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政府と日銀の役割を定めた共同声明の改定報道、期待したい半面、むしろ不安要因も

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 岸田政権が、安定的な経済成長を実現するための政府と日銀の役割を定めた共同声明を初めて改定する方針を固めたことが17日、複数の政府関係者への取材で分かったと共同通信が報じた。

 木原誠二官房副長官が以前に、政府・日銀による新たな共同声明の可能性について言及した一方、この際には想定される内容については触れなかった。

 また、木原氏は来年4月に任期満了を迎える日本銀行の黒田東彦総裁の後任について、現副総裁の雨宮正佳氏と前副総裁の中曽宏氏を候補者の一角とみていることを明らかにした。ただ、「候補がこの2人だけだとは思っていない」とも述べていた(12月12日付ブルームバーグ)。

 木原官房副長官が、政府・日銀による新たな共同声明の可能性について言及したあとの今回の報道であったことで、今回の岸田政権が共同声明を初めて改定する方針を固めたことに、木原氏も関与している可能性がある。日銀総裁人事についても同様か。

 共同声明の柔軟化とともに、イールドカーブコントロールやマイナス金利政策の解除を含めた金融政策そのものの柔軟化も必要であり、それについても岸田文雄首相が来年4月9日に就任する次期日銀総裁と協議を煮詰めてほしいところではある。しかし、これらについてはやや不安が残る。

 そもそも木原氏がリフレ派に近い考え方をしていたことも明らかとなっている。下記の木原氏のサイトを確認すると、財政法第5条但書きで認められている、国会の議決の範囲内での日銀による国債の直接引き受けも検討しなければなりません。更には、日銀法改正によって、政府と日銀が政策目標を共有する枠組みの整備も視野に入ってくるものと思います、ともある。

木原氏のサイトより

https://kiharaseiji.com/2548.html

 むろんこれが書かれたのが、2009年と13年も前のことであり、状況とともに木原氏の立場も変わってはいる。しかし、考え方そのものに大きな変化はないとなれば、今回の共同声明の改定はリフレ色を強めることにもなりかねない可能性もありうるか。

 それはつまり、イールドカーブコントロールの修正の可能性が後退しかねない事態ともなりかねない。今後の行方を注意深くみておく必要があるかもしれない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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