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「小池新党」ができれば雪崩を打ち日本の政局を大きく変える可能性がある

高橋亮平日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事
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図表: 衆議院における政党割合の推移

都民は「小池新党」まで新知事をしっかり監視しろ

7月31日投開票の東京都知事選挙は、予想通り小池百合子氏の圧勝で終わり新知事の誕生となった。

マスコミ各社ではこの話題でもちっきりであり、小池支持の理由について有権者の声などを伝えているのだが、最も多かったのが「政策を支持」との声との報道。

本当にそうなのだろうか?

どうも日本人の中には「選挙は政策を比較して選ぶべき」といった規範的な思い込みが強く、インタビューなどを受けると、つい「政策を支持」と言いたくなっていないだろうか?

今回の都知事選、政策面から見れば、好き嫌いや政治的ポジションに関係なく、「一流 対 二流 対 三流」の構図になっていたように思う。

この事については、またあらためて書く事にしたいが、おそらく多くの方々が小池氏に投票した理由は、政策ではなく「イメージ」である。

国政における「小泉劇場」、「民主党政権交代」から続く「橋下大阪都構想」、「アベノミクス」への流れと同じである。

その意味では、「政策で支持」などと言っていると、民主党政権への「こんなハズではなかった」と同じことが起こる。

これまでの都知事選でも同様であり、青島都知事から、石原都知事、猪瀬都知事、舛添都知事と当選してきた流れはほぼ変わらない構造だろう。

その意味では、都民は都知事をどういう基準で選んだのかを明確にした上で、「ちゃんとやっているか」を監視していかなければならない。

その意味で、小池新知事に期待したであろう、また小池氏を知事にした価値2点について確認しておきたい。

投開票日直前に『政治と金で知事2連続辞職、知事選3回150億円使っても東京都は「利権構造」を解決できないのか』(http://blog.livedoor.jp/ryohey7654/archives/52063832.html)にも書いたが、1つ目は、都民にとっても最も重要なテーマである「政治と金」についてである。

特に、内田茂都議(千代田区)を中心とした都議会自民党のまわりで聞こえてくる「利権構造」の実態究明とその情報の公開、さらにその改善については、新知事には早急に対応してもらいたい。

もう一つが、「小池新党」の可能性である。

今回の選挙であらためて明らかになったのは、各地方首長選挙等ではこれまでもその傾向があったが、国政において圧倒的多数を占める自民党ではあるが、国民からすれば、それは選択肢のなさからくる消極的投票の結果であり、第3の受け皿さえあれば、有権者の支持は別のところにあるという事だ。

その意味では、この有権者の想いは、「知事に当選して良かった」という事で終わることなく実現してもらいたいものだと思う。

選挙直後こそ下村博文総裁特別補佐官が「除名か除籍か離党」と発言するなどいい感じだったが、その後に入ってくる報道は、菅氏が「政府が関わることではない。都連の問題だと思う」と官邸は触れない規定路線に。来年6月の都議会議員選挙、さらに今年の年末にも解散総選挙などと言われる中で、自民党内でもこの延長戦をやりたくないという思いは広がりつつあり、処分見送り論が強まりそうな気配がある。

先日のコラムで書いたいわゆる「手打ちシナリオ」である。

「官邸との手打ち」自体はそれほど大きな影響はないが、「都連と手打ち」となると新党の可能性は極めて低くなり、さらに「都議会自民党と手打ち」とまでなれば、「利権構造解明」すら怪しくなってくる。

都民の皆さんには、この辺りをしっかり監視し見極めて欲しい。

「小池新党」ができれば雪崩を打つ可能性がある

「小池新党」について、当選後もおおさか維新の会幹部が「自民党離党か除名がスタートだ。崖から飛び降りたら協力する」と発言していると報じられている。

おおさか維新の会は、選挙前から小池氏が自民党を離党しないで選挙に挑むことから「自民党に戻る」という「元サヤ」シナリオを危惧して支持や支援を見送った背景もある。

「小池新党」ということにでもなれば、当然維新は連携する可能性がある。

官邸の動きも怪しい。

先日のコラムでも触れたが、都知事選の真っ只中の7月17日、安倍晋三首相は山梨県の別荘で夏季休暇に入った。結局自民党候補である増田寛也氏の応援に入ることはなかった。

とくに気になるのが、幹事長の人選だ。

小池氏の当選するのを見届けて、安倍総理は翌8月1日に二階俊博自民党総務会長に幹事長就任の連絡をしていると報じられた。

二階氏といえば今や「自民党中の自民党のような議員」のイメージの方もいるかもしれないが、振り返れば、小沢一郎氏(生活)、羽田孜氏らと共に自民党を離党し、新生党を立ち上げたメンバーでもあり、その後の新進党から自由党、保守党までは今回知事に当選した小池百合子氏と同じ党で活動を共にしている政治家でもある。

