入学試験でのカンニング行為にはどのような法的責任が生じるか??弁護士が解説
1月14日15日にセンター試験が実施されましたが、2日間で計12件の不正行為が発覚したようです。
このように、試験でのカンニング行為に対して、どのような法的責任が生じるかについて解説します。
詐欺罪?
試験でカンニングをする行為は、試験官や主催者側を騙すことになるので、詐欺罪が成立するのではないかと思われる方もいるかもしれません。
しかし、詐欺罪とは、人を騙して、財物や財産上の利益を奪った場合に成立する犯罪で、試験でカンニングをして、受験者が不正に良い点数を取ったとしても、財物や財産上の利益を奪ったとは言えないため、詐欺罪は成立しません(条文は参照1)。
偽計業務妨害罪
この犯罪は、他人を騙して、他人の業務を妨害した場合に成立する犯罪ですが(騙す相手と業務を妨害する相手は一緒でなくても成立します)、カンニング行為については、偽計業務妨害罪の適用が考えられます(条文は参照1)。
つまり、カンニング行為の場合は、ズルをしたことにより相手の試験監督業務や入学試験業務を妨害したということになります。
実際、2011年に京都大学等の入学試験において、携帯電話を利用したカンニング事件が発生した際、警察は偽計業務妨害罪の容疑で捜査を行い、その後立件されています。
ですので、カンニング行為の中でも悪質性の高い場合には、このような罪に問われる可能性があるでしょう。
軽犯罪
ただ、カンニング行為は許されない行為とは言え、偽計業務妨害罪を適用するのは罪が重すぎるだろうという意見もあり、比較的悪質性の低いカンニング行為であれば、軽犯罪法が適用されることもあるかと思います(条文は参照2)。
偽計業務妨害罪の法定刑が3年以下の懲役または50万円以下の罰金計なのに対して、軽犯罪法であれば拘留(1日以上30未満)か科料(1000円以上1万円未満)の処罰となります。
有印私文書偽造罪・同行使罪
以上は受験生本人が受験をしてカンニング行為をした場合に考えられる法的責任でしたが、いわゆる替え玉受験の場合には、以上とは異なる刑罰が科せられることもあります。
*替え玉受験とは、受験者以外の人が、受験者本人の替わりに試験を受けることをいいます。
1991年に明治大学の入学試験で、組織的な替え玉受験が行われた際には、受験者でない者が、受験者の名義を使って勝手に文書を作成(偽造)し、そのまま答案を提出(行使)したとして、有印私文書偽造罪・同行使罪で起訴され、実刑判決が科せられました(条文は参照1)。
ちなみに、偽造してはいけない文書とは、条文上、「事実証明に関する文書」と規定されていますが、裁判では、答案用紙がこれに含まれるのかが争われました。
しかし、最高裁まで争われた結果、答案用紙は、受験者の学力を証明する文書で、これを基に合否が判定されるのであるから「事実証明に関する文書」に該当すると判断されました。
以上、カンニング行為について、生じうる法的責任について解説しましたが、実際に何らかの処罰が科せられるかどうかに関係なく、当然、カンニング行為は許されないものですから、受験生には自力で頑張って欲しいですよね。
※本記事は分かりやすさを優先しているため、法律的な厳密さを欠いている部分があります。また、法律家により多少の意見の相違はあり得ます。