「ワクチン接種は年内には終わらない」と自治体の約半数が回答
私と報道ベンチャーのJX通信社は、自分がいつコロナワクチンを接種できるかを予測できる「ワクチン接種予測アプリ」を提供している。
ワクチンの接種機会がすばやく確保できるか、そして障壁がどこにあるのかの情報を社会に還元することを目的とした、データジャーナリズムの製品・サービス化の試みだ。
このプロジェクトの一環として、JX通信社では今月8日から20日までの間、全国の基礎自治体を対象とした独自のアンケート調査を行い、570の自治体から回答を得た。
調査の結果、ワクチン接種作業が来年までかかると見込む自治体が約半数に上るなど、接種の遅れとその要因が見えてきた。もうしばらくは自宅でケーキでも食べながら日本と世界の行く末をゆったり眺めるしかないのかもしれない。
高齢者向け接種4月開始は4割に満たず
今月12日から、第1群の医療従事者に次いで優先度の高い、高齢者向けのワクチン接種が始まった。しかし、現時点で高齢者向け接種を開始できている自治体は半数以下にとどまっている。5月上旬に開始がずれこむとした自治体が最多だった。
実際、19日時点での高齢者向け総接種回数は2万回に満たない。対象となる高齢者が総計で約3000万人とされるので、接種できている高齢者はごくわずかだ。高齢者より優先度の高い医療従事者についても、19日時点で総接種回数は203万回(2回目の接種も含む)に留まっている。JX通信社の試算では、1度以上接種を受けたことのある医療従事者は19日時点で約25%に過ぎない。
6月末までの高齢者接種一巡は困難
今年6月末の時点で高齢者向けの接種が一巡すると見込む自治体もほとんどない。
6月末時点で高齢者へのワクチン接種がどのくらい進捗しているかについての見通しを聞いたところ、希望する高齢者全体の「半分程度」と見込む自治体が最も多かった。ついで「分からない」「3割は終えられる」という回答が多かった。
ワクチン接種「年内には終わらず」最多
優先対象ではない一般の人も含めたワクチン接種が一巡する目処についても聞いたところ「年内には終わらない」という自治体が47%に上り、最多だった。次いで多かったのが「12月」の17%だった。
前回2月に行った第1回調査で同じ質問をしたところ、接種が終わる見込み時期については「9月」とした自治体が最多で、年内には終わらないとした自治体は23%だった。2月時点の見通しから後退し、より悲観的な予測になっていることが分かる。
ただ、今回の調査後まもなく、今月17日に菅首相とファイザー社のCEOが電話会談したことを受けて、ワクチン接種を担当する河野太郎行政改革担当大臣が、9月にも「日本国内の対象者全員分」の供給が確保される見通しを明らかにしている。
こうした供給状況の変化で自治体の見通しも変わる可能性があることに注意してほしい。
接種に当たる医療従事者の調整が難航
ワクチンの供給以外で接種の進捗に影響しそうなのが、接種業務に当たる医療従事者の調整だ。自治体に接種に当たる医療従事者の調整状況について聞いたところ「全て決まった」とした自治体は32%にとどまった。「一部決まったが調整中」「全く決まっていない」が合わせて68%に上った。
遅れが懸念されるワクチン接種業務をめぐり、自治体担当者からのコメントが多く寄せられている。それらのうち主なものは以下の通り。
- ワクチンの供給量やスケジュールがはっきりしないため準備の見通しも立たない
- 業務に関わる医療従事者への謝金など財源の措置が不明瞭
- ワクチン接種を管理するシステムが、厚生労働省のV-SYS、内閣官房IT戦略室のVRSとそれぞれ別々に構築され、説明会や実際の利用も別々となっているため行政・医療機関ともに非効率
- 4月12日にあたかも全国で一斉に高齢者接種が始まったかのような、実態が伴わない情報提供は問い合わせ殺到の原因となるためしないでほしい
- 職員が他業務と並行して準備にあたるため、自治体でのマンパワー不足も深刻
- 医療従事者の優先接種が遅れているため、高齢者への接種にスムーズに移行できない
- 副反応をめぐる情報提供について工夫してほしい。マスコミの報道でも、効果についてより伝えてほしい。接種率はマスコミ次第でもある
JX通信社と私は、ワクチン接種状況の可視化やワクチン接種予測アプリの改善に取り組んでいく。
※アプリ(無料)内の予測ページより、生年月日や職業などの情報を入力することで、ご自身の接種時期予測を確認することが可能です。