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ゲームに欠かせない雑誌達の実情は…ゲーム・エンタメ系雑誌部数動向をさぐる(2019年1~3月)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ かつてはゲームをする際にも専門誌は必要不可欠な存在だったのだが。(写真:アフロ)

トップはVジャンプ…部数の現状

インターネットのインフラ化に伴い速報性が重要視され、ゲーム関連をはじめとしたエンタメ情報の提供媒体として、紙媒体の専門誌の立ち位置が危ぶまれる昨今。ゲームやエンタメ専門誌の部数動向を、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数(※)から確認する。

まずは最新値にあたる2019年の1~3月期分と、そしてその直前期にあたる2018年10~12月期における印刷証明付き部数をグラフ化し、現状を確認する。

↑ 印刷証明付き部数(ゲーム・エンタメ系雑誌、万部)(2018年10~12月期と2019年1~3月期)
↑ 印刷証明付き部数(ゲーム・エンタメ系雑誌、万部)(2018年10~12月期と2019年1~3月期)

いくつかの雑誌で青よりも赤の方が短め、つまり部数が減少している様子が分かる。他方、差異はさほど無いように見えるが、いくつかの雑誌で赤の方が長い、つまり部数が伸びている雑誌もある。最大部数を示しているのは「Vジャンプ」で、前期とは変わり無し。

印刷証明付き部数を提示しているゲーム・エンタメ誌は、現時点で7誌。日本雑誌協会の情報公開サイトにおけるジャンル区分で「パソコン・コンピュータ誌」に該当する雑誌は皆無(ジャンル区分そのものは今なお存在している。かつては「マック・ピープル」「ネットワークマガジン」などがあった)。今後も減少傾向が続くようならば、「ゲーム・エンタメ」の定義で包括しえる、類似カテゴリの雑誌を加えることも検討せねばなるまい。

前四半期からの変化を確認

次に四半期、つまり直近3か月間で生じた印刷数の変化を求め、状況の確認を行う。季節による変化が配慮されないため、季節変動の影響を受けるが、短期間における部数変化を見極めるには一番の値となる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌、前期比)(2019年1~3月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌、前期比)(2019年1~3月期)

プラスを示したのは「声優アニメディア」「声優グランプリ」「アニメージュ」の3誌。マイナスは4誌で、誤差領域(プラスマイナス5%以内)を超えた下げ幅を示しているのは「メガミマガジン」のみ。

「声優アニメディア」は前期比で2割を超える上げ幅を示しているが、これは前期の反動に加え、2月号の「ラブライブ!サンシャイン!!」のAqours特集が大いに人気を博した結果だと思われる。購入者による好印象の感想を多数見受けることができる。

↑ 印刷証明付き部数(声優アニメディア、部)
↑ 印刷証明付き部数(声優アニメディア、部)

ここ数期はやや荒い部数動向を示しているように見える。企画面での試行錯誤の影響が出ているのだろうか。

「声優グランプリ」は15.0%のプラス。

↑ 印刷証明付き部数(声優グランプリ、部)
↑ 印刷証明付き部数(声優グランプリ、部)

グラフ動向を見ても今期は明らかに上向きの動き。該当期の刊行誌を確認するに、2019年3月号の「五等分の花嫁」特集や「声優名鑑2019 女性編」付録、4月号の「声優名鑑2019 男性編」など、是非とも購入しておきたい内容が多々見受けられる。

今ジャンルでは最大部数を誇る「Vジャンプ」は前期比でマイナス3.7%。

↑ 印刷証明付き部数(Vジャンプ、部)
↑ 印刷証明付き部数(Vジャンプ、部)

同誌は特集や付録で大きく上下感を見せるものの、おおよそボックス圏(青色)内での部数を示していたが、2013年4~6月の突出した値を最後に新たなボックス圏(黄色)を形成する部数動向となった。しかし2017年1~3月期に底抜けをし、その後も回復は見せず、さらに新しいボックス圏(オレンジ色)を形成したと解釈できる動きをしている。少しずつ、確実に部数を縮小しているように見える。直近の17万3333部は記録のある限りでは最少の部数となっている。

