「メジャーに挑む機会を創出しよう」欧州ツアーが起こした素晴らしい行動
斬新で豊かな発想の持ち主、キース・ペリー会長率いる欧州ツアーの動きが、あまりにも素晴らしい。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で休止状態にある欧州ツアーは、7月9日からオーストリアで再開し、当地で2試合を開催することになっているのだが、その2試合に続いて開催される英国での6試合は、パンデミックによって戦う場を失った選手たちに少しでも多くプレーする機会を与えようということで、急遽、新たに創設された「UKスイング」だ。
この「UKスイング」新設が発表されたのは5月末だった。初戦はリー・ウエストウッドが大会ホストを務める「ベットフレッド・ブリティッシュ・マスターズ」(7月22日〜25日)。その後、イングリッシュ・オープン、イングリッシュ・チャンピオンシップと続き、「セルティック・クラシック」「ウェールズ・オープン」のウエールズ2連戦を経て、6試合目の「UKチャンピオンシップ」が最終戦となる。
この「UKスイング」は、選手たちに戦う場と機会を与えると同時に、開催地への寄付を行うなどチャリティの意味合いも兼ね備えている。
それだけでも、すでに「素晴らしい」試みだが、さらに「素晴らしい」意味合いが加わった。
「UKスイング」では、欧州ツアー本来のポイントランキング(レース・トゥ・ドバイ)とは別に、これら6試合のみのミニ・ランキングが設けられる。そして初戦から5試合目までのランキング上位者には、9月に開催される全米オープンの出場資格が付与されることになり、おまけに用意されるスポットは10枠もあるとのこと。「素晴らしい」を超えて「すごい!」と驚嘆の声が聞こえてくる。
本来なら、USGA(全米ゴルフ協会)が主催する全米オープン地区予選が欧州各地で6月に行なわれるはずだった。しかし、コロナ禍ですべて中止となり、地区予選から全米オープンへ進む道を狙っていた選手たちは、そのチャンスを失っていた。
すでに今年の全英オープンは中止されたため、欧州の選手がメジャーで戦うチャンスは米国でしか得ることができない状況にある。
そうした選手たちに「少しでもチャンスを与えよう」「メジャーに挑む機会を創出しよう」と欧州ツアーはアクションを起こし、USGAに直談判して了承された。
「全米オープンに挑みたいと願う欧州ツアー選手の渇望をUSGAは汲んでくれた。感謝の気持ちでいっぱいだ」と、欧州ツアーのキース・ウォーターCOOは感無量の様子だ。
USGAのマネージング・ディレクター、ジョン・ボーデンヘイマーも「欧州、とりわけ英国から全米オープンに挑んでくる選手は歴史的にも強者が多い。そんな彼らにチャンスを与えることは、ゴルフ界にとって重要である」
選手のためを思い、彼らの渇望を汲み取り、救済策、具体策を練り、アクションを起こした欧州ツアーは、あまりにも素晴らしい。そして、そんな欧州ツアーのリクエストに応え、臨機応変に対応して、本来の規定を変更したUSGAも、あまりにも素晴らしい。
そして、ふと思った。これと同じことを、日本でも、やろうと思えば、できるのではないだろうか、と。やる気と努力を示せば、世界はそれを認め、受け入れてくれる。欧州ツアーは、その手本を見事に示してくれた。