真冬のキリギリスは、恐怖の首切りの刑で有名なクビキリギス
イソップ寓話の1つとして有名な「アリとキリギリス」に登場するキリギリスは、冬になると体がボロボロになり、アリの前にひれ伏して食べ物を恵んでもらうことになっている(アリに門前払いされたキリギリスが凍え死ぬという残酷バージョンもある)。しかし、ここで疑問が生じる。冬を越せるキリギリスなどいるのだろうか。
それがいるのである。それはクサキリ、カヤキリの仲間だ。中でも一番多く目にするのが、クビキリギス。民家の物置などに潜り込んで越冬することもあるので、冬に出会うことも多い。
何と言っても怖いのはその名前。クビキリ(首切り)という名は、こけおどしではない。その口元の赤く大きな牙(大あご)の力はかなり強く、噛みつかれると飛び上がるほど痛くて、出血は免れないという。しかも、一度噛みつくと容易に引きはがすことができない。無理に引き離そうとすると、クビキリギスの首がちぎれてしまうこともあるという。首がちょん切れてもなお噛みついている姿は、想像するだけで恐ろしい。
この首が千切れるまで噛みつき続ける行動が、クビキリの名の由来だと言われている。昆虫記者は子供の頃に、虫好きの父からその話を教わった。だが、まだ実際に試したことはない。痛いのは嫌だからだ。興味のある人は一度試してみて、その結果を報告してほしい。
今年も先日、越冬前のクビキリギスに出会った。噛みつかれたらどれほど痛いのか、またしても試してみたい誘惑にかられたが、やはりその勇気はなかった。赤い牙をむき出した怒りの形相は本当に怖く、気弱な昆虫記者はその顔を見ただけで怖気づいてしまうのであった。
茶色のクビキリギスによく似ていて、間違いやすいのが近い仲間のシブイロカヤキリ(下の写真)だ。シブイロカヤキリも成虫で越冬する。見分けるポイントは、シブイロの方が後ろ足がずっと短いこと。口元の色にも違いがあり、クビキリが赤なのに対して、シブイロは黒いというが、そんなことをわざわざ確認しようとするもの好きはめったにいない。