジに愛妻エリカ、長女ポピーとともに家族みんなで滞在しており、ディナーは毎晩、ルームサービスのチキンサンドイッチだそうだ。

「たぶん今夜もそれを食べるから6夜連続になる。でも、結構、美味しいんだ」

 明日、優勝すれば、すべての我慢が報われる。

 先月は、母の日に米ツアーのウエルスファーゴ選手権を制し、勝利を妻と母に捧げた。明日の最終日は、父の日だ。

「父の日も、いい結果になりますように」

 あと1日、我慢だ。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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