小池氏といえば、細川政権誕生の元となった日本新党を当時熊本県知事であった細川護煕氏と共に立ち上げた功労者であるが、「第1次新党ブーム」とも言える1990年代の新党のメンバーを見ていると面白いことが見えてくる。

日本新党が設立したのは1992年、一人も国会議員がいない中から結党し、「日本新党ブーム」を起こすと共に第40回衆議院総選挙で35名が当選、その中には小池氏のほか、今回自民党政調会長に内定した茂木敏充氏、小池氏の都知事選応援にも入った河村たかし(名古屋市長)をはじめ、中村時広(愛媛県知事)、中田宏(元横浜市長)、山田宏(元杉並区長)といった首長や首長経験者、さらには、枝野幸男民進党幹事長、野田佳彦(元首相)、海江田万里(元民主党代表)、江田五月(元参議院議長)と民進党の重鎮も並ぶ。

さらに5党による合併で新進党になると、新生党から小沢氏、二階氏に加え、石破茂氏(一億総活躍担当大臣)、岡田克也氏(民進党代表)、原口一博(元総務大臣)。松沢成文(元神奈川県知事)、上田清司(埼玉県知事)などが加わっているのだ。

都知事選投票日前日の7月30日、安倍晋三首相は菅義偉官房長官と共に、おおさか維新の会の橋下徹前代表、松井一郎代表(大阪府知事)、馬場伸幸幹事長と憲法改正のプロセスなどで会談したとされている。

現段階では空想上の極論ではあるが、安倍首相が「憲法改正」を第一義に考えた場合、反対勢力を少しでも弱体化させた上で、野党勢力の同意も広げて行きたいはずだ。

7月の参院選の際に「衆参同日選挙」が検討されたが、2/3が確保されている衆議院の議席が逆に減る可能性があるとして見送られた。

アベノミクスをはじめとした経済政策、金融政策も既に行き詰まっており、「解散をしたいがジリ貧」という状況に追いやられていく可能性は高い。

そんな中、二階氏による「総裁任期延長容認」はまさに渡りに船だったのだろうが、「選択肢があるなら勝負に出たい」が本音ではないかと思う。

そこで考えられるのが、「維新」と「小池新党」との「大連立構想」ではないかと思うのだ。

もう一つの火種が9月に行われる民進党代表選である。

岡田克也代表による野党4党共闘は、参院選こそ1人区で11勝と一定の成果を出したものの党内保守派を中心に不満は蓄積されており、今回の都知事選候補者選定においても、都連の選定をないがしろにした上で惨敗、さらに投票日前日に岡田克也代表が時期代表選不出馬表明と、松原仁都連会長を筆頭に内心穏やかでない議員がそれなりの数に膨れ上がってきている。

筆者の見立てでは、蓮舫代表代行が実質上の岡田氏の後継となってその人気による時期衆院選への期待を受けて支持を広げていくのだろうが、この構造だと長妻昭代表代行、枝野幸男幹事長はじめこれまでの顔ぶれという枠組みの中での新執行部となる可能性が高く、顔が変わって表面的な支持は上がるとは思うが、本質的な課題解決には繋がらないように思う。

こうした想いを感じている議員は、民進党内にも一定数いるはずだ。

その一つが、既に手を挙げている長島昭久東京都連幹事長をはじめ、前原誠司元外務大臣、細野豪志元民主党幹事長、先述の松原都連会長といった保守派と言われる層だ。

もう一つは、江田憲司氏、柿沢未途氏はじめとした元維新の党の議員だ。

これに加え、今回の代表選において玉木雄一郎議員などを立てて世代交代を図ろうという議員たちもいる。

現段階では、まずは代表選ということになるとは思うが、代表選の結果いかんによっては、一気に離党、新党への流れに雪崩を打つ可能性もあるのではないだろうか。

仮にこのメンバーが「小池新党」と連動して総選挙となった場合、自民党の議席は間違いなく減るだろうが、それ以上に残った民進党が大幅に議席を減らす可能性が高い。

選挙後に、自民、新党、維新での連立を考えれば、このままの状況で挑むよりも憲法改正への大連立ができる可能性が大きく出てくる。

筆者が安倍首相であるなら、こうしたことも考えるのではないかと思うのだ。

過去の新党ブームから学べ

これまであった新党ブームを大きく2つ紹介しておきたい。

一つは、先述の「日本新党ブーム」から民主党誕生、政権交代までの流れである。

1992年、細川護煕氏を党首に小池氏などが日本新党を立ち上げ、国会議員ゼロから次の総選挙で35名を当選させる。翌1993年に自民党を割って羽田孜氏を党首に小沢一朗氏、岡田克也氏、藤井裕久氏、二階俊博氏、船田元氏ら衆議院36名・参議院8名の44名で新生党を結党、総選挙を経て上田清司氏、松沢成文氏、石破茂氏らが加わる。同年、自民党を離党した武村正義氏、鳩山由紀夫氏、園田博之氏ら衆議院10名が新党さきがけを結党、総選挙を経て菅直人氏、枝野幸男氏、前原誠司氏、玄葉光一郎氏、堂本暁子氏などが加わった。