ゲームそのもののプレイヤーが一定数存在することが前提となるが、ゲームと密接な関係にある付録を常につけることで雑誌の集客力を高めさせるのも、雑誌販売の一スタイルとして認識すべき方法論であり、「Vジャンプ」の必勝方程式だったはず。その方程式にゆがみが生じたのか、あるいは代入できる要素=ゲームが空振り状態なのか。

なお「Vジャンプ」は電子雑誌方式については、紙媒体誌を購入した人限定で閲覧できる仕組み「購入者特典」の形での提供。電子書籍版のセールスが伸びたので今件値(紙媒体として印刷された部数)が減っているとの解釈は難しい。

前年同期比ではどうだろうか

続いて前年同期比を算出し、状況確認を行う。年単位の動きのため前四半期推移と比べれば長期間の動きの精査となるが、季節変動を気にせず、より正確な雑誌のすう勢を確認できる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌、前年同期比)(2019年1~3月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌、前年同期比)(2019年1~3月期)

プラス誌は「声優アニメディア」「声優グランプリ」「アニメージュ」の3誌。誤差領域を超えたマイナスを示したのは「メガミマガジン」「アニメディア」「Vジャンプ」の3誌。

「アニメージュ」は前年同期比だけでなく前期比でもプラスを示している。

↑ 印刷証明付き部数(アニメージュ、部)
↑ 印刷証明付き部数(アニメージュ、部)

該当期の刊行誌を確認すると、2019年2月号では映画「刀剣乱舞」の特集やプリキュアシリーズクリアファイルの付録、3月号で「ルパンレンジャーVSパトレンジャー」の特集やゾンビランドサガの下敷きの付録、4月号では「ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風」の特集などが見受けられる。話題に上っている作品へ巧みにスポットライトを当て、それらが連続してクリーンヒットを生み出している雰囲気が感じられる。

アニメ関連雑誌としてはライバル的な存在、関連業界では「三大アニメ誌」とも呼ばれている、具体的には「アニメージュ」「アニメディア」「ニュータイプ」の動向。「ニュータイプ」の部数が非公開となったため、今回も残りの「アニメージュ」「アニメディア」のみ、データの継続反映をさせた上で、状況の精査を続ける。

「アニメージュ」と「アニメディア」の2誌間で順位変動が起きた後、そのポジションが維持されたまま、3誌とも部数を下げていた。その後順位はしばしば入れ替わり、もみ合いの形を維持している。最近では2016年1~3月期で両誌とも「おそ松さん」特需で跳ねた際に立ち位置が逆転し、その状態が現在まで続いている。なおグラフ中の「Q1」とは第1四半期、つまり1~3月期を意味する。

↑ 印刷証明付き部数(三大アニメ誌、部)
↑ 印刷証明付き部数(三大アニメ誌、部)

直近値では「アニメージュ」3万7533部、「アニメディア」2万7133部。前期と比べると両誌の差異は広まった計算となる。

非公開化直前の「ニュータイプ」は「アニメージュ」「アニメディア」とさほど変わらない部数だったことから、昨今のつばぜり合いにおいてどのようなポジションを示しているのか、大いに気になるところ。しかし非公開である以上、その願いはかなうことは無い。

日本国内の家庭用ゲーム機業界の市場は縮小を続けている。少なくとも利用者人口は堅調な動向にあるスマートフォンアプリ向けの紙媒体専門誌のアプローチも、情報の公知特性を考慮するとビジネス的には難しい。新しい付加価値の創生、アイディアの想起など、あらゆる手立てを講じて有効策を見出さない限り、今後も当ジャンルの低迷は続くことだろう。

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※印刷証明付き部数

該当四半期に発刊された雑誌の、1号あたりの平均印刷部数。「この部数だけ確かに刷りました」といった印刷証明付きのものであり、雑誌社側の公称部数や公表販売部数では無い。売れ残り、返本されたものも含む。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

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(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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