高校2年生は1か月に1冊強…子供達の本離れは本当なのだろうか
高校生は過半数が「本はほとんど読まない」
以前はテレビの影響で、昨今ではデジタルメディアの普及に伴い、子供達の間で本離れが進んでいるとの話をよく見聞きする。本当に子供達は紙媒体の本を読まなくなりつつあるのだろうか。国立青少年教育振興機構が2018年8月に発表した「青少年の体験活動等に関する実態調査」(※)の報告書の内容から確認する。
次に示すのは普段月に何冊ぐらいの本を読むかを尋ねた結果。この「本」には漫画や雑誌は含まれない。また特段説明されていないが、普段「本」と聞かれて電子書籍を含むと考える人はあまりいないことから、インターネット上で掲載されているものは含まず、純粋に紙媒体のものを意味していると判断する。
小学4年生では2割強が1か月に10冊以上も本を読む。6冊以上の区切りならおおよそ4割。逆にほとんど読まない人は1割強でしかない。これが小学6年生になると10冊以上が1割強、6冊以上が3割近くに減り、読まない人は2割近くに増加。そして高校2年生になると6冊以上ですら6%足らずに留まり、読まない人は過半数となる。学年が上になるほど読まない人は増え、読む人でも冊数を減らしていくのが分かる。特に高校生における本離れは著しい。
これを各区分の中央値などを用いて概算平均を算出したのが次のグラフ。一様に高学年ほど読書冊数が減るようすが分かる。
もちろん本自身の中身、分量は対象学年によって異なるため、小学4年生の1冊と高校2年生の1冊が、そのままイコールでは無いことから、単純に比較することは無理がある。一方で、手に取る機会や意思がどれだけあるのかとの観点では、冊数の違いは大いに参考になる。また間接的には最初のグラフ中の「ほとんど読まない」の回答率も反映されるため、学年が上になるほど本から距離を置くようになるとの解釈に違いは無い。
本離れは進んでいるのか
気になるのは経年変化、つまり昔と比べた今の読書傾向。冒頭にある通り、子供達の本離れが進んでいるのなら、平均読書冊数も減っているはずなのだが。
意外なことにむしろ今件調査では、子供達の間には本離れどころか本により近づく傾向が確認される結果となった(2014年度以降でやや天井感があるが)。わずかずつだが、多くの冊数を読む人の割合は増え、ほとんど読まない人やあまり読まない人の割合は減っている。概算平均冊数も増加を示している。平均冊数だけの増加なら、あるいは「読む人がより多くの冊数を手に取るようになった」との解釈もありうるが、「ほとんど読まない」人の割合も減っている以上、本離れは起きていないと見た方がよさそうだ。
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※青少年の体験活動等に関する実態調査
直近年度分は2017年2月から3月にかけて各学校(小学校は1年生から6年生まで各100校ずつ、中学校は2年生対象に150校、高等学校は2年生対象に150校)への調査票発送・返信による回収方式で行われたもので、有効回答数は学校数が879校、子供の回収数が18316件、保護者が15769件。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
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