日本の公務員は多いのか少ないのか、その実情を国際比較でさぐる(2022年時点最新版)
公的機関に所属し職務を執り行う人を公務員と呼んでいる。社会の維持のための公務を継続して行うためには欠かせない存在だが、公費で雇われていることから経済の観点で色々と論議の対象となる。今回はOECD(経済協力開発機構)の公開値を基に、OECD加盟国における公務員の数の実情を確認する。
今回精査する公務員の数は、絶対数では意味がない。人口そのものは国によって異なるからだ。そこでOECD加盟国を多様な政府関連の視点から調査して同一基準で数量化したOECDの報告書「Government at a Glance」の最新版となる「Government at a Glance 2021」から、雇用者全体に占める公務員の比率を計算した項目「Employment in general government as a percentage of total employment」(雇用者全体に占める一般政府雇用者比率)の値を用いる。この項目で示されている一般政府雇用者=公務員とは一般政府(中央政府だけでなく地方政府や公的な社会保障基金を合わせた公的機関の総体)に雇用されている人を指し、非営利団体も含まれる。また、雇用者全体も公務員もそれぞれの国内で雇用されている人のみを対象としており、短期雇用者も該当する。
「Government at a Glance 2021」には最新値として2019年分、それ以外にも過去の複数年の結果が掲載されているが、一番古い2007年の値を併記する。なお一部の国では2007年分の値が未掲載のため、グラフでは空欄となっている。
日本は2019年時点で5.9%。雇用者全体のおよそ1/17が公務員との結果になる。これはOECD諸国では最低率。つまり日本はOECDの中では一番公務員の比率が小さいことになる(公務員の人数そのものが少ないことを意味しない)。OECDの平均値は2019年時点で17.9%なので、それと比べると約1/3。
公務員比率が高い国はノルウェー、スウェーデン、デンマーク、アイスランド、フィンランドなど北欧諸国で、いわゆる「大きな政府」の国。福祉を充実させるために多くの公務員が必要なのか、あるいは公務員として雇用すること自体が福祉の一環として考えられているのかもしれない(国による直接の雇用の確保もまた、社会福祉と成り得る)。
公務員比率が低い国は、日本を筆頭に韓国やスイス、ドイツ、オランダなど。欧州諸国では概して「大きな政府」となりがちなのだが、スイスやドイツ、オランダ、ルクセンブルクなど欧州でも公務員比率が低い国が多々見受けられる(スイスは欧州でも「小さな政府」に分類されている)。
直近分の2019年の値を2007年と比較すると、イスラエルやイギリスでは大きく公務員比率が減り、スペインやエストニアなどでは増えているが、それ以外はあまり大きな変化は生じていない。日本は昔から公務員が極めて少ない国であることもまた変わりない。
OECDの公開値では、2007年以前の値として同一基準では無いものの、「Government at a Glance 2011」において「Employment in general government and public corporations as a percentage of the labour force」(労働力人口に占める一般雇用者比率)の2000年時点の値を取得できる。労働力人口には雇用者以外に完全失業者も含まれるため、「雇用者全体に占める一般政府雇用者比率」とは単純比較はできないものの、公務員の割合がどれぐらいであったのかを推し量る指標として使うことはできる。
多少のばらつきはあるが、北欧諸国を中心とする「大きな政府」の国は公務員比率が高く、「小さな政府」の国は低い。そして日本は一段と低い値にある。前世紀末あたりから日本では行政改革の一環として公務組織の民営化が推し量られているが(例えばJRの本州3社が完全に民営化されたのは2006年)、前世紀の時点でも日本の公務員の数(比率)は国際的に見て非常に少ない(小さい)状態だったことが確認できる。
「小さな政府」状態にある他の国、例えばアメリカ合衆国や韓国、スイスと比べても日本の公務員は非常に少ない状態。公務員が国による雇用の創出の役割も果たしているとの観点で考えると、現状が正しい状態なのか否か、考える必要がある値には違いない。
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