この3党が礎となって、1994年に新生党・日本新党・新党みらい・新党「自由党」・公明新党・民社党が合併、海部俊樹元首相を党首に新進党が結党。結成時にはこれまでの新党最大の衆議院176名、参議院38名の計214名という規模になる。

同時にこの新党の離合集散の流れの中で1996年、新党さきがけ・社民党・市民リーグ・新進党の一部で結党されたのが民主党(旧)だった。

設立当初は鳩山由紀夫氏と菅直人氏が共同代表となり、鳩山邦夫氏、枝野幸男氏、前原誠司氏、海江田万里氏ら衆議院50名、参議院5名の計55名からスタートした。

1998年には、この民主党(旧)に民政党、新党友愛、民主改革連合などが合流し、岡田克也氏などが合流、衆議院93名、参議院38名の計131名で民主党(新)が結党することとなる。

この民主党(新)はその後、第42回総選挙で127議席確保して以降、第43回総選挙で177議席、第44回総選挙で113議席と減らすものの、敵失もあり2009年の第45回総選挙で308議席確保しての政権交代へとつなげることになる。

新党結成から11年目のことだった。

2つ目の新党ブームは、みんなの党と維新の会の流れだ。

みんなの党は、2009年に渡辺喜美元行政改革担当大臣を党首に、江田憲司氏、浅尾慶一郎氏ら自民党、民主党から離党した衆議院4名、参議院1名の計5名で結党された。しかし、2013年に実質分裂、江田憲司氏を党首に柿沢未途氏ら衆議院9名、参議院6名の計15名は新に結いの党を結成した。

その前年の2012年、当時の橋下徹大阪府知事を中心とする大阪維新の会を母体に、石原慎太郎都知事、平沼赳夫元経産大臣、松野頼久元官房副長官、片山虎之助元総務大臣ら自民党、民主党、みんなの党離党者、衆議院3名、参議院4名の計7名の国会議員の所属で国政政党である日本維新の会を結党、党首には橋下徹大阪市長が着いた。

2014年、石原氏や平沼氏とは袂を分かつが、橋下徹氏と江田憲司氏を共同代表にして、この日本維新の会、結いの党に、みんなの党からの離党者を加え、柿沢未途氏、松野頼久氏、松井一郎(大阪府知事)、片山虎之助氏、馬場伸幸氏ら所属国会議員、衆議院41名・参議院11名・の計52名の維新の党の結党となる。

結局これも分裂し、一方は民主党などと合併し、2016年に民進党を衆議院96名、参議院60名の計156名で結党。

一方は新におおさか維新の会を衆議院13名、参議院6名の計19名で結党することになって現在に至る。

ポイントはいくつかあるが、一つはそのほぼ全てが自民党離党者が鍵になっているということだ。

小沢一郎氏、海部俊樹氏、羽田孜氏、武村正義氏らの離党がキッカケになった新生党(1993)、さきがけ(1993)、新進党(1994)、自由党(1998)、保守党(1998)…。

日本新党(1992)の細川護熙氏だって元はと言えば自民党。

旧民主党(1996)、新民主党(1998)ですらその中心となった鳩山由紀夫氏、鳩山邦夫氏、岡田克也氏、羽田孜氏らは自民党離党者だ。政権を取った際を見れば、さらにこれに小沢一郎氏、藤井裕久氏などが加わっている。

みんなの党(2009)も渡辺喜美氏、江田憲司氏らほとんどが自民党離党者だ。みんなの党結党の前段ではこの構想に渡辺氏はおらず、そこには河野太郎氏がいたとも言われる。

日本維新の会(2012)も石原慎太郎氏、平沼赳夫氏、片山虎之助氏は自民党離党組。橋下徹氏ですら大阪府知事選の際には自民党の候補者であり、大阪維新の会は自民党府議団から生まれた。

政界再編は野党議員の結集ではなく、自民党を割っての新党結成にあるのではないかと思う。

いみじくも都知事選翌日の8月1日、参議院議員となった渡辺喜美氏の初登庁となった。今月には維新の会の副代表になるという。

政界再編が再び動き出しそうな空気を感じる。

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日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事

元 中央大学特任准教授。一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、神奈川県DX推進アドバイザー、事業創造大学院大学国際公共政策研究所研究員。26歳で市川市議、全国若手市議会議員の会会長、34歳で松戸市部長職、東京財団研究員、千葉市アドバイザー、内閣府事業の有識者委員、NPO法人万年野党事務局長、株式会社政策工房研究員、明治大学世代間政策研究所客員研究員等を歴任。AERA「日本を立て直す100人」に選ばれた他、テレビ朝日「朝まで生テレビ!」等多数メディアに出演。著書に『世代間格差ってなんだ』(PHP新書)、『20歳からの社会科』(日経プレミアシリーズ)、『18歳が政治を変える!』(現代人文社)ほか。

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