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公道試乗で分かったスバル新型インプレッサの実力

河口まなぶ自動車ジャーナリスト

スバルの新型インプレッサは、すでにお伝えしているように新世代プラットフォームである、スバル・グローバル・プラットフォーム(=SGP)を用いた第一弾モデルとなる。発表会の席で富士重工業代表取締役社長である吉永氏が「スバルのフルモデルチェンジ」と表現したことからもわかるように、このプラットフォームは今後のスバルの全モデルに関わってくる重要なもの。となればその第一弾の仕上がりが、今後を予測する材料にもなるというわけだ。

発表後の公道試乗に先立って、9月に伊豆サイクルスポーツセンターでプロトタイプの試乗をした様子は既にお伝え済み。この時の印象はかなり良いものだったが、他のメディアも同じように高評価であり、結果的に多くのメディアから絶賛される評価を得た。しかし、伊豆サイクルスポーツセンターは公道ではなくクローズドコース。路面はキレイで対向車の心配もなく、運転操作における入力も高め(例:強い操舵や速い操舵など、日常域よりも大胆な操作)になるからダイナミックに感じるし、通常よりも気持ちよく走れる。さらには新型車のプロトタイプに初乗りする興奮もある…そうした様々な要素から、必然的に高評価になりがちなのも事実である。

では、その辺りを差し引いた、リアルワールドで乗った印象はどうだったか? 先週、名古屋ー蒲郡でついに公道試乗がかなったのでお伝えしたい。

実際に乗った印象の細かな部分は動画にまかせるとして、端的にいうと”公道でも高い評価を与えることができる”仕上がりを手にしていた。乗り心地の良さや快適性の高さは十分にあり、日常の足として他の日本車をしのぐ感覚を手に入れているし、このクラスの頂点ともいえるVWゴルフ等の欧州同クラスと比べても遜色ないレベルに達していたのだった。

全体的に走りには骨太な感覚があって、頼もしさが漂う。それでいてガッチリしすぎた感じはなく、爽やかに日常を駆け抜ける感覚も備えていたのだった。

気になったのは3点。1点目は操舵感が最近のトレンドからすると若干重めであること。これは高速道路等でしっかり感を得たいがゆえの設定からくるもの。2点目は巡行からの再加速時に、アクセルを踏むとややレスポンスが鈍い感覚があること。3点目は室内で、情報伝達系がたくさんありすぎて返って分かりづらい部分があること。特にナビゲーションシステムを中心としたユーザーインターフェースは、この5年で大幅な進化が予測されるため、新型インプレッサに限ったことではないが大改革が必要となる部分だろう。

ただそれら気になる点はあくまでも微細なところであり、クルマの本質的な実力という意味では今後のモデルに期待が持てる仕上がりであった。

スバルは今後、このスバル・グローバル・プラットフォームを用いて、XVやフォレスター、レガシィ・アウトバック等を世に送り出してくるわけだが、それらを考えると第一弾モデルとしての新型インプレッサは、なかなかの仕上がりといえるだろう。

新型インプレッサは、このクラスの日本を代表する1台といえる立ち位置を手に入れた、といえる。

しかしそれはある意味当然の結果、ともいえる。なぜならば、ここがスタートでここから何年も先の新型車の基本となることを考えると、この時点で高い評価を得られてなければ数年先は厳しい評価になるとも考えられるからだ。つまり数年先を見越した「伸び代」を手にしていなければならない存在でもあるわけだ。

今後はこの高評価をベースに、細かな部分をどれあけブラッシュアップできるか? またコネクティビティなどの部分で、どれだけ時代の進化に答えられる商品へと成長できるかがキモだといえる。加えて今後の販売台数の推移にも注目といえるだろう。

自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

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