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作新学院、9連覇!15回目の甲子園へ――高校野球・栃木大会

川端康生フリーライター
台風で朝方まで雨だった清原球場だが決勝戦は定刻通り。スタンドも観客で埋まった。

作新学院、ノーヒットで先制

 横山の好走塁から始まった。

 初回、死球で出塁すると、3番・石井のとき二塁へ盗塁。これを相手が後逸したとみるや、三塁も回って、一気にホームベースを陥れたのだ。

 打席にはクリーンアップ。センターの守備位置が深かった。文星芸大付の守備がやや緩慢だったことも否めない。しかし、横山はサードベースでスピードを落とさなかった。まるですべてを見越していたかのように、躊躇なく(三塁コーチだけを見て)ホームへと向かった。常に状況を頭に入れ、一つでも次の塁を狙う。そんな野球が身についているからこその見事な走塁だった。

 大一番の主導権を握ると同時に、チームに勢いをもたらす値千金のランニングだった。

 ノーヒットで先制点を奪った作新学院の抜け目のない野球は、その後も続いた。

 2回に1点、3回に2点の追加点の場面。2回は2アウトとなった後、四球で出塁した松尾が二盗。そこで林がライト前にタイムリー。3回は2塁打の中島と四球の石井を置いて、大河内がタイムリー。

 ここまでヒットは4本だけである。しかし、スコアボードには4対0。走塁と適時打で効率的に得点を挙げ、相手にダメージを与えながら、勝利へと近づいていった。

文星芸大付にもチャンスはあった

 対する文星芸大付。先発の左腕・佐藤から高根をはさんで饗庭へと継投した。

 ここまでも打ち込まれていたわけではない。しかしゲームの流れは完全に作新学院に傾いていた。

 それでも、さすがエース。饗庭がマウンドに立って試合が落ち着いた。そしてチャンスが巡ってくる。

 0対5とされていた5回、3本のヒットで1点を返し、さらに死球で1死満塁。ホームランなら同点、とは言わない。それでもヒットが出ればゲームがわからなくなる局面だった。しかも打席には4番・浅野。

 だが、作新学院の林に踏ん張られた。セカンドゴロでダブルプレー。この回3本のヒットを放ちながら1点のみ(送りバントの失敗もあった)。

 さらに6回にも2死ながら1、2塁、7回にも1死1、3塁。文星芸大付にもチャンスはあったのだ。しかし、あと1本が出なかった。

 ちなみに7回を終えた時点でヒットは8本。作新学院の7本を上回っていた。しかし、あと1本が出ず、競りかけることができなかった。

9連覇達成

 作新学院は8回にも福田のタイムリーで1点を追加(この回もヒットはこの1本のみ)。投げては林をリリーフした古川が、文星芸大付の反撃をヒット1本(村山に一発を打たれたが、ソロ本塁打だった)のみに抑える好投で、そのままゲームセットまで辿り着いた。

 派手に打ち勝ったというわけでも、投手力で相手を封じ込んだというわけでもなく、それでもきっちり勝利を収め、優勝をつかみとった。勝負を制する術に長けた試合巧者、そんな勝ち方だった。

 これで9連覇。選手たちに胴上げされ、9度宙を舞った小針監督が「甲子園でも校歌を歌います」と宣言すると、スタンドから大きな拍手が起きた。

 栃木の高校野球ファンに愛されているチームである。栃木の高校球児たちを代表して臨む9年連続15回目の甲子園である。

フリーライター

1965年生まれ。早稲田大学中退後、『週刊宝石』にて経済を中心に社会、芸能、スポーツなどを取材。1990年以後はスポーツ誌を中心に一般誌、ビジネス誌などで執筆。著書に『冒険者たち』(学研)、『星屑たち』(双葉社)、『日韓ワールドカップの覚書』(講談社)、『東京マラソンの舞台裏』(枻出版)など。

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