悪性リンパ腫とはどんな病気か? 元フジのアナウンサー笠井信輔さんが罹患
悪性リンパ腫と急性リンパ性白血病の違いは?
元フジテレビ所属でフリーアナウンサーの笠井信輔さんが悪性リンパ腫に罹患されたと報じられています。
皆さんは悪性リンパ腫をご存じでしょうか?
がんは大きくわけて、血液のがんと、血液のがんではないがん(固形がんと呼びます)があります。
悪性リンパ腫は、血液のがんです。
血液中には免疫を司る白血球やリンパ球が存在します。悪性リンパ腫はこの内のリンパ球ががん化したものです。
先日退院された水泳選手の池江璃花子さんが罹患したのは急性リンパ性白血病で、同じ血液がんで、白血球の内のリンパ球系の細胞ががん化するものです。
両者の何が違うのかというと、急性リンパ性白血病は骨の中にあって血液を造る骨髄の中のリンパ球系の細胞ががん化し、悪性リンパ腫はリンパ節などのリンパ組織中のリンパ球系細胞ががん化するものです。がん化している場所が違うのですね。
血液のがんと言えば白血病はあまりにも有名ですが、悪性リンパ腫は白血病よりも罹患される方の数が多く、血液がんの中で実は一番多いのです。
そして悪性リンパ腫は60代から増加し、70代が最も多くなるという、高齢者に多いがんです。
現在、日本は超高齢社会であり、悪性リンパ腫の罹患数も増加しています。つまりしばらくはよく見かけるがんであり続けるであろう、ということです。
症状としては、首やわきの下、足の付け根などのリンパ節の腫れが現れます。痛みは伴いません。次第に大きくなります。進行すると発熱や体重減少、盗汗(大量の寝汗)が出ますので、それで病院にかかって検査を行うことで発見されます。
悪性リンパ腫の治療は?
血液のがんは、固形がんと違う大きな特徴があります。
それは手術をしなくても、根治しうる(完全に治りうる)ということです。
固形がんにおいては、抗がん剤治療だけでがんを消し去ることは例外を除いて難しいです。
それもあって、例えば胃がんだと、診断は消化器内科で為され、その後の手術は消化器外科で行い、抗がん剤治療を内科で受けるなど、科をまたいで治療することはよくあります。
一方で血液がんは抗がん剤治療や放射線治療を行うことで、手術なしで根治することが期待できます。
そのため、血液がんは「血液内科」が一貫して診療します。
悪性リンパ腫には様々な型があり、それによって悪性度や治療が異なりますので、そのタイプにあった抗がん剤治療や放射線治療が為されます。
抗がん剤治療は何種類かの抗がん剤を組み合わせて行われます。そして1回では終わらず、例えば悪性リンパ腫の中でも最も頻度が多い「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」の代表的な治療であるR-CHOP療法は、3種類の抗がん剤+ステロイド+リツキシマブ(分子標的治療薬)を3週間に1回投与するという治療を6~8コース行います。そのため21日/回が6~8回で、治療終了までには最低4ヶ月以上はかかるということですね。
抗がん剤治療なので当然副作用も起こります。抗がん剤の種類によっても異なりますが、骨髄抑制(白血球が減るなどの変化が現れます)、吐き気、食欲不振、便秘、味覚障害、末梢神経障害、脱毛、口内炎など多岐にわたり、抗がん剤の副作用の緩和も必要です。
悪性リンパ腫はそのタイプにより見通しがだいぶ異なります。治療もタイプごとの違いがあり、同じ悪性リンパ腫というひと言では括れないほどの多様性があるのです。
緩和ケアの視点では?
現在の緩和ケアは末期に限らず、診断時から行うものとされています。
一方で、血液がんは血液内科で完結するがんであり、抗がん剤治療が効くと症状が緩和される度合いが固形がんよりも大きいこともあり、緩和ケア科と協働する程度には病院差があるようです。
実際、血液がんで症状がなかなか緩和されず、患者さんが緩和ケア科へ併診を求めてもそうしてもらえなかったという話を、複数知っています。
悪性リンパ腫においても最初は痛みがないリンパ節の腫れですが、腫瘍が大きくなってくると強い痛みを起こす場合もあり、医療用麻薬などを用いてしっかり緩和する必要が生じます。
他にも、抗がん剤治療や放射線治療などの副作用の緩和や、治療が長期にわたる場合も少なくないため精神・社会的な問題が顕在化することもあるなど総合的な支援を受けることが大切です。
また基本的にはご高齢の方のがんである一方で、薬剤数も多く治療の理解はけっしてたやすくはないため、周囲がサポートする必要なども生じうるでしょう。
これらも含めて、病院の緩和ケアチームや緩和ケア外来などを並行して利用する意味があると考えます。
まとめ
悪性リンパ腫は血液のがんで、手術なしで完全に治ることが期待できる一方、抗がん剤治療や放射線治療を繰り返す一定以上の期間の治療となります。
ご高齢の方がなることが多いため、家族の支援が必要となることもあります。
現在罹患が増えている傾向にあり、覚えておいて損はない病気です。