多様性へ舵をきった「切断ヴィーナス」写真展、横浜で26日まで開催中!
義足の女性の美しさと多様性を表現した「切断ヴィーナス」の写真展が、神奈川県立地球市民かながわプラザ(あーすぷらざ/横浜市栄区)で開催されている。会場には、さまざまな物語を背景にもつヴィーナスたちのポートレート写真のほか、パラスポーツ写真の第一人者でもある越智貴雄氏が21年間撮り続けた世界最高峰の競技を伝える写真30点以上が展示されている。
12月12日、今年発売された写真集「切断ヴィーナス2(白順社)」にモデルとして参加したキャロットyoshieさんによる創作ダンスの披露と、東京パラリンピックのレガシーを語るトークショーが行われた。華やかなパラリンピック文化の一翼を担う仕掛人たちとのひと時を過ごそうと約70名がホールに集まった。
切断ヴィーナスとは、越智カメラマンと、アスリートを含む多様な義足ユーザーを支えてきたメカニック、技師装具士の臼井二美男さんによる、2014年からの社会変革のプロジェクト。
臼井さんの義足により輝きを取り戻した女性たちの多様な世界観を、越智氏がポートレート写真として表現し、写真展、ファッションショー、トークショーなどを企画・発信する活動を多数行ってきた。
パラリンピック自国開催が決まり(2013年)注目が高まるなか、アスリートがあえて自分の義足を見せることで、多くの人々の中にある「義足は怖い」という偏見を払拭する試みを行ったところ、ポジティブ・スイッチが入った義足ユーザーたちが追従した。
第一弾の写真集が発行され、「私もプロジェクトに参加したい」「私を撮影して欲しい」「義足をカミングアウトしたい」という流れが広まり、越智カメラマンと臼井さんによるムーブメントが花開いた。
コロナ禍で史上初の延期の末に開催された東京パラリンピックが閉幕し、3ヶ月になる。
「社会は変わったか?」という問いに、越智カメラマンは、「切断ヴィーナスも第一弾の頃は、出演を断られることもあった。障害のあることを知られたくないという人がほとんどだったが、現在は、かっこいい、見て欲しい、という人がほとんどになった。東京パラで日本は多様性の社会へと舵をきった。そういう日本から世界へ伝えていきたい」と話す。
越智カメラマン自身も21年前、シドニーパラリンピック開会式(2000年)の撮影の直前まで偏見があった。障害のある人にネガティブなイメージを持っていた。「入場行進をみて、選手が笑顔だっただけでびっくりした。考えてみれば、入場行進で笑顔なのは当たり前だった」と。
「失ったものを数えるな、残ったものを生かせ(パラリンピックの父、ルードヴィッヒ・グッドマン)」という言葉を体現する場面が展開されていた。遠足できていた子どもは選手を見て「カッコいい、あんなふうになりたい」と話していたのをみて、先入観のない子どもにはかっこいいと見えることに気づいたという。「知ること、知らせることの大切さに目覚めたこと」が越智カメラマンの活動のきっかけだった。
キャロットyoshieさんは、5年前の交通事故で右手と右足を切断した。「キャロットは私の右手。義足をはめていると人参のようだから。クスッと笑ってもらえるように、そう名付けました」と、キャロットさん。東京パラリンピックの開会式にもパフォーマーとして出演した。
「私はなんでもできます。常に助けてもらうのではなく、困った時に助けて貰えればいいと思います」と話した。
トークショーの最後に会場から「恋バナは?」と、質問があり、キャロットさんは、「やはり、ダンスが恋人」と答え、越智カメラマンは「被写体の切断ヴィーナスの皆さん」と結んだ。
写真展は12月26日まで行われている。
<参考>
神奈川県立地球市民かながわプラザ(あーすぷらざ)(横浜市栄区小菅ヶ谷1-2-1/JR根岸線本郷台駅3分)
https://www.earthplaza.jp/event/20211212kyouseikosei/
(写真は筆者撮影)