政府・日銀が出した共同文書の舞台裏
1月29日の日経新聞に面白い記事が掲載されていた。「奔流アベノミクス」との記事で、政府・日銀が出した共同文書の舞台裏について書かれていた。安倍首相が日銀との交渉スタンスは「対話と圧力」だと言う。たしかに日銀に圧力をかけて2%の物価乗率目標を導入させた。デフレ脱却の責任も日銀に押しつける格好となった。
圧力を掛けすぎると当然ながら日銀からの反発も当然予想される。ましてや市場が日銀の独立性が損なわれると認識すると、あらたなリスク要因となる可能性がある。市場からも白川総裁は辞表を出すのではないかとの憶測も確かに出ていた。現実には白川総裁は辞表を出すようなタイプではないとの話も聞いたが、それ以前に安倍首相も硬軟両様の使い分けをしていたと日経の記事では指摘していた。
安倍首相が日銀との交渉を任せたのは、麻生財務相と甘利経済財政・再生相である。麻生氏はリフレ派の意見も聞いているとの指摘もあったが、その言動から見る限り、リフレ派とは一線を置いている。甘利氏も同様である。さらに麻生氏は白川日銀総裁と同郷(福岡県出身)であり、白川総裁の父は地元の大手企業(TOTO)の元社長であり、日本青年会議所で仕事をしていた麻生氏とも近かったそうである。
共同文書や日銀の物価目標の設定について、リフレ派からは生ぬるいとの批判が出ていた。これは裏を返せば麻生財務相を中心に、白川総裁というか日銀に対する気配りがあったことも想定される。甘利氏も安倍首相に対して「ハードルを上げすぎると、首相が選ぶ次の日銀総裁を追い詰めてしまいます」と殺し文句を口にしたという。
これが落としどころを探る上で結構効いたと日経の記事は指摘していた。これについては私も危惧していた。アベノミクスへの市場の期待も強まり、それは日銀への過度な期待に繋がり兼ねない。次期総裁候補と呼ばれる方々の発言内容も、かなりハト派の色彩が強まったような気もしており、それらがマネタイゼーションなどの連想を呼ぶとあらたなリスクとなりうる。
麻生氏や甘利氏の起用は、日銀を意識してのものであったのかはわからない。たまたまそのような起用になった可能性もある。それでもこれは日銀との間合いを見る上では、微妙なバランスではあるものの、効果的であったのかもしれない。ただし、今後も日銀法改正をかざして日銀に圧力を掛ける姿勢をとり続けるとなれば、歴史の上で築き上げられてきた中央銀行の独立性が失われる懸念もあり、注意すべきものであることに変わりはない。