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北朝鮮で「韓流」にまた死刑判決…14歳も「吊し上げ」

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金正恩氏(朝鮮中央通信)

昨年12月、北朝鮮の首都・平壌市の郊外にある楽浪(ランラン)区域の学校の運動場で、公開裁判が行われた。デイリーNKの内部情報筋によれば、動員された地域住民が見守る中、被告に死刑判決が下された。容疑は「外部映像物販売」、つまり韓流ドラマ、映画の販売だ。

北朝鮮当局はこれまでにも、拷問や銃殺刑など極端な手段を動員し、韓流の国内拡散を取り締まってきた。

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しかし今、北朝鮮の人々の間では、文化開放への期待が高まりつつあるという。そのきっかけとなったのは、昨年4月の南北首脳会談に際して平壌で行われた韓国芸術団の公演だ。

「芸術団が平壌に来て以降、韓国の音楽やドラマを思う存分見てもいいと思った人が多かった」(デイリーNK内部情報筋)

昨年11月、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の清津(チョンジン)では、韓流ガールズグループのRed Velvet(レッドベルベット)らが出演した昨年4月の韓国芸術団の公演のDVDの発売が始まった。また、韓国製品の販売制限にも緩和の動きが観測されていた。

ところが、人々のそんな期待に冷水を浴びせかけるように、当局は韓流の取り締まりに躍起になっている。わざわざ韓国からタレントに公演をさせながら、一方では「見るな」と脅迫し、甚だしくは死刑にする当局のやり方に、市民は恐怖を覚えつつも、首を傾げている。

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取り締まりは地方でも行われている。2月3日、北部の両江道(リャンガンド)では今月3日、14歳の中学生を含む17人を「韓流ドラマや映画をこっそり視聴し、映像ソフトを流布した」として吊し上げる大規模な住民暴露会が行われた。事実上の公開裁判である。

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違法とされる行為に対し大々的な取り締まりが始まれば、おとなしく嵐が通り過ぎるのを待ち、緩和されれば何食わぬ顔でまたやり始める。抑圧的な体制のもとで暮らしてきた北朝鮮の人々の「生き延びるための知恵」だが、今回は少し状況が異なるようだ。

「保衛部(秘密警察)と109常務(韓流取り締まり班)を中心に厳しく取り締まっているが、むしろ(USB)メモリはよく売れている。小さいのでバレるリスクが低く、隠しやすいので買い求める人が増えている」(情報筋)

これは、捕まったら死刑にされるかもしれないという恐怖を乗り越えて、韓流を見続ける人が少なからず存在することを示す。今まで娯楽らしい娯楽がほとんどなかった北朝鮮に、韓流が恐ろしいほどの勢いで広がっているのだ。

中でも若者は単に韓流を消費するだけにとどまらず、自分たちでコンテンツを生産するレベルに達している。取り締まりの強化は、逆に体制を脅かすほどの不満に繋がる可能性すらある。

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デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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